第二話 ニセモノ
「ゆうちゃーん!おきなー」
その声を聞いて俺はゆっくりと目を開く。時計を見るとまだ8時だ。いやまだというのはおかしいかもしれないが今日は土曜日だ。だから徹夜でラノベを読んでいたというのに…
「母さん!その呼び方やめてって一年くらい前からいってるよね!?てか土曜日くらい寝かせてぇ…」
「これ誰かに聞かれたらマジで発狂もんだぞ…」
俺はバレて学校の友達にネタにされた未来を想像して身震いする…何としてでもこれだけはバレる前に直させなければ…
「おはよっ!ユウ」
「んぁ。おはよう月葉」
…………?
つき…は?
は?
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「うるさいなぁもう」
「待て!なぜお前が朝っぱらからうちにいる!?」
「ちょっと朝から迷惑だよ?」
「こっちのセリフな?」
まて。まさか…
自室で本を読んでいる母さんのもとへ俺は急いだ。
「母さん!なんで月葉がうちにいるんだよ!」
「なんか出かける約束したって月ちゃんに聞いたけど」
「やられた…」
月葉は昔事あるごとに予定があると偽り俺の家に上がり込むことがあった。
そのことを思い出し俺は肩を落とすしかなかった。
「なんのようだ?ようがないなら早く帰れ」
「ゆうちゃんはひどいなぁ」
「ちょっと待てその呼び方やめろ」
「なーに?ゆうちゃん」
よりにもよってこいつにバレた…新しいおもちゃを見つけた子供のような目で俺を見ている。オワター。
「学校でもゆうちゃんって呼んでいい?」
「本当に勘弁してください…」
「私さーゆうちゃんに頼みたいことあってぇ」
「ぐ…お前性格悪くなったな」
「学校で呼んでいいのね?」
「神様仏様月葉様」
「よろしい」
そういうと月葉はお世辞にも大きいとは言えない胸を張ってにっこりと微笑んだのだった。この悪魔まじでいつかガキの頃の恨みも込めて倍返ししてやるからな。
「昨日のこと誰にも言ってないよね?」
「言ってない。しかもまだ誰にも会ってない」
「よかったよかった」
「なんだよ口封じが目的かよ」
「いやそれもあるけどー」
「え?二つ目もあるんすか」
「ゆーちゃぁぁーん!」
「すみませんでした。ご奉仕させていただきます」
クソアマが許さんぞ本当に。調子に乗りおって
「私さ。フラれたじゃん?」
「あぁ。昨日のやつな?」
「でさぁ考えたんだけどやっぱりやられっぱなしなのはやだなって思ったのよね」
「ッスー…嫌な予感がする…」
「でさ天才的な頭脳を持つ美少女月葉さんは思いついちゃったわけ!」
「偽の彼氏作って、可愛くなってアイツにフったことを後悔させてやるの!」
「はぁ。頑張ってくだせぇ」
「でユウが私の彼氏役ね?」
「嫌です断固拒否します!」
「でぇプランとしては〜」
「待って?拒否権ないの?」
「あると思ってんの?」
「いや俺もね彼女がいたりするかもしれんやん?」
「いないでしょ」
「はい」
ちきしょう…こいつガキの頃からまっっっったく成長してねぇぞこれ!おいこらネットに女子は実年齢より二つ上とか書いたやつ出てこい!
「まぁでもあの喧嘩したらなぁ」
「そうなんだよねぇ……まって?なんでユウが喧嘩の見たみたいに話すの?」
「あ…」
「まさか…」
「いや!ちがうぞ月葉!昨日たまたまサイゼに行ったらカップル喧嘩しててたまたま耳に入っちゃったというか…」
「あんたサイゼにいたの!?私のこと好きすぎるあまりストーカーしたのね!変態!」
「違う!」
「あくまで容疑を認めないみたいね!通報!!」
「冤罪だ!弁護士をよべ!!」
第一次ユウ月戦争は俺の母さんが「夫婦喧嘩みたいね」といいながら横を通ったことにより両者耳を真っ赤にして痛み分けとなった。
月曜日
俺はまだだるい体に鞭をうちながら玄関を開ける。
「なんでお前がいるんだ」
「えぇひどい!月曜日から一緒に登校してくれるって言ったのに!」
玄関の前にはそう弱々しい彼女の演技をする月葉がいた。
「その演技やめろきもい」
「照れてんのぉ?」
そう言いながら腕に手を巻きつけてくる。
笑顔の彼女だが目が全く笑っていない。むしろ計画通りにならないから彼氏役やれカスとか思ってそう。
わかったから横っ腹をつねるな。
その笑顔のまま周りからは見えない位置で横っ腹をつねってくる。痛いからうん。そこマジで。
まあそんな大胆な登校してクラスで話題にならないわけないよね。って事でせっかくの昼休みは男子に囲まれていた。
「なぁ裕作!あの可愛い一緒に登校してた子誰だよ」
「彼女?なの?返答によっては燃やしなければならないかもしれない」
「あの子隣のクラスの子じゃない?美人で有名な」
「あー知ってる知ってる!バスケ部の子でしょ?」
へぇあいつバスケ部なんだ。
てかこいつらになんて言おう。彼女ではないんだが彼女じゃないって正直に答えると多分あいつの計画(本当にプランがあるのかは謎だが)に影響がでるかもしれないしなぁ
でも彼女じゃないのに彼女っていうのもなんか嫌だし俺のタイプじゃねぇしなぁ。しかも彼女とか言ったら俺明日になったら屍になってそうだし。
幼馴染でいくか!そうだな。そう思った時教室のドアが開いた。
「ユーウ!ご飯食べよ!」
元凶の美少女。月葉が教室に元気に入ってくる。
「一人で食えよ」
「え!ひどい!一昨日は家に入れてくれたのに…」
「このバッ!」
残念ながら月葉口を塞いだが肝心なことは言い終わった後であった。
やばい背中に目ができたかもしれん見なくてもどんな顔であいつらが俺を見てるかわかる…
「ウラギリモノ」
「ユウノロウ」
「バクハツシロリアジュウ」
皆俺に向かって祝福の言葉を送ってくれている。
この悪魔め。絶対こうなることが分かっててやりやがった。なんならあいつ楽しんでんだろ!俺は月葉睨むとぺろっと舌を出して笑った。チキショウ可愛いなこいつ!この日からクラスでは俺は次の日と付き合っているということが共通認識となった。あと言うことがあるとすれば体育の時間いろんなところから俺に
「なぁ。なんで俺たちは放課後にわざわざスタバにいるんだ?できれば昨日読んでたチラムネの続きが読みたいんだが…」
「チラムネ?なにそれしらないわー。てか作戦会議だから。」
彼女はエスプレッソを飲みながら脚を組む。なぜ美人はこれだけで絵になるのだろうか。
「チラムネをしらないとは人生の8割を損してるな」
「そーなんだ。でさ明日からなんだけどさ」
「おいちょっと待て雑かお前。まあいいけどさ」
「明日からとりあえず一緒に学校に行くのは確定でお昼も一緒に食べようか」
「まあどうせ拒否権ないと思うからいいんだけどさ」
「そんなすぐに彼氏できたなんて言ったら尻軽だと思われるんじゃないの?女子の世界だとそう言うやつってハブられたりするんじゃない?」
「あーかもね。でもそうしたら元カレとしては嫌でも意識せざるを得ないかなって」
「お前メンタルつよすぎじゃね?」
「割とみんなやりそうだけどね」
「そもそも見返してやるためにニセモノの彼氏つくるとか普通やらないから」
「まあそんな関係ない話は置いておいてよ」
「モロお前の話だったんだが…」
「でさとりあえず私は自分磨きをやるとして」
そう言って月葉は腕を組みながらまじまじと俺を眺める。
「なんだよ…」
無性に恥ずかしくなった俺はそれを隠すように言った。
「いやなんか暗いなと」
「悪かったな!?暗くてなぁ!」
「うん。」
「ちょっとくらいは否定してくれても良くない?」
「まぁユウだからいいかなって」
「ユウさあ普通に服のセンスとかも悪くないのにその無駄に長くしてる髪のせいですごい暗い陰キャ感でてる」
「なに?俺は健太か?引きこもってねぇぞ?」
ぐっ…そうだったこいつはこのネタ通じないのか。
「いや誰だし…普通に顔も悪くないけどなぁ」
「あ!そうだ」
そう言って月葉は手をポンと叩いた。
こう言う仕草は一般人がやるとキモいのに美人がやるとめちゃくちゃ可愛い。
「お兄ちゃんに切ってもらおうよ」
「え?リュウに?」
月葉の兄貴、桜川隆輝は俺たちの二つ上のお兄さん。昔から手が器用で将来は美容師になると言っていた。その過程でおれは何度か切ってもらったがお世辞にもうまいとは言えなかった。まあ4年ほど前の話だからもう大丈夫だと思うが。
「あーユウも覚えてたか」
「そりゃな」
「そうだよねぇ。好きな子の兄貴だもんねぇ」
「ちょっと好きな子のってところは分からんけど」
「まあお前は俺に言うんだから自分磨きしっかりやれよ」
「まかせてよパーフェクト美少女の月葉ちゃんだからね」
「胸以外はな」
「通報」
「ストップストップ!!そもそも罪状なによ!」
「可愛すぎる幼馴染の胸を凝視したのちに襲いかかってきた罪」
「まて。後半に関しては全く身に覚えがない」
「犯罪者はみんなそろってそう言うんです」
「もう俺は犯罪者認定されてんのね」
そう言うと月葉は昔のころのような太陽のように明るい笑顔を見せる。おれは無意識に月葉の頭を撫でようと前に出た手を静かに引っ込めた。
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