第7話 ようやく一区切り

 これまでみんなで協力して調査を進めてきた。いよいよ調査結果をまとめて、報告書を作成していく段階に入った。今回の調査も大詰めだ。ただし、途中で追加があれば随時対応していくつもりだ。

 分担して作業するほうがいいと考えて、みんなでパート分けして文章を作ることにした。写真や動画など、資料も豊富に活用するつもりだ。誰が見てもすごくわかりやすいと言ってもらえるような報告書にする。

 ありがたいことに私のチームメンバーは文章を書くのが上手だ。どんどん書き進めてくれている。この調子なら余裕をもって仕上げることができるだろう。とても頼もしい、大切な仲間だ。


 パソコンの画面とにらめっこしながら文章を打っている。適宜休憩が必要だ。キリのいいところでティータイムにすることにした。今日の紅茶はシトラスレモンティーだそうだ。サブリーダーである深海が用意してくれた。彼は世界中から茶葉を取り寄せて飲んでいるそうだ。その分、こだわりも強い。

 シトラスのさっぱりした味わいとレモンの酸味がマッチしていて、とても美味しい仕上がりになっている。疲れた体にはもってこいだ。一緒にスコーンも食べることになった。チームのコックお手製、自慢のお菓子だそうだ。



 しっかりと休憩をとった後、作業を再開した。進捗状況としては、半分ほどといったところだろうか。予定よりはるかに進んでいるので、慌てる必要はない。最後の校閲にも十分時間を割くことができるだろう。

 夕方までにはなんとか形になりそうだ。ラストスパートをかけた。今日の作業を終える頃にはみんなクタクタになっていた。適宜体を動かしてはいたものの、それでも首や肩が凝っていた。かくいう私もそうだ。

 明日と明後日の2日間で校閲が終わればいいだろう。今日はこれで作業を終えて、夕食を取ることになった。今日のメニューは何だろうか。いつもおいしい料理をコックが作ってくれる。栄養バランスもしっかりと考えられていて、すごく健康的な食事だ。

 いよいよ料理が運ばれてきた。カツ丼と豚汁だ。あとは校閲のみだが、最後まで勝つというゲン担ぎらしい。コックさんもチームの一員として頑張ってくれている。いつもコックさんも一緒になって食卓を囲む。人数が多いほうが絶対に美味しくなると思うからだ。


 おいしい食事を終えたあとは各自で自由時間だ。お風呂の順番は特に決まっていない。早い者勝ちだ。消灯時間は23時になっている。それまでは家族と電話する人や動画を観る人、自分の勉強をする人など様々だ。

 私は自分のパートナーと電話することが多い。彼女は国防空軍の戦闘機パイロットだ。我々の時代では陸軍や海軍は存在していない。300年ほど前に成立した国際条約で全ての国が同時に武装解除し、全ての兵力を破壊したのだ。だから、他国を攻めようと思っても攻める手段がないのだ。兵力を生み出す物質はこの世界からすでに消滅している。新たに武装する方法もない。


 ただし、宇宙の領域と電子の領域のみ軍隊が認められている。ただし、自衛のためであり、電子・サイバー領域は自国の被害を防ぐ防衛兵力のみ持つことができる。宇宙領域はまだまだ途上で、様々な研究がなされている。

 我が聖清帝国では、宇宙領域は国防空軍が、電子領域は国防サイバー軍が受け持っている。私の彼女は、空軍大佐の地位にある。とても誇らしい彼女だ。

 戦闘機パイロットとはいっても、宇宙から大気圏を超えてやってくるスペースデブリを破壊することが主たる任務だ。敵国を攻めたりなどはない。現代では領空侵犯もない。特別な事情があって他国の上空を通過するときは事前に許可を得ることになっている。


 彼女との時間を満喫したあと、ベッドに入った。無事に作業が進んでいることに安堵しつつ、最後の仕上げまで気を抜かないようにしなければと思いつつ、私は深い眠りへと落ちていった。

 

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