第7話 異常者


「何をいう……私は……」

「動くな……」


 俺の言葉にデルスが歩みを止める。


「お主如きがワシに勝てるとでも?」

「あんな魔法如きで俺が倒せるとでも?」


 デルスが先程の重力魔法を強化する。

 

 この子を巻き込むつもりか!?


 少女は地面に叩きつけられると音がする。


「うぅ……」


 俺がやっと立っていられるのだこのままだと恐らく……。


「ほう、まだ立っていられるのか……」

「孫はいいのかよ……」


 そういうと、老人から20代くらいの男性に変わる。

 不敵な笑みを浮かべる。


「いいのいいの、生死は問わないし……」

「何故この子を狙う……」

「君に言う必要ある?」

「この子のお爺さんはどうした……」

「あぁ、あの爺さんな……苦労したぜ!」


 そう言うと少女に何かを投げる。

 それは時計だった。

 

「嫌、嘘……」


 その時計には血のような跡がついていた。


「はは、その顔いいねぇ〜」


 少女の絶望した顔に男は恍惚とした表情を浮かべる。


「異常者が……」

「あぁ?」


 漏れ出た言葉に反応してこちらを向く。


「俺が異常者?」

「それ以外何だってんだ?」


 俺は魔法を展開する。


「この子を護れ……」


 結界を発動し、彼女を重力魔法から守る。


「少し待ってろ、すぐに終わらせるからそこから出るなよ……」

「うん……」

「良い子だ」


 男は苛立ちながら魔法を展開する。


「紅蓮の炎よ! 我の剣となりて敵を薙ぎ払わん!」


 上級魔法炎斬か……。

 言うだけのことはあって中々強力な魔法だ。


「これが俺の最強魔法だ!炎斬!」


 最強魔法ねぇ〜。

 剣に手をかけ魔力を込める。

 魔力が剣に浸透していくような感覚がする。

 腰を屈め、抜刀の構えをする。


「いくぞ……」


 剣を勢いよく振り抜くと同時に炎の斬撃がぶつかる。


「そんな剣、すぐに溶けて……」


 俺は斬撃を切り伏せる。

 男はあり得ないと言った感じで俺を見ている。


「もう一度だ!」


 男はもう一度魔法を展開しようとするが、


「無駄だ」


 そういうと、男の上半身と下半身が左右に分かれていく。


「なっぜ……」

「お前に教える必要があるか?」


 先程言われた言葉を返すと、男は不敵な笑みを浮かべながら絶命していった。

 俺は少女の方へ向かう。


「大丈夫か……」

「うん」


 そう言う彼女は心ここに在らずといった感じで答える。


「お前はこれからどうする?」


 そう言うと少女は答えに戸惑った顔をする。

 急に迫られた選択とはいえ、迷ってる暇などない。


「………どうしたらいい?」



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