第5話 冒険者共

「何でお前まで出て来る」

「………」

「戻れ……」

 

 首をブンブンと横に振る。

 ここは今、冒険者で溢れている。

 誰しもが俺みたいな冒険者とは限らない。


「これは面白いもん見たなぁ〜」


 後ろから声がする。

 数は……全部で4人か……。

 振り返ると男四人が歩いて来た。


「お前、ここの事情詳しそうだな?」

「そこまでじゃないよ、さっき迷い込んでやっと出口さ……」


 こいつらは何かやばい……。

 直感的だが、彼らからは他の冒険者と違い狂気の気配がする。


「それにしても連れてる子可愛いね……妹とか?」

「……まぁそんな所だ、もう行っていいか?」


 そう言って少女の手を握り歩き出す。

 

「まぁ待てよ!」


 瞬間さっきを感じ振り向くと、剣を抜きこちらに振り下ろそうとする。

 剣を抜き受け止めるが、咄嗟の攻撃に吹き飛ばされる。


「嫌!」


 男は俺が吹っ飛ぶと、彼女を抱き寄せる。

 

「おっほ〜、これは上玉な美少女……高く売れそうだぜ!」

「お前ら!」

「おっと動くな……」


 少女の首に剣を突きつける。


「汚いな……」


 そう言うと男は薄汚い笑みを浮かべ、


「お前も冒険者ならわかるだろ?」


 冒険者と言ってもならず者の集まり、こういう盗賊みたいな事をする輩も少なくない。


「この女を置いていくなら命だけは見逃してやる」


 後ろから3人の男達が前に立つ。

 少女は泣きそうな目を必死に抑え、俺の方を見る。


「逃げて……」

 

 少女は俺に向かって笑顔で言う。

 普通なら助けてとか言うはずなのに彼女は逃げてと言ったのだ。

 この状況になったのも自分の責任だ……自分があの結界に入らなければそもそもこんな状況になってない。


「健気だねぇ〜ほら、さっさと行けよ」


 ゲラゲラ笑いながらこちらに言ってくる。

 

「はぁ〜、面倒くせぇ」

「あ?」


 手に魔力を込める。

 まずはあいつからあの子を離す!

 右手を突き出すと、少女を抱き抱えていた男が吹き飛ぶ。

 賭けは成功した。

 拳に風魔法を収束させ、まるで殴られたかのように吹き飛ばすことができた。

 まぁ、そんなことする冒険者……強いわけないよな……。

 人質を取る時点で強くないことは明白だった。

 動揺している3人に順番に詰め寄る。


「舐めやがって! ぶっ殺してやる!」

 

 そう言っていたが声からして動揺しているのであっさり制圧した。

 3人を倒し、横腹を抑えた男に向かう。


「俺を誰だと思ってる! 俺に何かあればベヒモスが黙ってないぞ!」


 この状況でその態度とは威勢がいい……。

 それにしてもベヒモスか……。

 膝を屈め、男に質問する。


「ベヒモスか……確か今のギルマスはテナートだっけ?」

「よく知ってるじゃねぇか、謝るのなら今のうち……」

「あのギルドは正義を掲げるギルドだ……それに俺はお前を見たことないが、新入りか?」

「……てめぇ、何者だ」


 これで確信した、こいつはベヒモスではない。

 ベヒモスはこの世界で調停者……こんな汚い真似はしない。


「誰でも良いだろ、それにお前達はここで死ぬ……」


 この世界は一つ間違えれば殺される……そういう世界だ。

 男は急に動揺を見せる。


「な、なぁ見逃してくれよ! 仲間だろ!?」


 どうやらベヒモスの人間だと思ったらしい。


「生憎俺はお前達を仲間だと思ったことはない」

「そんな……嫌だ!」

 

 剣を振り上げると泣き喚く男達……。

 今更何言ってるんだと言いたくなるがここは早く終わらせたい。

 

「じゃあな……」


 剣を振り下ろそうとすると、


「駄目!」


 腰に少女が抱きついてくる。


「何をする……」

「駄目……」

「どうしてだ……お前を攫おうとしてたんだぞ……」


 フルフルと首を横に振り、少女は何も答えない。


「へ、馬鹿が!!」


 剣を拾い襲い掛かってくる。


「死ね!!」

「はぁ……」


 剣を弾き飛ばし、首に突きつける。


「お前さぁ、大人しくしとけよ……」


 そう言うと男を蹴り飛ばした。

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