第2話 転生先になるほどリアルな<RW>による大暗黒時代から新時代へ

 2010年頃。神々は死者をその最も時間を費やした世界へ転生させることにした。<転生先はやりこんだゲームの世界>はこのお話。

 これにより多くの地球人が死後に異世界へと旅立っていった。メジャーなゲームの世界にはそれこそ万単位以上の転生が行われ、もはや大量移民というべき状況になっていました。しかしそれはあくまでも死後の世界のことであり、現世に影響を及ぼすものではなかった。


 それから約30年後。ベンチャー企業<IROHANIHOHETOCHIRI>が超量子コンピュータを用いた「完全物理シミュレーションRPG<RW>」を開発した。

 超量子コンピュータによって膨大な演算能力と膨大なデータストレージを獲得したこのベンチャー企業はその技術をゲーム(MMORPG)に投入しました。一説には様々なリスクを超量子コンピュータで計算した結果、もっともベネフィット/リスクがよかったと言われているが真相は不明である。

 なにはともあれ非常に高度な物理シミュレーションを実現したRPGを作り上げた。その世界はもはや<実在>といえるものとなっていました。宇宙に関する理論にこの世界は(いわば神々の)コンピュータシミュレーションではないかというものがあるそうですが、<RW>はまさにその人間版だった。

 遂にこのゲームに人生で最も時間を費やした人はこの世界そのものへと転生することになった。それには神々の意図、悪戯あるいは誤りがあったと言われている。これも真相はわからない。


 人類が管理するゲーム<RW>の世界に死者が転生するようになったことはその数年後に人類の知るところとなった。

 すぐにではなかったのはなぜか? なにしろ転生では赤子として生まれ変わる。出生後すぐにはコミュニケーションがとれないので、転生した者たちが意識をもって行動し、現世へと通信できるようになるまでの時間が必要だったのだ。

 ちなみにこの出生後すぐにコミュニケーションがとれない問題は後にある手法である程度解消することになったが、それは本編の中ですぐに説明されるのでここでは言及しない。

 それにこのゲーム<RW>が最も時間を費やしたゲームでなければならなかったから当然、当初ここへ転生するのは非常に限られた人だけだった。

 そして死後にRWの世界へ転生できることが知られたとき。

 そのことは世界に未曾有の大混乱を引き起こした。


 混乱は多様なものがあった。

 まず第一に死者がゲーム世界に転生するのだ。MMORPGの世界である。つまりチャットで現世とコミュニケーションがとれるということになる。

 これには降霊術者やイ○コもびっくりである。

 殺人事件の被害者が犯人を告げたり、遺言状を変えようとしたり、後追い自殺が発生するなど社会全体が大混乱に陥った。

 更に転生者の戸籍はどうするのか? 死後の財産権はどうなるのか、そもそも転生後の魂は同一なのか、などなどの様々な問題を連鎖的に引き起こした。


 もう一つ大きな混乱は神々、と思われるの存在が知られたことである。

 転生者は等しく転生前に神(と思われる存在)の1柱(仮に神とする)に会っていた。

 それが神なのかという議論ももちろん発生したが、死後の世界に現れて転生させるような存在はいずれにしても神か悪魔に匹敵する存在であろうという意見が大勢を占めた。悪魔も悪神と考える方がこの分類上は適当であったから、何らかの意味で神々が存在するという認識になる。

 それは単なる超常の存在、例えば高度に技術的に進んだ宇宙人でしかないかも知れない。しかし死後の世界にまで介入できるそれは現世の人間から見れば神と等しい存在だ。

 神もしくはそれに匹敵する何らかが存在するという認識が一般的となったのだ。

 そして転生者からの情報から少なくとも外見上の性別・年齢の異なる複数の神が確認されていた。

 彼ら・彼女らが自らを神と名乗ることはなかった。そもそも誰一人として名前を聞いた者すらいなかった。転生前のことははっきりとしているのに夢のようなのだ。

 しかし明らかに転生者から得られた情報と合致し得ない宗教もあって、それらの宗教は急速に信者を失うことになった。


 2050年頃。世界は一通りの混乱にもなれて平静を取り戻し、<新時代>と呼ばれるようになっていた。


 <RW>はこのベンチャー企業を中核とした新しい国際組織<新国連>によって管理・運営されることになった。一民間企業がたった10年間でいわば世界征服を果たしたようなものである。それだけ<RW>は衝撃的だったのだ。もちろんもはや民間企業の要素は欠片も残ってはおらず、<RW>に限らない世界中の問題に対処していた。

 当然、新国連の最優先事項は<RW>の維持である。

 いかなる事があっても<RW>が失われないようにすることがその第1条文であった。

 そのため<RW>を害する危険性がある大規模破壊兵器はすべて徹底的に破棄された。もちろん新規開発は厳密に禁止された。

 なにしろ反すれば永遠と思われる死後の世界から締め出されることになるのだ。仮に反したところで<RW>から追放されるし、それ以前に多くの秘密は<RW>を通じて発覚してしまうのだ。

 なにしろほとんどの人が<RW>で一定以上の時間を費やし、死後には転生するのだ。口封じをしたところで死後に発覚してしまう。これほどの情報漏洩手段はこれまでになかった上に封じようがない。むしろ自己防衛の手段として<RW>で一定以上の時間を過ごすというのが常識となった。

 むしろ現世は<RW>での無限の人生の前段階であるとさえ思われ始めていた。このことは急速に人間の文化を変容させることになりそうだった。


 この新国連では<RW>への貢献度合いで発言権が動的に定義された。

 <RW>を開発したベンチャー企業は日本国の企業であった。このことが日本にとっては神風となり、新たに世界的に高い地位を獲得した。

 ちなみにその経緯から<RW>での公用語は日本語であるが、機械翻訳機能によってその他の言語でもコミュニケーションの障害はほとんどなくなっている。

 <RW>の超量子コンピュータによるホストサーバも日本国内にあった。これをどこかへ移設することはリスクが大きすぎた。もしものことがあれば転生者が全滅するだけでなく、転生の仕組みそのものが失われる危険性があるからだ。死後の人生が確約されるこの仕組みを維持することはそれまで人類が築き上げてきた様々なものよりも価値があるとさえ言う人がいるほどだ。

 システムのコピーや別世界の構築は原理的には可能だった。だがそれをしたときに何が起こるのか。転生後の世界が複数に分かれるのか、破綻するのか、これもリスクが高すぎた。このためサーバーは移設せず、そのまま拡張を続ける形がとられた。


 そして2051年。その事件が起こった。


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 世界設定を書きました。これだけだとつまらないので第3話も続けて公開しています。

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