第48話 二人っきりになれるのは?
「そろそろ寝ようか」
各々がキャンプ場の施設で歯磨きなんかを済ませてあとは寝るだけになった。
テントの中には、すでにテントマットが敷かれて準備は済んでいる。
でも問題が一つだけあった。
「部屋割りならぬテント割をしましょうね。お母さんは達希君なら間違いは起きないと思うからみんなも安心してね」
お母さんは、そう言って静観を決め込んだ。
自分たちで決めてってことかな?
運に任せてじゃんけんってのもいいけどやっぱり話し合いからかな?こういうのは……。
「じゃ、まずは話し合ってみない?」
璃奈ちゃんに智菜ちゃん、達希君の妹の
達希君は、お母さんと向こうで何か話し合っている。
「えっと……」
どういう風に進めてこうかな……。
最終的に運任せになるかもしれないってことを考えるとまずは、降りる人から決めた方がいいのかな?
「じゃあ、まずは……三人用のテントと四人用のテントで達希君を三人用の方に割り振ろうかなって思うんだけどそれでいい?」
キャンプに来たのは全員で六人なんだけど三人用のテントには荷物も入れるので枠はスペースは二人分になっている。
仮にも私が達希君に対してアクションを起こすにしても一緒にいる人は少ない方がいい。
見られるのは恥ずかしいから。
その場にいる全員がその質問に同意を示した。
よし、まず第一段階はクリアみたい。
「で、えっと四人用のテントでいいっていう人いる?」
ここで誰か降りてくれれば達希君倍率は下がる。
広がる沈黙……。
誰も降りないのかな……って思ってたら智菜ちゃんが手を挙げた。
「私、四人用の方でも大丈夫ですよ?」
智菜ちゃんは、そう言って意味深な笑みをこちらに向けた。
笑顔の意味は気になったけど、とりあえず一人ライバルが減った。
進行を行うことで握ったイニシアティブの効果があった。
「ありがと、他にいる?」
これ以上は誰も降りそうにないので話を進めることにした。
「他の子たちは、達希君と一緒がいいってことかな?」
ちょっといやらしいかもしれないけどそういう訊き方をしてみた。
「それは、斉川さんも兄さんと寝たいってことですよね?」
叶夢ちゃんが、ちょっと予想外の質問をしてくる。
どう答えるのが最適解かな……。
そういうわけじゃないとかって答えたらじゃあ四人用でいいですよね?とか言われそうな気がする。
でも、璃奈ちゃんの手前、そういうふうには答えずらい。
ならそのままその言葉を返そう。
「叶夢ちゃんは、その年でもお兄さんと寝たいの?」
「むむ……」
叶夢ちゃんは回答に詰まった。
肯定するような答えだったらブラコン認定は確実な質問だ。
「……私は、兄さんが間違いを起こさないか見張ってなければいけないのでっ」
ちょっと苦し紛れに聞こえる答えだ。
なぜなら――――――
「達希君に限って間違いを起こすようなことは絶対にないから、安心して四人用で寝てくれていいと思うよ?」
達希君に限ってそんなことをするわけがない、それを一番わかってるのは多分、叶夢ちゃんのはず。
「……わ、わかりましたよ。もうそれでいいです!!」
これでまた一人降りてくれた。
残すところは――――――
「……私は、降りませんよ?」
自分の意思をはっきりと示した璃奈ちゃんだ。
「だよね、そう言うと思った」
お互いどちらからともなく拳を握る。
「最初はグー、じゃんけんポン!!」
璃奈ちゃんはグー、私はパー。
「残念……」
力なく肩を落とす璃奈ちゃん。
勝ったのは私。
これで私は、やっと達希君と二人っきりになれる。
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