第47話 バーベキュー
「そうそう、それで達希君ったら何も考えずにその子を助けちゃったから後から大変な目にあっちゃってね」
バーベキューのセットを囲んでみんなで食べながら達希君や六花さんの中学時代の話を聞いていた。
「やさしいですね」
「先輩らしい話です」
「兄さん、そんなことあったんですね」
みんなが語る達希君や六花さんの姿は私の知らないものばかりだった。
あぁ私、全然知らないんだな……。
ちょっとした寂しさと共に羨ましさみたいな感情がこみあがってくる。
「わざわざ言うことじゃないよ」
達希君は、トングで金網の上のお肉をひっくり返しながら言った。
「今は、もう笑い話だけど変な噂がたっちゃってあの時の火消しは大変だったんだからね?」
蓮と私に感謝しなさい、と六花さんは胸を張った。
「うん、感謝したよ。でもちょっとこう言っちゃあれだけど面倒な子だったね」
今、私が聞いているのは達希君の過去にあった女難?の話だ。
達希君の女性関係の事情に関心を持っている私は、お肉を食べるのも忘れて聞き入っていた。
「って、璃奈ちゃん全然、お箸進んでないじゃん。育ち盛りは、ちゃんと食べなきゃダメよ?」
美優紀さんがそう言ったので自分のお皿を見ると、もうスペースがないくらいに野菜とお肉が乗っていた。
「お話を聞くのに集中しちゃってました……。私、不器用だから二つのことを同時にすることができなくて……」
お肉を口に運ぶと、もう冷めてしまっていた。
「お皿貸して?」
達希君が、向かいから手を出してきた。
お皿を言われたままに、渡すと野菜やお肉を金網の空いたスペースに並べた。
「温めなおすなんて気が利くわね」
美優紀さんは、感心したように見ていた。
「私のもあっためて!!」
六花さんが自分のお皿を、達希君に渡そうとする。
「六花のさっき盛り付けたばっかだったと思うんだけど……?」
達希君がそう言うと六花さんと何故か智菜までため息を吐いた。
「先輩には、女心を学んでもらう必要がありそうですね」
「えぇ……どういう事……」
困惑したような表情を浮かべる達希君。
でも、六花さんの気持ちは何となくわかる気がした。
六花さんは、きっと達希君のことが好き。
だとすると、達希君への恋心を抱いてしまっている私は、
恋敵が、好きな人に何かをしてもらっていたら自分も俺と同じかそれ以上のことをしてもらいたくなる。
「可及的速やかに、改善する必要がありますね」
「よくわかんないけど……とりあえず温まったみたい」
達希君は、そう言ってお肉と野菜を盛り付けなおし私に差し出した。
「あ、ありがとう……」
人に優しさを向けられるのは、やっぱりまだ慣れてなくてちょっと言葉に詰まった。
「お、照れてるね~」
それを見てたのか、六花さんがからかってくる。
気づけば、頬が熱かったけど同時に口元が嬉しさで緩みそうだった。
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