第6話 さらなる真相

 この時代での調査もだいぶ進んできた。先祖や神々を敬い、崇めるためのお祭りが毎月行われているようだ。

 場所は集団墓地で、この時代で暮らす人々は各個にお墓を作るのではないようだ。

 もちろん棺は個別だが、ひとつの大きな穴に全て埋葬する。棺は木製ではなく、赤土で作った甕のような形をしている。大きさは埋葬される人に合わせて様々だ。大人か子どもかに関わらず、この甕棺に遺体を納めて埋葬されたようだ。


 この時代の人々も、先祖を大切にしていたようだ。とはいえ、暦の概念がまだなかったということもあり、命日や年忌法要といったものはなかったようだ。

 現代では月命日があるが、それもない。ただし毎月お祭りがあるが、日にちが定まっている訳では無い。

 それでも毎月故人を偲んでいることにはなるわけなので、その点では現代の人類の多くよりも素晴らしいと言えるかもしれない。


 月日が流れ、秋を迎えた。実りの季節だ。そろそろ稲刈りをする頃だろう。その様子も観察して記録に残すことになっている。

 石で作った包丁、「石包丁」を使ったとされているが、それは間違いないようだ。石同士を擦り合わせて研いでいるようだ。

 包丁に使う石は凝灰岩と呼ばれる硬いものを使うようだ。砥石として使っているのは、砂岩の材質のもののようだ。

 すごく器用に、住民たちが包丁を研いでいる。子どもたちも手伝っているようだ。現代では永久に研がなくていい材質が開発されたが、研ぐという行為にも何かしらの得るものがあったのではないだろうか。


 石包丁を使い、現代では「穂首苅り」と呼ばれる手法で稲を刈り取っていく。根元からではなく、先端の実がついている部分だけを刈り取る方法だ。

 根元は太くしっかりしているが、先の方は細くなっているので、石包丁でも刈り取ることができるのだろう。


 刈り取った稲は天日干しにする。1週間くらいの期間だ。動物に食べられないように周囲にはツルで編んだ網を張り巡らせている。そのおかげで全くの被害がなかった。

 十分に稲穂が乾ききってから、脱穀の作業だ。この時代では、鉄製の歯が並んだ鍬の先のようなものが使われていた。その器具に稲穂を通して何往復かすると、実だけを取る事ができる。

 そこから実を重さで選別する。既にこの時代に選別することが考えられていたというのは新発見だ。方法としては、上から身を落として、板で風を送るようだ。風の力を利用することを既に考えていたというのも特筆すべき事実だろう。


 選別した後は来年用の実をあらかじめ確保しておく。専用の木箱があり、それをこの村では3箱保管するようだ。

 残りは精米する訳だが、石臼のようなものに入れて擦る力でもみがらを外すらしい。もみがらと玄米を分けるためには、先ほど実を選別するために用いた方法をそのまま利用するようだ。

 どちらも力加減が重要だ。強すぎると、いい実まで弾かれてしまうからだ。


 この時代では玄米が当たり前で、白米は無いようだ。そこにさまざまな雑穀を混ぜて食している。栄養はそれなりに取れているようだ。事実、この時代で餓死は滅多にない。

 ただし医療技術は皆無といっていいくらいで、子どもであっても病気にかかれば死を待つのみであったようだ。


 幸いにもこの村では川や池が綺麗あったようで、飲料水が原因で病気になることはなかったようだ。しかし、他の村では汚染された水を飲み続けることで死に至った例が数多くあるようだ。


 これからも調査を続行する。より良い報告書となるように善処したい。

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