第13話 脱不登校計画

 自己紹介がいよいよ私の番になった。

 こういう時に、いつも失敗してまうのが私だ。

 ふーっと息を大きく吸って吐く。

 そして前を向く。


 「わ、私の名前は……芹沢璃奈といいます。出身校は、あ、鮎川君と斉川さんと一緒です……。趣味は…料理を少しだけ……。え、えっと…どうか、私とっ、仲良くしてくださいっ……」


 俯かずに、2人に視線を合わせて言い切ることができた。

 鮎川君の名前を呼ぶときに詰まってしまったこと、最後の方が小さくなってしまったこと―――そんなことは、目をそらさずに言えたことに比べれば、どうということはない。

 上手くいってよかった……。

 安堵の息を漏らすと、璃奈さんから手が差し出された。


 「よろしくね」


 一瞬びっくりしてしまったけどその手は、握ってみれば温かくって安心感に包まれる。


 「よ、よろしくお願いします」


 これは、友達になったって言えるのかな、これが友達という存在の温かさなのかな。

 私は、幸せな気持ちでいっぱいになった。

 家族のふれあいとは何か別の温かさ。

 鮎川君も、にこにことほほ笑んでいる。


 「じゃあ次は、璃奈さんに少しでも早く学校に来てもらいたいから学校のことを話して興味を持ってもらおう!!」


 璃奈さんが、オーっと握りこぶしを軽く上に突き上げた。


 ◇◆◇◆


 西の空が茜色に色づいている。


 「お邪魔しました」

 「またねー璃奈ちゃん!!」

 「ありがとうございましたっ」


 璃奈さんは、玄関が閉まるまで手を振っていた。


 「どうなることかと思ったけど何とかなったねー」


 六花も満足そうだ。


 「そうだね。六花もついてきてくれてありがとう。助かったよ」


 彼女が仕切ったおかげでうまくいったといっても過言ではない。


 「いえいえー」


 えへへと六花は、はにかむように笑う。


 「早く来れるようになるといいね。あの人柄なら嫌う人は誰もいないしみんなともうまくやれると思うのにね」


 六花は、クラスメイトに早く璃奈の姿を見せて受け入れてもらいたいのだろう。

 そこは、僕も同様だ。


 「来れるようにサポートするのが僕らのすべきことだね。あんまり急かすのは、それはそれでよくないからね」


 励ますのと急かすの、その境目と加減は難しいところだ。

 

 「うん、わかってる」

 「でも、言いたいことはわかるよ。僕も彼女には早く学校に来てもらいたい」


 僕らは、六花の家の方に向かう道と僕の家の方へ向かう道との分岐に来た。


 「頑張ろうね。また、明日もよろしくね」


 隣を歩いていた六花はニコッと笑ってそう言うと、分岐を曲がっていく。

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