第3話 私の生い立ち―—―軍隊
わたしは、ぎゅうぎゅう詰めにされて―—―明らかに制限重量を超えています。
座ることも寝ることもできずに、基地研究所までの4日間を過ごします。
5人が死にました。弱っていた体に強行軍に耐えられなかったのです。
これはもしかしたら「ふるい落とし」なのなのかもしれない。
あまりに弱り切っていたら、強化手術を受けられないから。
わたしはまだマシでした。義足の上に座るような感じで過ごせたので。
体力の損耗を押さえられたのです。
そして、現地についた後、私達は荷物を取り分けるように検査場に向かわされました。健康状態に問題がなければ、後方の研究所へ。
問題があればしばらく入院か、最悪処分です。
わたしは、健康状態ギリギリOKでした。
後方にある研究所に回されます。
そこで、わたしは、人ではなくなりました―—―。
鋼の手足―――元の手足よりも繊細に動きます―—―。
全身に施された兵装は、わたしの体を圧迫します。
頭には脳の働きを操るチップ。
麻痺した感覚中、私がぼんやりした自我で”見て”いたのは。
「敵」―—―魔法王国フィーウの兵士との激しい戦闘。
そして魔法王国フィーウの無辜の民の虐殺でした。
全身で抵抗ましたが、私の脳に埋め込まれた小さなチップがそれを許しません。
心臓に埋め込まれた爆弾が作動しそうになりました。
強敵に対しては、仲間の強化人間ごと爆破することもありました。
そんな日々が続きました。
ですがある時、私は大破―――。
味方にも敵にも顧みられることもなく、荒野に置き去りにされました。
―—―ああ、やっとこの罪深い半生から解放される―—―。
そう思って死を受け入れようとした時です
眩い光が私を照らしました。
目を開けてみると、光の先は緑萌ゆる大地、白亜の神殿。
わたしが見たこともないような美しい光景でした。
ですが、その光景の先から
「患者生命反応微かです」
「急いで収容するわよ、まだ助けられる」
「院長先生の処置が必要ですかね?」
「多分大丈夫なんだけど、私たちで手に負えなかったら、速攻お呼びしましょ」
「
という声がして。
その二人の看護師(両方女性)―――は私を担架に運び込みます。
果たして、私が運び込まれた先は、中央に神殿(と言っても神像が壊れていて、何を祀っているのか分からない)を持ち、5棟に分かれている病棟でした。
銀文字で「人間棟」「天使棟」「悪魔等」「特殊棟」「備品科」と書いてあります。
ですがそれよりも瞠目すべきは、壊れた女神像(らしきもの)の前でゆったりと踊り歌う者の存在でした。
波打つ髪は、地面に届きそうな金髪。双眸は蒼穹の青。簡素な、でも輝くような白ドレスを身にまとい―—―。
そしてその歌声は、わたしの枯れ果てた精神にうるおいをもたらし、体の痛みを軽減します。彼女の方に不自由な首を向けていたら
「彼女は「歌い手」と呼ばれているわ、院長先生の「分体」よ」
と、指揮を執っていた看護師のお姉さん―—―人間棟看護師長エルシーから教えられました。
「さぁ、そんなことより手術室よ!」
結論から言いましょう。
私の体は、彼女たちでも何とかなりました。看護師長エルシーは、優秀な医者でもあるらしく、次々と私の改造のなかで自由意思を阻害するものを次々に取り払っていきました。他のものを取り払わないのは、あとで要る・要らないを本人に決めてもらうためなのだとか。
麻酔は、全身麻酔ですが、何故か意識は鮮明です
貴女は、体から毒が出るのを見ておいた方がいいからと言われました
手術は心臓に埋め込まれた(裏切り防止用の)爆弾の除去と、私の自由を奪う、脳に仕掛けられた細工の除去が主なのだとか
それは成功したそうです。
「ただ………あなた、深刻な精神の傷を負っているのね。それは院長先生に任せるしかないわ」
と言いつつ呪文を唱えて私の傷を高速で治していきます。
魔法王国フィーウの魔導士が使っているのを見たことがあります。
治癒魔法というものでしょう。
でも、エルシーさんの使っているのは回復の速度からして、私の見たことのない次元のものだとわかります。
エルシーさんは
「今、院長先生を呼び出しているからね」
と言います。
果たして、「院長先生」は、やってきました。
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