第17話 院長先生の授業・2
次の日。身支度を整えて、今度は鼻血用のタオルも持っていきます。
台座の後ろの赤いタイルを踏んで………「チェンジ!」
ぱっと目の前の景色が、古風で重厚な書斎に変わります。
奥には………あれ?院長先生が居ません。
私は、取り合えず小走りで、院長先生のデスクまで行きます。やっぱりいません。
戸惑っていると、クッションルームある所とは、別の本棚がせり出してきて、スライドしました。そこから出てくる院長先生。
ん?3歳ぐらいの子供が一緒に居ます、可愛いです。
「
と、少年………幼児?に院長先生が声をかけます。
雷鳴と呼ばれた子供は、私の前まで進み出てきて、
「こんにちは、可愛いお姉さん。僕は、雷鳴=ブリッツ=シュトルム。お姉さんの名前はなんですか?」
魔界風の礼儀作法を完璧にこなしてみせました。
それに、可愛いなんて………あんまり言われたことはないです。
「私はリリジェン、ここで院長先生に勉強を教わってるの。よろしくね雷鳴君」
「そんな呼び方しなくていいよ。雷ちゃんって呼んで、皆そう呼ぶんだ」
「そうなの?じゃあ………雷ちゃん」
いけない、あまりにも可愛すぎて、頬が自動的にデレっとしてしまう。
雷ちゃんは、黒髪ショートに紫の瞳、肌は白磁のよう。もの凄く美形です。
「ねえ、リリジェンさん。リリ姉って呼んでもいい?」
と言ってにっこり。
「え………。唐突だね、でも、いいよ」
「やった!仲良くしてね!」
院長先生が、ゴホンと咳払いして、
「2人とも、すぐに打ち解けたようで何より。一応解説しておくと、これでも雷鳴は高位の悪魔だからね。子供には違いないけど、普通の子よりませてるから」
さて、と大量にある本の中から、昨日知識を自分のものにした本を取り出し、
「2人とも、これはもうものにしたよね?」
「はい、大丈夫です」
「ものにしました!」
「なら次はこれ」
黒い革の装丁の、ものすごく分厚い本が出てきました。
「前回ので、これを理解する素地はできているから、難易度高めの本行くよ。先に難しいものをマスターしてしまえば、簡単な本を読む時間が短縮されるからね」
私は正直ものすごく怖いです。逃げ出したくなるくらい。
横の雷ちゃんは半目になってますが、逆らうつもりはないみたい。
「さあ、記憶球を作るよ、2人分ね」
記憶球は創り出され、クッションルームに放り込まれました。
激痛再び………いえ、前のより数段痛い。頭が破裂してしまいそうです。
タオルを持ってきててよかった。色んなとこから血が出ます。
ちら、と雷ちゃんの方を見ます。頭痛そうにうずくまっているど、それだけです。
高位悪魔って子供でもそんなに能力高いんですね。
ああ、それよりも頭が、頭がっ。
私は前回したように、クッションを抱きしめて転がり回ります。
少しずつ少しずつ、内容が頭に入ってきます。
タイトルは人間と天使と悪魔の医学的差異、です。
その名の通りの内容でした。
人間は、大きな個体差は無く、こんな(大量の情報)仕組みになっている。
天使は、肉の体があるものと、霊体を固めて実体化している者がおり、それぞれの対処法はうんぬんかんぬん(膨大な対処法の情報)である。
悪魔は、個人で全然違うので、必ずレントゲンや、透視魔法で体の内部を見てから処置にあたる。(様々な悪魔の例、大量)できれば、同じ悪魔が処理した方が上手くいきやすい。
高能力者の場合、まず意識を取り戻させないといけないのであれやこれや、意識が戻ったら本人に治療方法を聞く。例として―――(大量の情報)
………など。
今日で、ほとんどの種族の体の構造が分かるようになっています。
吸収し終わった頃には、時計が20時示していた。窓の外はとっぷり暗い。
ここには7時に来たのに、である。
ふと雷ちゃんを捜してみると、クッションに埋まって寝ていた。
つんつん、とつついてみれば
「うー、なーに?りりねえ、おわった?」
「待っててくれたの?やっと終わったよ」
そう言うと雷ちゃんは、わたしに「抱っこ」をせがむ仕草をしてきました。
ちょっとためらいましたが、抱っこします。
嬉しそうにすっぽり腕におさまっています。
私の方は、子供を抱っこするのは初めてなので、その体温と柔らかさに夢中です。
抱っこ状態のまま、院長先生の所に行きました。
院長先生はそれを見て苦笑します。
「なあに、雷鳴。眠いの?」
「抱っこして欲しかっただけ」
と、ふわりと笑います。超絶可愛い。
「先生、雷ちゃんって、先生のお子さんなんですか?」
そう聞いたら、飲んでいた赤い物―――多分血液―――を盛大に吹き出しました。
「え、何かおかしなこと言いました?」
院長先生はパチンと指を鳴らし、飛び散った血を消しました。
「ゲホゲホ………違う違う。雷鳴のお母さんが、亡くなる前に、私に育てて欲しいと頼んできたの。それで養子にしたの」
なるほど。
「雷ちゃんは偉いねー。そんな境遇なのに勉強頑張ってるもんね」
「うんっ。姉ちゃんがお医者さんだから、僕もなるんだ」
「いい子だねー」
「リリジェン、どうせ明日も来るんだから、いちゃつくなら明日にしなさい」
私は赤くなった。苦痛が無くなったのもあって、舞い上がっていたようだ。
雷ちゃんをぼふん、と椅子の上に座らせた。
「それでは院長先生並びに雷ちゃん、また明日お会いしましょう、失礼します」
私は、回れ右してドアに向かう。途中で雷ちゃんに手を振った。
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