第6話 智菜の思いつき
玄関のインターホンが押されたらしく、ピーンポーンといった間の抜けた音が一階から聞こえてきた。
誰かな……変な人だったらやだな……宅急便?でも、車の止まる音聞こえなかったよね……。
いろんな考えが頭に浮かんだけど、とりあえずリビングにあるモニターから様子を見るために一階に降りることにした。
モニターに映し出されていたのは、鮎川君と誰だろう……女子だった。
「……彼女さんかな……いたんだ……」
なぜか、少し残念に思ったがそんな気持ちには蓋をする。
「やだぁ、私が達希くんの彼女さんだってぇ!!」
鮎川君と友達同士の距離間に見えない位置にいる女子が鮎川君の腕を引っ張っている。
そこで私は一つの過ちに気づいた……。
「…っ…聞こえてた……!?」
モニターの前で喋ってしまったから外に筒抜けだったらしい。
自分が何を言っていたのかを思い出し……顔に熱がこみ上げる。
恥ずかしい……私が鮎川君に彼女がいたことを残念に思ってしまったのが分かってしまう。
さっき閉じたはずの蓋はすぐに開いてしまった。
「っ……い、今のは忘れてください……」
立たせてるのも悪いから玄関開けなきゃ……でも、こんな赤い顔で会うのは、恥ずかしい。
どうしちゃったんだろう、私……。
「芹沢さん、こんにちは。今日もいくつか大事な書類を持ってきました」
「は、はい……」
とにかく、開けなきゃ……。
お水を飲んで気分を落ち着かせようとうしたけどなぜ、落ち着かせなきゃならないのかを考えたときにまた赤くなってしまった。
鍵を解除して扉を開ける。
「こんにちはっ!初めまして〜学級委員長の斉川六花って言いますってえぇぇっ!? 芹沢さん、顔赤いよ!? どうしたのっ!?」
「だ、大丈夫です……」
善意で心配してくれてるのかもしれないけど私の顔が赤い理由は心配されるような理由じゃないの、たぶん。
「芹沢さん、こんにちは。また、いろいろ説明しなきゃけないことがあるんだけど……」
鮎川君は申し訳なさそうにそう言った。
「……上がって…ください……」
「ありがとう、お邪魔するよ」
「えっ!?あがっていいの?」
六花は、少し驚いたような様子を見せたが僕が靴を脱いで上がっていくと後に続いた。
◆◇◆◇
「お邪魔しました」
「芹沢さん、またね〜」
二十分くらいで二人は帰っていった。
一度、意識しちゃうとダメだなぁ。
会話の間、ずっと顔を赤らめたまんまだった。
明後日の朝、鮎川君がこの書類を回収に来てくれるって話を聞いた後、なんかもうそれしか考えられなかった。
わざわざ来てもらって申し訳ないって気持ちとちょっと嬉しいって気持ちが……。
「学校行かなきゃな……」
自分を奮い立たせるために言ってみたものの……コミュニケーションが苦手な私にそれは少し難しいかなって思ってしまう。
何とかしなきゃ……。
「そうだよ?姉さんこのまま行ったら引きこもりごく潰しニート人生待ったなしだよ?」
妹が帰ってきていて私の独り言を聞いていたらしくそんなことを言いながらリビングに入ってきた。
……辛辣……でも的を射ていて返す言葉が見当たらない……。
「どうすれば姉さんが……そうだっ!!鮎川君にコミュニケーションの練習台になってもらえばいいんじゃない?」
妹の思いもよらないとっさの提案で……。
「…〜っ……ふえぇぇぇっ……」
いきなりそれは、ハードルが高いと思うの……。
「姉さん、スマホ借りるよ?」
妹が何かをし始めるがそれを気にするほどの余裕は私にはなく……
「はい、できた!!」
手渡されたスマホの画面を見るとLINEのトーク画面が出ていて、それは鮎川君との間のものだった。
「っ……いきなり…そ、それは……」
「だって姉さんこれぐらいしないと鮎川君とお近づきになれないじゃん!!自分から行動起こすことは絶対ないでしょ?」
確かにそうかもしれないって思ってしまう自分が情けないけれど……私だって学校に行こうって思ってたところなのに……これじゃぁ恥ずかしくて行けない……。
だって、意識してしまうから……。
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