第12話 別れ

 王都へつきに街を案内して次の日……。


「さぁ、着いたぞ」

「……うん」


 ここがルナの旅の終着点だ。

 俺は孤児院の人に話をつける。


「ルナちゃん、はじめまして……私は……」


 互いに挨拶を済ませると俺は最後の挨拶をする。


「それじゃあ、元気でな……」

「うん……」


 ルナは泣きそうになるのを堪え必死に笑顔を作っている。


「最後に一ついい?」

「なんだ?」

「貴方の名前、聞いてもいい?」


 俺はルナに自分の名前を名乗っていなかった。


「ティオレ・フェリオだ、皆からはティオって呼ばれてる」

「ティオ……」

「それじゃあ、俺はいくな……これから依頼があるもんでな……」


 ルナは黙ったまま俯いている。


「おいおい、湿っぽいのは無しだぜ? 今生の別れってわけじゃない、また何処かで会えるさ」

「ホント?」

「あぁ、本当だ……約束……」


 そう言って小指を互いに絡める。


「やっぱり私、貴方と行きたい」


 唐突な言葉に俺は戸惑う。

 俺は……。


「……お前はここで暮らすべきだ……」


 冒険者である自分は危険と隣り合わせだ、このこと暮らしていくことは叶わない。


「お願い! 連れてって!」


 いつもの駄々ではなく真剣な言葉だった。

 

「……すまない……」


 そう言うと、俺はルナに背を向け歩いていく。

 後ろでルナが泣き叫ぶ声が聞こえる。

 だが一切耳を傾けなかった。

 聞いてしまえば決心が鈍るから、ルナを危険に晒すから……。

 もうここで暮らすことはできないな……。

 孤児院がここにある以上、ルナは絶対に俺を探し出すだろう。

 俺は宿に帰るとベッドに横になる。

 罪悪感が身体を蝕んで何もする気が起こらない。

 だが、休んでいる暇はない。

 俺は重い身体を起こし、宿の主人にここを出ていくことを伝えて色々支度をする。


「そうか、この国を出るのか……」

「あぁ……もし、オリアナが探していたらこれを渡してくれ」

「わかった……」


 オリアナ、すまない……約束破って……。

 俺はその後逃げるようにして国を出たのだった。

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