第2話 私の生い立ち―—―子捨て星

 父が亡くなりました。

 私の歳は15歳です。まだ未成年です。

 親戚もいません、行くところがないのです。

 孤児院などは科学王国ルベリアには、ありません。

 孤児や、親が要らないと判断した子供は、すべて「子捨て星」に送られるのです。

 子捨て星では、孤児たちを実験に使うことで有名です。

 どんな内容かは知られていません。ひそり、ひそりと囁かれてきた情報なのです。


 わたしは子捨て星に行くことになりました。

 あとひとつ―—―16歳になっていれば働くことを認められていたのに。

 私は、息が苦しくなるほど不安でした。

 使いつぶされて、命を失うのではないかと。

 そして、私は子捨て星行きの宇宙船に乗せられました。

 私の外は、年下ばかりでした。

 ボロボロで、あちこちに傷のある少年。

 私には分かります、あれは虐待の跡だと。

 猫のぬいぐるみを抱えた可憐な少女

 ずっと父母らしい名前を呼んですすり泣いています。

 父母が死んでしまったのでしょうか。

 あとは、赤ん坊が2人。父母に売られたのでしょう。


 子捨て星は3区画あります。

 ひとつは、父母からお金を貰っていて、比較的対応のまともなヒポポタマス。

 化学実験や洗脳に使われる区画ジラフ。

 そして年長が入る科学実験に使われるコンドル。

 私はこのコンドルに入る事になります―—―。


 入ってすぐ、手術室に連れていかれ、「新開発の義足をつけてもらう」と言われました。おかしいです、私の足は不自由ではありません。

 しかし麻酔をかけられ、目覚めた私の足の付け根から先は、金属で出来ていました。

 上手く動きません、重いです、数歩歩いただけで倒れてしまいました。

 私の経過観察を行っているシスタ―—―ここではシスターが「入居者」の世話をします―—―が、嗜虐的な笑みを浮かべながら、アナタの手術は実際は「外」の金持ちの令嬢の足の手術が必要で、サイズや血液型が丁度良かったから持ち去られただけなのよ。この足は中古品なのよ、と教えて寄越しました。

 私は泣きました。涙が枯れ果てるまで。


 子捨て星に来て、1年。

 わたしは、何とかまともに歩くか、調子の悪い時は這いずって移動していました。

 服などの替えは一切ありません。あまり酷ければ、一応シスターから投げ渡されることがあるのが例外でしょうか。

 食事は、巡回していて、見かけたら放り投げる。と言ったもので、シスターの巡回ルートは皆必死になって覚えようとします

 ちなみに食事は、ハイカロリーのバー。味のバリエーションはありません。


 ある時、わたしがよろめき歩いていると、シスターが声をかけてきました。

「バーを3本あげるから、そっちの通路でくたばっている青年を、焼却炉に入れて、火をつけるように」ということでした。

 私は了承しました。もう、感情など麻痺していたのです。


 少し考えれば、同じトラウマが重なり合うことが分かるでしょうに―—―。

 本当に愚かでしたね、私は。


 青年を見つけました、痩せさらばえて、ボロボロ。食事が取れなかったのでしょうか。わたしでも、苦労すれば引きずって歩けるほど、彼の体は軽かったです。

 焼却炉まで来ました。わたしは彼の体を焼却炉に入れました。

 そして、併設の点火機で火を付けます。

 そして彼のところまで火が来たとき、彼は「待ってくれ」「まだ死んでない」「まだ死んでないんだ」とか細い声で言いました。

 私は一気に青ざめました。そして、腕にひどいやけどを負いながら。彼を救出することにせいこうします。でも、彼は全身大やけどでした。

 ………一時間もしないうちに、彼は旅立ちました。

 このままにしていると、シスターが彼をどうするか分かりません。

 下手をすれば、生ごみ扱いです―—―。

 私は苦悩の末、彼を焼却炉に戻しました。

 パチパチボウボウ焼却炉が煙を天に吹き上げます。

 ああ、神様。存在するのなら、彼を救ってあげてください。


 それから私は、同じ施設の仲間たちに彼の事を聞いて回りました。

 彼が「ケーシー」という名前で、シスターに反抗する一派のリーダーだった事。

 宇宙船を乗っ取って、他の星に行こうとしていた事などを聞くことができました。

 それで、あんなにボロボロだったのですね。

 私には到底真似できません。

 それに私は、シスターに言われていました。

「お前は、軍隊に行くのよ。足も直してもらえるし、他にも強化をしてもらえるわ」

 軍隊だなんて、気が進みません。強化もイヤです。

 でも、きっとここよりはマシ―――。

 そう思って私は、不満を呑み込みました。

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