第10話 報復

「魔種か……」


 魔法の中に違う魔法を埋め込み、自分の魔力を流すことで発動する自限式魔法だ。

 中に魔力の膜を貼り、暴発しないよう注意しないといけないのでS級魔法に認定されているので俺もみるのは初めてだ。

 ルナが炎の球の中に入れていたのは氷花ひょうかだろう……。

 先ほど火が上がっていた場所から氷の花が咲き誇っている。


「お前、凄いな……」

「えへへ〜」

「だけど向こうでは自衛以外魔法は使うなよ?」


 ルナは不思議そうに俺の方を見て、


「どうして? お爺ちゃんは好きなだけ打っていいって……」

「それは爺さんやこの森だからだ、向こうには人が沢山いるから迷惑がかかる」

「わかった!」


 そう言って暫く何気ない話をして、


「さて、そろそろ行くか……」

「うん!」


 俺に対する人見知りが薄れてきたのか、彼女はよく喋り笑顔も増えた。

 俺の手を握り、笑顔で話しながら歩くのだった。


 近くの村が見えたので歩いて行き、馬車をかりて王都へ向かう。


「大丈夫か?」


 ルナの方を見ると、初めは楽しそうに見ていたがどうやら馬車酔いしたらしい。


「だいじょ……うぷっ……」


 整備された場所ではない場所を通っているので揺れが酷いのもあるだろう……。


「少し休むか……」


 馬車を止める。


「ここで休んでろ……」

「どこいくの?」

「トイレだ……」

「ついてく……」

「くんな!」

「む〜」


 むくれるルナを無視して行く……。

 目的は俺か……。

 途中からつけていたのを気づいていたので、目的はルナかと思ったが……。

 

「出てこい……」


 そう言うと、複数の男が出てくる。

 数は5人……うち4人は見た事があった。


「よう、この前は世話になったな……」


 ボコボコにして再起不能にした四人組だった。


「誰だっけ?」

 

 とぼけたように言うと、イラっとしたのか食い気味に、


「舐めてんのか!」


 その言葉の後に何か言うが、全く頭に入れる気はなかった。

 あの男……ジェイルか……。

 国家B級犯罪者に指定されている盗賊だ。

 魔法の銃を使い、遠距離に特化した戦い方を主にしている。

 速射できる魔法の銃で戦うので魔法士にとっては天敵と言える。

 一通り喚き終えると、息を切らすとジェイクが前に出る。

 犯罪級にはランクによって強さも変わる。

 SS級のデルスは別格に強く、国の軍隊でも一瞬で滅ぼす程の力がある。

 Sも同程度で、Aは一部隊……Bは熟練の冒険者数人なら軽く倒せる力がある。

 

「お前の死神だ……」

「そうか、死神か……」


 睨みつけると男は震える。

 この程度か……。

 所詮B級なんてこんなもんだ。


「見逃してやるから消えろ……」


 そう言うとジェイクは楽しそうな笑顔で俺を見ていた。


「お前ほどの強敵を前に逃げられるか!」


 銃口を俺に向けてきた。

 

「そうか……」


 一気に距離を詰める。

 流石はB級……なんとか反応して魔法を瞬足で距離をとろうとする。


「遅い」


 手刀でジェイクの腕を切り落とす。


「うあぁぁぁ!」


 男は悲鳴をあげ、無くなった腕を見つめる。


「今治療すればくっつくが、どうする?」


 切り落とした腕を拾い、ジェイクに見せる。

 顔を真っ青にして俺を見るジェイク。


「悪かった! 俺は消える! だから!」


 許しをこうジェイクに興味が失せる。

 俺は持っていた腕をジェイクに投げる。


「消えろ、そして二度と俺の前に現れるな……部下にも言っておけ……次にもし、俺の前に立ちはだかるのなら腕一本じゃ済まさないから……」


 そういうと、俺はルナの元に戻った

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る