学校祭編

第50話 休み明け

 「達希、課題終わったか?」


 教室に入ると最初に話しかけてきたのは、蓮だった。

 目の下にある隈から昨晩に何があったのかがよくわかる。


 「蓮は、終わらなかったみたいだね」

 「やっぱりわかっちゃうよなぁ」


 蓮は、手鏡に自分の顔を写してため息をついた。

 

 「蓮、あんた酷い顔してるね」


 そこにちょうどやって来た六花が追い打ちをかけるように言った。


 「そういう六花はどうなんだよ」

 

 蓮が問い返すと、ムフフと腕を組んだ六花が


 「ごめんあそばせ、誰かと違ってもう終わってましてよ?」


 と得意気に言った。


 「……中学の頃は長期休暇の度に課題に難儀していた六花が!?」

 「人は成長する生物だからね」


 蓮が驚くのはもっともで、六花は中学時代は課題を後から提出するようなタイプだった。

 

 「達希……コイツの変わり方、ヤバいな……高校デビューとかそういうわけじゃないけど、それくらいの変わりようだわ」


 いや……課題を提出期限を守って出すのは普通だからね?と内心思ったがそれは口にせず、ただ苦笑いを浮かべた。

 周囲のクラスメイトもやっぱり同じような話をしていた。

 と、そこで蓮の目が六花と一緒に学校に来た璃奈さんに向いた。

 今日は、六花が璃奈さんと二人っきりで学校に行きたいって言ったから璃奈さんは、六花と一緒に学校へと来ていた。

 ちなみに、その理由は何も聞いてはいない。


 「お、璃奈ちゃんは終わってないよね?」


 仲間を求めるような目線を向けた蓮を璃奈さんの答えは一蹴した。


 「……最初の五日で終わらせました……」

 「嘘だろ……」


 オーバーリアクションだろうってぐらいにその場にへたり込む蓮。

 ちょうどそのタイミングで担任の山城先生が教室へと入ってきた。


 「そろそろ朝のホームルームを始めますよ」


 その声を聞いて、席を立っていたクラスメートたちが、それぞれの席へと戻った。


 「とりあえず、全員出席で何より。ちょっと長めの休みの後だと休みがちになる生徒もいますからね。それと課題終わってない生徒はいませんか?」


 生徒から漏れるため息で察したのか


 「訊くまでもなさそうですね。課題出さないくらいで命をとられるようなことはありませんが、各担当の生成にしっかり怒られてきてくださいね。それと、二週間後には何がありますか?」


 クラスメートたちは、あえて正解を口にせず全然関係ないことばかりを口々に言い出す。


 「……あえて言わないのも結構ですが、ちゃんと勉強してきてくださいね」


 そう言うと、何種類かのプリントを配って朝のホームルームは、お開きになった。


 「中間かぁ……」


 教室には、課題の話のときよりも重たい空気が漂う。


 「聞いたか達希、二週間後には学際だとさ」


 学校祭は六月だ……何を聞いてたんだろう……。


 「そうだね……玉砕にならないといいね」


 適当にそう返して一時間目の準備をすることにした。

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