第21話 気分のいい朝
ん、眩しい。朝かしらね。この白っぽい光は朝だろうね。うん、六時。朝だ。顔を洗って散歩に出ようかね。先ずはいつも通り顔を洗おう。それでパジャマから着替えよう。脱いだのは座椅子にでも掛けとこうね。
ぎぃっ。扉を開けて外の空気を吸う。今日はそんなに日が照ってないねえ。朝だってのはあるけれど、いつもより太陽が感じられない。そうだねえ、雲があるからねえ。今日はどっちに行こうかしら。右か左か。左の方に出れば栄えてて右側は田畑ばっかり。うーん、昨日は田畑の方だったから今日は栄えてる方にしましょう。
あ、そういえば。ゑがをにたむろしてる人たちが昨晩はうるさかったんだったねえ。おや、店のドアのところに貼り紙かい。あれは。近づいて見てみようか。
近隣住民の皆様にご迷惑になりますので、当店の前で大声で騒ぐ等の行為はお控えください
居酒屋ゑがを 店長
あら、対応早いのねえ。電話してよかったわ。これだったらもうちょっと丁寧にお願いすればよかったねえ。なんだかあのときはカッとなってたのかしらねえ。思いのほか朝から気分がいいわ。次はあの子たちと行ってみようかしら。さ、朝早くにこんなところに立ってる年寄りも怪しいわね。散歩に戻りましょ。ここで時間使ったし今日はいつもより手前で折り返そうかしらね。神社まで行くと少し遅くなりそうだもの。別に誰かが待ってるとか見たいテレビがあるとかではないのだけれど。なんて言うんだったかしらねえ、そういう日常のリズムみたいなの。えっと、ルーチンだったかしらね。多分、そうね。
明子さんは幅の狭い歩道をぐんぐんと進んでいく。まだまだ体が丈夫そうでわしは何よりだよ。さすがにこの時間はまだ車通りも少ないしなあ。歩行者も滅多に見かけない。おや、そんなことを思っていると自販機の前に人がいるじゃないか。背丈から見て中学生かのう。そうじゃな、あの制服はたしかここら辺の中学の制服のはず。
ピッ
ガコン
ピッ
ガコン
ピッ
ガコン
少女は立て続けに三本お茶を買ったようだ。つり銭をポケットに入れたあと500ミリリットルのペットボトルを持とうとして落とした。
ベツァ
「あっ」
「おやおや。はい、どうぞ」
こんな早朝に人が歩いているというだけでもめずらしいのに、それが中学生の女の子でペットボトルを落としてあたふたしてるとはねえ。どうしたんだい。今日はすぐれない天気だねえ。こんなことを色々言おうとしたけれどやめておこう。彼女には彼女なりの何かがあるのだろうから。
「あ、ありがとう、ございます」
ちゃんとお礼が言えてえらい子じゃないか。家はそっち側なのかな。元気に駆けていったねえ。
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