第2話 俺の息子が異世界魔王だった件について2
再び光が俺たちを包むと我が家のリビングにいた。
退職金込みで購入したマイホームの自慢のリビングだ。ダイニングとキッチンが繋がっていて広々空間だ。キッチンでは妻の瞳が夕飯を皿に盛り付けているところだった。
「あら? 二人でどこに行ってたの?」
さっきまで俺と息子の勇人がいなかったことには気づいていたようだが魔法を使った瞬間は見ていなかったようだ。
「いや、ちょっと外に……」
なんて説明すればいいか分からずに曖昧な返事になってしまう。
「そう、じゃあ手を洗ってご飯並べるの手伝って~」
「あ、あぁ了解」
それから三人でダイニングに夕飯を運び席に着く。
「「「いただきます」」」
今日の夕飯は白米に味噌汁、から揚げ、野菜のアヒージョと茄子甘味噌炒めの一汁三菜だ。結婚して子供が出来ても毎日一汁三菜の食事を作ってくれる瞳には頭が下がる。
さっそく味噌汁から手を付けようとしたところで勇人が切り出した。
「母よ。夕飯の前に聞いてほしいのだが」
「ん? どうしたの?」
いきなり変な話し方をし始めた息子に対しても平常心を崩さない妻はさすがだ。
「実は俺は前世では魔王だったんだ」
「あらそう。それは凄いわね」
「え? それだけ?」
なんか軽く流してしまったぞ。俺なんて息子が突然わけわからんことを言い出して困惑してしまったというのに。
「? 何だか昔の正人君見てるみたいね」
「え?」
「中学生位だったかしら。突然「力に目覚めた」とか言い出して~」
「お、おい! いつの話してんだよ」
突然俺の黒歴史を話し始めた瞳を慌てて制した。
息子に思春期の黒歴史を知られるとか死にたくなるぞ。
「え~。さすが親子、似てるな~って思ってたのに」
「ほう、父にも何か力が?」
「いや、何もないから。ただの社畜だから許して下さい」
「ふむ。ならば深く追及はしないが」
「ほら、早く食べないとご飯冷めちゃうわよ」
「そうだな。いただきます」
なんだか俺の恥ずかしい過去だけばらされて有耶無耶になってしまった。
〇〇〇
夕飯を食べ終えてから俺は片づけをするべくキッチンへと向かった。
夫婦仲を円滑に進めるには家事は分担するのがベターだ。料理が壊滅的な俺は片づけ専門だ。
すると勇人がついてきて、「今日は迷惑を掛けたな。片づけは俺がやろう」と言い出した。
ありがたくお願いすると「任せろ」と意気揚々と腕まくりをして見せ、右手をバッっと振った。
するとひとりでに食器やスポンジが動き出し、まるで意思を持ったかのように洗い物をし始めた。まるでハリー・●ッターのような不思議な光景だ。
「おい、勇人これは?」
「この間金曜ロードショーでやってたハリ●タをまねて術式を作ってみた。なかなか便利だろう?」
「マジかよ……瞳~!」
俺は大急ぎでリビングでくつろいでる嫁を呼んだ。
「もう~、何? 大きな声出して」
「いや勇人がさ」
キッチンの様子を見るよう促す
「あら~、勇人が洗い物やってくれたの? ありがとう~」
すでに魔法のお片付けは終わっており、キッチンは綺麗に片付いていた。
「いや、当然のことをしたまでだ。いつも任せっきりにしてしまっていたからな」
「ちょっと~ウチの息子イケメン過ぎるわ~」
勇人の頭をよしよししながらメロメロになっている。
「もう少しで小学生だし、勇人も大きくなったわね~」
「いや、そうじゃなくて勇人の魔法がさ」
何があったかを説明しようとしたところまったく聞く耳を持ってくれず
「魔法って、正人君親ばか過ぎない? ぷふっ」
失笑されてしまった。
この様子じゃ目の前で見せないと信じてもらえそうに無いな。
「さて、それじゃあ早くお風呂入って寝ましょうね。明日は入学式の準備をするわよ~」
「……そうだな」
いよいよ数日後には勇人の小学校入学式だ。
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