第4話
「幸君、ラーメン好き?」
「好きですよ。どうしてですか?」
「この先に美味しそうなラーメン屋さんがあるの。行かない?」
鈴香が先程からスマホと睨めっこしていたのはその為かと、幸は勝手に納得する。
「幸君、私が先輩として奢ってあげるよ。本当は乗せてくれたお礼だけどさ」
車内に備え付けてあるデジタル時計に目をやると、十二時十五分を示しているのが見えた。既に四時間以上も車を走らせていることになる。朝からコーヒーしか飲んでいない幸、流石に何かを口にしたかった。一度、意識し始めると空腹感は留まる所を知らなかった。
「じゃ、じゃあ、御言葉に甘えて奢ってもらおうかな。ゴチになりますね」
鈴香は「任せなさい」と自慢気に胸を張った。
実は意外と常識的な人なのかもしれない、幸は鈴香という人間をイマイチ掴めずにいた。
年季の入った店構えだった。二人は店の前で数分列に並んでから、やがて奥のテーブル席に通された。昼時ということもあり、それなりに混雑している。鈴香は「美味しそうな匂いがするね」と緩い笑みを零した。
「醤油ラーメンを一つ」
「今の醤油ラーメンをチャーシュー麺の大盛にして下さい。それと塩ラーメン一つ」
鈴香はさりげなく幸の注文内容を変更してから、自分の注文を済ませた。
「幸君、細すぎだよ。疲れてる日も御飯は毎日食べなくちゃダメだからね」
そう言って鈴香は怒っているような様子を見せた。確かに実家を出てからは食を疎かにしている節があった。思い返せば、私生活を他人に注意されるのは久しぶりのことだった。
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