第11話 王都へ向かう途中

 ルナの所へ戻ると、抱きついてくる。


「どうした?」

「……もう、帰ってこないかと思った……」

「どうして?」

「わかんない……一瞬、そんな気がしたの……」


 ルナはさっきより強くギュッと抱きついてくる。


「大丈夫、俺はここにいる……」


 ルナを抱きしめると、頭を撫でて宥める。



「ほんと?」


 ルナは涙目になりながら見上げてくる。


「あぁ、現にいるじゃないか……」


 そう言うと、ルナは再び胸に顔を埋める。

 これだけ深刻そうに言うなんて……まるで見てきたかのように切羽詰まった感じだった。

 しばらくルナを宥めて泣き止むと、再び馬車を走らせたのだったのだが……。


「なぁ、離れてくれないか?」


 膝の上に乗っているルナにそう言う。

 

「嫌……」

「運転しにくいんだが……」


 ルナは離れようとしない……。

 そして夜になり、


「なぁ、そろそろ離れてくれないか?」

「嫌……」

「そうは言っても一緒に寝るわけにはいかんだろ……」


 ルナは「?」みたいな顔をして俺を見る。


「とにかく離れろ」

「嫌!」


 抵抗するルナを引き剥がす。


「あぁ!」


 頬を膨らまして俺を見ながら近づいてくる。

 俺は距離を取ると、彼女は泣きそうな顔をして見てくる。


「うぅ……」

「あぁ、もう! くっつかないのなら近くに来ていいいぞ」


 ルナは渋々と言った感じで俺の横に座る。


「ほら、早く寝ろ……」

「起きてる……」


 眠そうな目を擦りながらルナは言う。


「無理するな、どこにも行かないから……」

「………うん」


 俺の目を見ると手を握り、膝に頭を乗せる。


「……スゥ……スゥ……」


 しばらくして可愛らしい寝息が聞こえる。

 ようやく寝たか……。

 ルナを抱えて寝かせようとすると首に手を巻き付けてくる……。

 しまった……。

 引き剥がそうにもガッチリ固定され逃げられない。


「くそ……」


 結局そのまま離れず、俺はそのまま眠りにつくのだった。

 次に目を開けると茶色がかった黒い瞳と目が合う。

 

「起きてるのなら離れろ……」

「……イヤ……」


 子供特有のイヤイヤ期か?


「朝食作ってやるから離れろ……」


 ルナは渋々ながらも俺から離れる。


「早く作って……」

「はいはい……」


 そう言って朝食を作る。

 とは言っても村で買った野菜を煮込んだだけ。

 

「ほら……」

「なんか変な味……」

「自然の味だ、黙って食え」

「うぅ……」

「ちゃんと食べたら果物食べていいぞ」

「ほんと!?」

「あぁ、残さず食えたらな」

「よーし! はむ! うげぇ〜」


 そんなこんなで食事を終えると再び馬車を走らせてる。


「離れろ」

「嫌、ここがいい……」

「全く……」


 ルナはえへへっと笑いながら言う。

 これは王都へ着いたら大変そうだな……。











 

















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