第5話

「もう日暮れてきたね。ここまでで良いよ。今日は一日ありがとね」

 幸は鈴香を下ろす為に車を駅前に横付けした。

「いえ、こちらこそ。……鈴香さんはこの後どうするんですか?」

「今日はこの街に泊まって、明日また誰か乗せてってくれる人を探すかな。幸君は旅を続けるの? 旅が終わったらまた大学行くんだよ。約束ね」

「はい。分かってます……」

「……じゃあね、幸君。身体に気を付けて」

「鈴香さんも」

「あ、待って、最後に電話番号、交換しとこ。……何か困ったことがあったら、遠慮なくこの鈴香お姉さんを頼って良いからね」

 そう言いながら、鈴香は半ば強引に幸のスマホに自分の番号を登録した。

「今度こそ、じゃあね」

 幸は小さく手を振って鈴香の後ろ姿を見送った。鈴香がいなくなった車内は、今朝、家を出た時よりもどこか広々と感じられ、それが静かさと相まって幸に少しの寂しさを覚えさせた。


 流石の駅前、今晩泊まる安宿、ネットカフェがすぐに見つかった。

 シャワーを浴びて、軽い食事を済ませて横になる。

「明日からは何をしよう……」

 幸の頭の中で「旅が終わったらまた大学行くんだよ。約束ね」、鈴香が放ったその言葉が頭の中で渦巻いていた。鈴香を助手席に乗せた旅は楽しかった。それは事実だった。

「いや、行ける所まで行くんだ。このままダラダラ生きていてもしょうがない……もう良いんだよ」

 鈴鹿のことを考えると決意が弱まってしまいそうになる。こんなことになるならヒッチハイクなんてしなければ良かった、幸は心の中で後悔した。

 起きていてもすることがないので、電気を消して目を瞑った。昨日から寝ていないせいもあり、期待通りあっという間に意識は薄れていった。十分後にはもうすっかり夢の中だった。

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