第14話 終わった後で
二人を見送った後、私は部屋の後片付けをしていた。
今日は楽しかった、それが私の今の心境。
きっとあの二人が初めての友達といえる存在になるのかもしれない。
部屋には、楽しかった時間の名残がある。
開けたお菓子の袋、飲み物の入っていたコップ。
今日は、身内以外の人を相手に一番、話した日かもしれない。
自分の、話し方は相変わらずたどたどしかったけど二人はそれを笑いもせず真剣に聞いてくれていた。
もしかして私、学校に行っても何とか人と接することができるかもしれない。
コミュニケーションをとることができるかもしれない。
そう思ったがそれは、あっという間に人と上手くコミュニケーションをとれなかった場面の記憶に塗りつぶされてゆく。
「私には、無理……」
人と普通にお話をしたい。
友達が欲しい。
そんな思いは常々、抱いてきた。
うん、高望みだってわかってる。
分不相応なんだってわかってる。
そう思うことで、一歩踏み出すことを先送りにしてきた。
「でも、2人とも楽しそうだったなぁ、とか思ってるんでしょ?」
声のした方を向くと、そこにはいつ帰ってきたのか智菜が立っていた。
「姉さんの思ってることぐらいは分かるよ。だって付き合いの長い妹だもん」
智菜は、そう言うと私のベッドに腰を下ろした。
「……智菜は、なんでもお見通しね」
うんうん、智菜は頷いた。
「姉さんは、学校行きたい。でも怖くて行けない。そうなんでしょ?」
私自身からは、恥ずかしくて口にできない思いを智菜が代弁した。
代弁してくれておかげで自身の気持ちを改めて時間する。
私は、学校に行きたい。
友達が欲しいという思いが半分、行かなければという焦燥感が半分。
「うん……」
「私が何とかしてあげたいけど、それは無理。だから鮎川先輩に頼んだ。もう一人の方は来るのが予想外だったけど」
璃奈さん……まだ少ししか話したことがないけど、私のことを親身になって応援してくれている感が言動から伝わった。
「…私が、あと一歩踏み出すだけ……なの」
わかってるじゃん、と智菜は言ってそれから多分と、付け加えた。
「もう一人の人は、鮎川先輩のことが好きだよ」
やっぱり、彼女……なのかな……。
それは、何となく嫌な気がする……。
私の表情が無意識のうちに曇ったらしく智菜は、ニヤニヤとした表情を浮かべた。
「姉さん表情に嫌だって出てるよ。早くしないと取られちゃうかもね。それにあんないい人、ほかの女子も放っておかないと思うし」
こんな私のために時間を割いてくれる鮎川君は、いい人。
智菜の言う通りで本当に他にも彼のことを狙っている人がいるかもしれない。
「なんとかしないと……」
「うんうん、その意気で頑張ろう」
私のことならなんでもお見通しの良くできた妹。
鮎川君や斉川さん、妹のその思いを無為なものにしないようにしなくちゃ。
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