第21話 協力者
広報委員の話からするに先週の水曜日にシフトに入った人物が犯人、ないしは協力者であることが推測できる。
しかし裏サイトの記事は広報委員を通しているわけでは無いから、開示される前の情報を知っているはずがない。
そうなると前者の可能性は低く、この事件が複数人による犯行だったと考えられるだろう。
人気になればその分、それを妬む者が現れる。人は嫌われている数だけ、好意を抱いているなどとよく言うが、その逆もしかりなのだ。思いのほかこの事件には数多くの人物が一枚噛んでいるかもしれない。
後は三枚の記事がいつ掲載され、そしてその時のシフトが誰だったのかさえ分かればかなり真相に近づけるだろう。
雷伝は速足で家路へと急ぐのだった。
その日の晩、一通の電話があった。受話器を取り、耳に当ててみると、もしもしを言うよりも先に少し上ずった岩寺の声が聞こえてきた。
「部長、広報委員の情報はどうでしたか」
「恐らく、委員会の中に共犯者が紛れ込んでいるな。そいつがあぶり出せれば、犯人にも近づけるだろう」
「そうですか。広報委員となると、望月が詳しいですね。僕のほうから連絡をしておきます」
「済まないな」
「部長の為なら一肌でも二肌で脱ぎますし、人肌で温まりもしますよ」
「温まるなよ!」
気を取り直し、
「ところで何かあったのか、唐突に電話してくるなんて珍しい」
「ええ、バンキシャ部のホームページのことです。どうやら今日の放課後にセキュルティーシステムが作動したみたいなんですよ」
「どういうことだ?」
「何者かによってクラッキングを受けたみたいです。ホームページに搭載している対ウイルスソフトは僕と望月の自作なのですが、そこに攻撃を受けた形跡が見つかりました」
「考えられるのはミミか他の運営職員か……」
「まぁ安心はしてください、僕たちのシステムはそう簡単には破られませんよ。ですが念のため、ホームページはすぐに別を用意するつもりです」
いよいよ裏サイト陣営も本気を出してきたようだ。岩寺の作ったホームページには今回の事件の証拠となるリークメッセージが入っている。
それを乗っ取られたりでもしたら一巻の終わりだ。
「ただこれで一つだけはっきりしたことがありますね」
「向こうは我らを完膚なきまでに潰す気だということだな」
雷伝は受話器を強く握りしめた。向こうがその気ならこっちもそれ相応の対応を取る。もう手段は選ばないと心に決めるのだった。
次の日、登校すると昨日の広報委員の男がクラスの前で待っていた。
「あ、雷伝さん」
「君は確か……」
「委員長が話したいことがあるそうです」
そう言って紹介されたのはあと見覚えのあるキャップを被っている人物だった。
「その帽子!?」
「えっあっあっ、そうです。俺も同盟のメンバーなんですよ」
Rの文字が刻まれたキャップ。まさか広報委員会の委員長ともあろう男がロリコン同盟の一員だったなんて、それに帽子のことに触れられると挙動不審な態度を取ることから、自分がロリコンであることに負い目を感じているらしい。まだあの望月よりは増しか。
ただし軽蔑した目が柔和な笑みに変わることはなかった。
「ここじゃあ、ちょっと話しづらいので、場所を変えましょう」
雷伝は委員長との共に階段の下の倉庫の前に移った。
「昨日、委員から連絡があって驚きましたよ。それと同時に会長からも連絡が来るんだから」
会長とは望月のことだろう。
「本当に時間を割いてしまって申し訳ない」
「全然です。会長のこととあらば、俺はどこからでも駆けつけます」
あの男にそれほどの尊敬に値する部分があるのかは疑問である。
「……雷伝さん」
委員長がわざとらしく声を小さくした。
「これを渡します」
周りを見渡しながら、慎重に取り出したのは一枚の紙切れだった。そこには広報委員のシフト表が掲載されている。
それを誰にも気づかれないようにすっとブレザーの内ポケットに突っ込んだ。
「これを我に見せるのはヤバいんじゃ……」
「会長のよしみです。絶対に犯人を捕まえて下さいね。俺も結構、バンキシャ部の記事を楽しみにしていましたから」
「感謝する」
雷伝はついに手に入れたシフト表をポケットの上から軽く叩いた。
昼休み、雷伝は所定の位置にいた。お馴染みの屋上である。
周りの目を憚らずに大胆に胡坐をかき、サンドイッチを頬張りながら、大事そうに紙切れを取り出した。
広報委員はシフトに入っている者が鍵を管理している。その人物が鍵の責任を持ち、自分たちで保管しているのだ。そのため鍵は職員室に常在しているわけではない。つまり他の生徒がコピー室に入ることは原則、出来ないのである。
シフト表を広げ、水曜日の担当を見ると、女の名前が記載されていた。
「
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