第8話 選択

「それは俺が決めることじゃない……」


 彼女は黙り込んでしまう。

 まだ10歳くらいの少女なのだ、一人で生きていくには若すぎる。


「どうすればいい?」


 埒があかないので、俺は2つ提案する。

 1.王都で孤児院に入って暮らす。

 2.ここで暮らす。

 

 2を選んだ場合は狩やサバイバル生活の知恵を教え込むとも伝えると、


「少し考えさせて……」


 そう言うと、ベッドに横たわる。

 今日は、そっとしておくか……。

 そう思い外に出ようとすると、


「行かないで!」


 悲痛な叫びに振り返ると泣きそうな顔で少女は俺を見ていた。


 このまま一人にするのも可哀想か……。


「わかった、今日は一緒にいてやる」

「……ほんと?」

「あぁ、本当だ……何か食いたいものはあるか?」


 首を横にフルフルと振る。


「ところでお前の名前は?」

「……ルナ」

「ルナ、お前の両親はどうした?」

「わかんない……お爺ちゃんが言うには異世界?ってところに行ったらしい……」

「異世界?」

「うん、こことは違う世界に居るらしいの」


 こことは異なる世界か……いいように言ったものだ。

 

「質問を変えよう、他に知り合いは? どこかに住んでるとか」

「わかんない」

「そうか……」


 身寄りがあるのなら俺がそこまで送り届けようと思ったが、どうやら本当に身寄りがないらしい。


「私、どうなるの?」

「さっきも言っただろ? お前と同じ身寄りのない子供の面倒を見てくれる場所か、ここに一人で生きていくか……そのどっちかだって……」

「そう、なんだ……あはは……」

「その汚ねぇ愛想笑いやめろ……」


 必死に笑おうとしている少女を見て心が痛む。

 だが、俺にできるのはここから出して孤児院に届けるか、ここで生きていく術を教えるくらいしかできない。


「私、一人は嫌……」


 ルナは俺の手をギュッと握り、そう言った。

 


 




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