第11話 脱不登校計画 下


 達希君と帰っているのに、いつものように私は明るくは、いられなかった。

 達希君と璃奈さんの関係が気になってしまうのだ。

 これから、璃奈さんの自宅に寄ってくのだが、その目的は璃奈さんと妹の智菜ちゃんに頼まれてのことだと達希君は言っていた。

 妹さんが姉思いなら今の璃奈さんの不登校を何とかしてほしいって言うかもしれない。

 でも、璃奈さんからの頼みとすると―――もしかしたら達希くんを好きだったりするんじゃないかと変な勘繰りをしてしまうのだ。

 それに達希くんも達希くんで彼が優しいことは幼馴染として小さいころから一緒だったから知ってるけれど、ほぼ毎日のように璃奈さんの家にお邪魔するというのは拘束時間が長いから、いくら優しい人でも躊躇うと思う――――そこに特別な関係がなければ……。


 「何かあった?さっきから黙りこくってるけど」


 気づくと私は、そこそこ長い間何も言葉を発しなかったらしく達希くんに心配されていた。


 「うん、大丈夫。なんでもないの」

 「そう、ならいいけど」


 そう言うと達希君は前に向き直った。

 そういうところだよ、これが優しさじゃないなら何て言うの?

 これにきっと璃奈さんも惑わされているのだろう。

 それともやっぱり璃奈さんは―――達希くんのことが気になるのかな。

 そんな考えが何度も頭の中をループした。

 

 「ってか、どうしてこんなに考えちゃうんだろ……」

 「何を?」


 思っていたことを口に出してしまった。

 しまった……と思ったけど何を考えていたかは、口には出していないからわからないはず……。


 「あ、ごめんごめん。ちょっと思うところがあってね、でも気にしなくていいよ。そういえばさぁ、こないだね―――」


 話題を強引に変えてそのことには一旦、蓋をすることにした。

 きっとまた、すぐに開いてしまうのだろうけど。


 ◆◇◆◇


 「こんにちは〜私も同行してきちゃいました」


 ピーンポーンという間の抜けた音の後、インターホンに向かって六花が挨拶をする。

 しばらくすると内側から扉が開けられた。


 「きょ、今日からその、よろしくお願いします……」


 以前ほどではないが心なしか顔を赤く染めた璃奈さんが出てきた。

 後半の方は、だんだん声が小さくなっていって蚊の鳴くような声だった。

 リビングでは、なく二階の彼女の部屋に通された。

 てっきりリビングに通されるのかと思ったが―――。

 部屋の壁四面のうち一面は、棚になっており本屋や雑貨、小物などが収められている。

 壁紙は落ち着いたデザインのベージュ色で、カーテンには花柄があしらってありカーペットは、薄いピンク色でおとなしめではあるが女の子らしい部屋だった。

 その部屋の真ん中にはローテーブルが置かれている。

 この部屋に上がるのは二回目だが前回あがったときは先生に頼まれたことをこなす事しか頭になくてこうやって観察する余裕はなかった。

 

 「わぁ、素敵な部屋ね」


 六花は、きょろきょろと部屋を見回す。


 「私の部屋より片付いてる!?」


 そう言うと六花は、軽く後ろにのけぞった。

 六花の部屋の事情は知らないが彼女の言動から察するに、散らかっているのだろう。

 璃奈さんの部屋は、なるほど確かに収納棚や壁の棚なんかに物が収納されていて整理整頓が綺麗になされている。


 「座ってください……」


 璃奈さんは、そう言うとさっきまで自分の座ってただろう置かれていたクッションの上に座った。

 

 「立ちっぱなしじゃあれだもんね」


 そう言うと六花も座る。

 

 「そうだね」


 僕も座ることにした。

 あんまり会話をすることの無い璃奈さんが相手でも六花がいることで緊張緩和というのとは違うが気まずさというかなんというかそういったものが弱まるから六花と一緒に来てよかったと思った。

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