第4話 森の中の少女

 俺は少女に提案した。

 二日間この近くにテントを張って拠点にする事。 

 代わりに食事を提供する事。

 

「ここ…に…すれば…いい…のに……」

「それはダメだろ」


 少女は家を指差し、そう言うがすぐにお断りをする。

 

「どう…して……?」

「俺は外からの人間だ、普通は警戒するもんだ……お爺ちゃんに教わらなかったか?」

「私、外の…人に…あったの…初めて…なの……」

「そうか、なら今回は俺で良かったな、次はこうはいかないかもだから気をつけなよ」


 そう言ってテントを立てようとすると、座りながら不思議そうに見てくる。


「そんなに見られるとやりにくいんだが……」

「これって…なに……?」

「あぁ、これか…これはお前が住んでる家より簡単に作れる建物だ……」


 不思議そうな彼女に応えて作業をしていると、キラキラした瞳でやる作業を見てくるので正直やりづらい。

 

「そんなに見られるとやりづらいんだが……」

「私も、手伝って…いい…?」

「なんでお前がそんなことをする」

「私が…やってみたい…から……」

「変なやつだな、ほら……」


 そう言って杭打ちを渡す。


「ここにそれを打ち込むんだ……」

「わかった!」

「普通に喋れんのかよ……」


 どうやら話すのが久しぶりではなく、単に人見知りなだけだった。


「っておい!」


 彼女は大きく杭打ちを振り下ろす。

 手が地面にめり込むところだった。

 

「? 何か違った?」

「うん、薪割りみたいに振り下ろさなくていいからほら見ててみ」


 こういう時の冷静な自分が恐ろしい……。

 手本を見せそれに習い、彼女にもやらせる。

 彼女と共にやり、しばらくして完成する。


「これで完成だ」

「お〜!」


 初めて見る彼女は外と中を交互に見ている。

 

「案外狭いのね!」

「まぁ、寝るためだけのもんだしな……」

「寒くないの?」

「この時期そんなに寒くないだろ」


 今は丁度春が終わり、もう少ししたら着替えが大量に必要な時期になる。


「それもそうか」

「それじゃあ、俺は少し出る」

「どこ行く?」

「ここの探索だ、とりあえず出口探さねぇと……お前、何か知らないか?」

「どこから入ってきた?」


 入ってきた場所を教える。


「次はこっち……」


 そういうと少女は歩き出す。

 暫く歩くと、先程の様に魔力の渦が巻いていた。


「次はどこだ?」

「さっきと一緒」

「そうか、ありがとよ」


 そう言って俺は空間を開き、外に出た。





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