第3話 聖清帝国支部の設立

 我が国でも時空調査団の支部設立に向けて動くことになった。総督府を中心としてさまざまな議論がなされた。皇帝陛下は臣民統合の象徴であり、政治に対しての権能を有しない。ただし、多くのことは陛下の決裁と御名の下に為されることになっている。

 まず大原則としては、国際本部の方針と条約に反しないことが大事となる。国内における必要な法整備が完了した段階で、条約に批准および加盟国となる流れだ。


 急を要する事柄だ。ダラダラと議論してはいられない。臣民のオンラインによる参画や電子投票が可能となった現代では、投票率は常に100%となっている。

 広く臣民から意見を募り、それを議員が取りまとめて法案を組み上げた。現代では一院制となっており、国会で可決された後は臣民の投票により採決される。そこで可決されて法案は成立することになる。


 無事に国会での採決を経て、可決を得ることができた。その後1週間の投票期間が設けられる。その間はさまざまな媒体を用いて広報がなされる。

 そして1週間が経ち、投票は締め切られた。通常投票と電子投票を併用するためすぐに結果が出ないこともある。電子投票だけで賛成と反対、どちらか過半数に達した時は通常投票の分は開票作業を省略することができる。

 今回は通常投票の結果待ちとなった。明日の未明には判明することだろう。関係者全員が祈るように待っていた。


 翌朝のニュースで、速報が全国を駆け巡った。結果は無事に可決された。いよいよ聖清帝国支部の幕開けとなる。もちろん、実際に稼働できるようになるのはまだまだ先の話になるだろう。

 すぐさま次のステップへと移った。まず行ったは、トップ陣の選出だ。支部総督を皇帝陛下と主席総督のどちらが務めるかが問題となった。憲法上、陛下は政治に関する一切の権能を有しない。この時空調査団が政治に関わるものかどうかと考えた時に、非常に複雑な問題なのだ。

 時空調査団の目的そのものは政治とは全く関係がない。純粋な学問的探求なのだ。しかし、多くの法により規制される組織であり、国家の顔とも言えるほどだ。それに統括支部総督に選出される可能性もある。故に、主席総督がトップに就くことで決着した。


 その下に大臣を置き、他の省庁と同様に補佐官と主席事務官を置くことになった。そして来年度入庁試験に事務方を採用し、主となる団員は育成カリキュラムが出来上がる見込みの2年後の試験で採用することになった。

 無事に組織体系が組み上がった。政令により処遇も定められた。あとやるべき事は、人員を確保するだけだ。








 それから数年が経った......





 聖清帝国支部の調査団は無事に稼働できる状態まで準備が整った。私、宮野朱里しゅりは大学を卒業後、組織の立ち上げメンバーとして入庁した後に団員となった。今ではチームリーダーを任されるほどにまでなった。

 運用体系としては複数のチームがそれぞれの時代に分かれて調査を行う。場合によっては複数チームで一つの時代に向かうこともある。チームリーダーは任務遂行の責任だけではなく、チームのメンバー全員の安全を確保し無事に帰還させる責任も同様に背負っている。非常に重要なポジションなのだ。


 もうしばらくすると、聖清帝国支部として初めての調査に出発することになる。私のチームが初陣を任された。支部の今後を左右するといっても過言ではない。それだけに失敗できないプレッシャーも大きい。

 しっかりと準備をして、必ずや成功してみせる。チーム全員が無事に戻ってこれるように、抜かりなくプランニングをしなければならない。楽しみ半分、不安が半分といったところだろうか。

 後方支援は別部署から転送されてくる。食料等は困ることがない。その点、すごくありがたいことだ。現地調達はかなり厳しいし、当該の時代で食糧不足を起こしてしまいかねない。だから必要なものはすべて現代から送られてくる。


 公務員として、また調査団員として、その責務を全うしたいと思う。

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