第6話 強敵

 ピクリとも動かなくなる。


「離してくれ、もう終わった」


 そう言うと少女は小さな瞳を開けて確認し離れる。


「取り敢えず、戻るから離れるなよ……」


 取り敢えずこいつを戻さないとな……。

 怖い思いをしたので大人しく戻ってくれるだろう……。


「後ろに乗れ」


 膝を折り曲げそう言うと少女は乗り掛かる。


「振り落とされるなよ……瞬足またたき


 魔法を発動し、最初に行った結界の渦の場所に向かう。

 少しして着くと少女を下ろそうとする。


「あれ、気絶してる……」


 スピードを落としていったのに気絶するのは想定外だった。

 結界を開けて中に入ると彼女の家へ向かいベッドに寝かせる。

 

「ん、あ……」


 すやすやと寝息を立てたのを確認して出て行こうとすると後ろから気配がする。


「ようやくご帰宅か……」


 そう言って振り向くとローブを纏った初老の男性が立っていた。

 その老人の顔には心当たりがあった。

 かつて国家最強魔術師にして叛逆の烙印を押された国家SS級指名手配犯デルス・カーソルだ。


 これはとんだ大物がいたもんだ……。

 

「お主、どこから入ってきた……」


 そう言うと急激に身体が重くなる。


 重力魔法か!!


 流石、未だかつて敗北のない天才魔術師……格が違う。


「俺には結界の渦が見えるんだよ……」

「ほう、お主は見えるのか……」


 この世界で魔力の流れが見える人は限られている。

 たとえ魔法が使えたとしても魔力の流れが見えるのは一握りと言われている。


「王国の追ってか?」

「いいや、俺は国から調査を依頼されただけだ……」

「調査……あぁ、魔族軍か……」

「何か知ってるのか?」


 デルスが言うにはここに魔王軍が先日まで居たそうだ。

 先日ということはもう撤退してしまったのだろう。

 っということはもう調査をする必要はないのだが……。


 これどう伝えるかなぁ〜。


 伝えるにしてもデルスのことを伝えれば国を上げて討伐になるだろう……。


「この子は孫か?」

「あぁ、私の最後の希望にして最愛の孫娘さ……」

「そうか……」


 どこか違和感を感じた。

 理由はわからないが、この男の言葉はどこか薄く感じる。

 そう思っているといつの間に起きたのか、少女は目を擦りながら俺の服の袖を掴んでいた。


「起きたのか……お前のお爺さん帰ってきてるぞ」


 少女はデルスを見る。


「違う……」


 少女は怯えたように言い放った。


「……誰?」

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