第7話 帰り道
「可愛いくてしっかりした妹さんだったねっ」
「うん、そうだね」
こう言ったら失礼かもしれないけど璃奈さんとは似ても似つかない感じがした。
「今度、このメンバーで遊んでみるのもいいかもね」
そうしたら、きっと璃奈さんのコミュニケーションが苦手ってことも克服できるかもしれない。
「ただ楽しむだけじゃなくて芹沢さんのコミュニケーション能力の向上にもつながるといいな」
達希くんも同じことを考えているようだった。
でも、ちょっと気に食わないかも……。
さっきから私が話しかけても会話がどこかうわの空って感じがあって……私が話しているのに、たぶん璃奈さんとことを考えている。
だから、ちょっと私の存在感を示すことにする。
「ねぇ!?」
鮎川君の前に仁王立ちになって止まる。
「ん?」
予想通りうわの空だったので、達希くんは私にぶつかった。
私は、その場にとどまり続ける。
これで、物理的な距離は縮まったはず……って、えっ!?
「うぉっと」
私にぶつかった達希くんは、転ぶと思ったのかとっさに両手を前に出してくる。
でも、そこには私がとどまり続けているから私が達希くんを受け止めることになり……
抱きしめられるような格好になった……それも道の真ん中で……。
「これってハグじゃん……」
達希くんもあっけにとられていたらしくしばらく動かない。
後ろの方には、帰宅途中の学生や会社員が歩いている。
「六花……ごめん…」
「っ……私もごめん」
お互いに謝り合うと即座に距離をとった。
……恥ずかしい…………。
こんな大胆なことするつもりじゃなかった……。
「いっ今のは、そ、その……単なる事故で私が故意にやったとかそんなことじゃないからっ」
最初の方は故意にやったけど……。
「わかってるって……僕が転びそうになったのを受け止めてくれたんだよね?」
達希くんの中ではそういう解釈になっているらしい。
それならそれでいいか……。
それから、しばらく無言が続いた。
多分、互いに気恥ずかしいんだと思う。
そして、達希くんの家の前に来た。
「それじゃ、また明日」
「達希くん、またね」
さっきの出来事が頭にプレイバックされる。
案外、胸板厚かったな……とか逞しい腕だったなとか……って私は何を考えているのっ!?
そう言えば…名前で呼んでくれたっけ。
これって……きっと咄嗟に出ただけなんだろうけど……
「一歩、前進なのかな?」
そう思いたい私がいる。
自分の顔が赤くなっているのが何となくわかるけどきっと夕焼けで周りから見たらわからないよね?
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