ゲーム

ゆーく

第1話




「ポッキーゲームしよう」

「は?」



スマホを片手にソファに寝そべっていた奴に跨り私は手に持っていた輝かしい好物を掲げた


硬く細いクッキー生地に絡み纒わる漆黒の甘味

ぁあ!なんて美味しそうなの!

私はこの甘美なる至高のお菓子が大好きだ



「何、いきなり」

「ほっひーへーむひよう」

「既に食ってんじゃねぇか」



我慢できずに一本食べてしまったが問題ない

ポッキーは一袋に沢山入っているのだ

さすが至高、満足度も申し分ない



「一緒に食べよう?はい、あーん」

「……」



この至高の甘味を奴にも与えてやろうと口に咥えさせるも目の前の男は眉根を寄せて怪訝そうにするばかりで一向に口を動かさない


まぁいいやと奴が咥えたポッキーの先を私も咥えようとしたところでポッキーが消えた


何故!?と声を上げる間もなく口に咥えたポッキーを取り上げた男は私の頸に手を添えるとグイッと押さえつける

そして軽いキスをすると何事もなかったようにスマホゲームを再開させて1人でポッキーを食べ始めた



「ちっがーーーーう!!!!」

「ぁあ?」



私が憤慨すると奴は迷惑そうに目を眇めるがそうじゃない!

ぇえい!ポキポキと1人で良い音させおって!



「そうじゃない!ポッキーゲーム!」

「だからチュウしてやっただろうが」

「なんて上から目線なんだこいつ!私が求めてるのはそんなお手軽チュッチュじゃないんだよ!距離が徐々に縮まってくじれじれドキドキチュッチュなんだよ!!それでも私の彼氏か!!」

「知るか、めんどくせぇ」



ハッと鼻で笑った奴はまたもやスマホに視線を落としたためムカついた私は腰を下ろしていた奴の腹の上に更に力を込めてドスンと座り直してやった



「ガハッ」

「はい、もう一回」

「てめぇ……」



苦しそうに睨みつけてくる奴の口に問答無用でポッキーを押し付ける

奴はやっと諦めたのか舌打ちをするとガジッと豪快にポッキーを咥えた


そうこなくては!


私も反対側を咥えたが奴は動かす気がないのか咥えたまま冷めた目を向けながら寝転がっている

そっちがその気なら!と無駄に闘志が沸いてしまった


絶対じれじれドキドキをおまえにも味わせてやんよ!!と心に決めてゆっくり唇と舌を使いながら進行を進める


ポキ、ポキ、と微かな音だけが部屋に響く


初めは奴の目を睨みつけてやったが徐々に進むうちに視線を下げて奴の唇に向かった


ポキ、ポキ、とゆっくりと食べ進めるのと同時に心音もドキ、ドキ、とゆっくりと高鳴った


少しずつ熱くなる頬と胸の内の変化を感じながら遂に唇が奴と重なる



チュッと、


軽いリップ音を立てて唇を離すと奴はコレで満足かというような呆れ顔をしていたので私は満足気に笑みを浮かべた



「へへへっ」

「……」



体験してみたかったじれじれドキドキチュッチュができてご満悦な私は熱くなってる頬とだらしなく緩む口元を直すこともせず、よっしゃ!もう一回!と再度ポッキーを手にしようとした


それを奴に阻まれ気付いた時には強く抱え込まれ奴と位置が入れ替わっていた


そして押し付けられた唇が徐々に深くなっていくことに

まぁいいかと思考を変え奴の首に腕をまわした



手から零れ落ちたポッキーが床に散らばったがソレはあとで奴に食べさせようと頭の隅で考えながら私は大好きな甘さを味わった









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