第2話 組織の立ち上げ

 相山博士の功績によりタイムトラベルが可能になった現代において、歴史調査の必要性を訴える声が多く上がってきた。未来へは行けないように博士が制限をかけて、それを特定や解除できないようにと、生涯にわたって秘密としてきた。

 好き勝手に時間旅行をしてしまうと秩序の崩壊に繋がりかねない。そのため、すぐに国際条約が締結された。過去の時代の人々に過度に干渉しないこと、その時代や地域のルールに従うことなどが厳しく定められた。

 時間旅行をしっかりと管理できるようにするため、国際的な組織の立ち上げを検討することになった。


 国際政府の本部でさっそく議論されることになった。この国際政府はかつての国連から発展したものだ。各国政府と同等の権限を付与され、世界平和のために規模を拡大してきた。現代では、厳しい法の取り締まりにより国家間の争いは一切おこっていない。みんなで力を合わせて生きていこうという思いが非常に強くなっている。

 食料不足はすでに解決しており、「奪い合えば足りないが、分け合えば足りる」の精神をモットーにしている。フードロスと呼ばれていた問題も現代には存在していない。技術が一足飛びに発達し、とても平和で幸せな世界になっている。

 まずは立ち上げる組織の名前が決まった。聖清語では「時空調査団」、英語では「Space-time Survey Team」という名称に決まった。各国で公募により決められた。多くの人々から支持を得るため、その方法になったようだ。


 国際政府内に本部が設置され、国際総督の直轄となった。そして大陸に基づくエリアごとに統括支部が置かれ、各国に支部が置かれることになった。そして、各国がそれぞれの歴史について調査することになった。ただし、争い等の複数の国がかかわる内容については当該国同士が連携して調査することが定められた。

 月1回、統括支部や本部での会合がもたれることも決められた。情報共有は大切なことなので随時行うが、さまざまな決定のために会合が必要だと考えられた。規模が大きいのでオンラインで行われる。各国間でかなりの時差があるものの、どの国でも身分は公務員であるためスケジュール調整を求めることとなった。

 団員に対する待遇はかなり手厚くなっている。各国に所属する団員は通常の公務員であり、統括支部以上の団員は国際公務員として国際政府に所属することになる。採用試験は共通で、大卒以上と流ちょうなレベルの英語が求められる。また、過去の時代でいかなる過酷な環境にもくじけない強い精神力と、強靭な肉体も必要とされる。とはいえ、この二つは入団後の教育機関で身につけるものとされた。


 同時に、さまざまな法的枠組みも考えられた。責任の所在や団員を守ること、組織の信用を失墜させないことなど、かなり具体的に法律が定められた。各国支部のトップは元首または首脳が務めることとなった。統括支部総督は各国の支部総督の中から互選で選出されることに決まった。

 我が国、聖清帝国のことについてはまた改めて記すこととする。

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