十月七日
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【 十月七日 】
美少女とは、読んで字のごとく、美しい少女。そう、貴方が大好きなものね。
一目見た時から分かったわ。貴方は私の、絶好の獲物だって。
アパートの一室、こんな夜中に強いノックをかまして叫ぶ女。あれじゃあ醜いなんてものじゃないわ、女としての気品を知らないのかしら。
「人の獲物に手を出すだなんて、とんだハイエナねぇ……」
あんなのを引き寄せるだなんて、まるで美味しい蜜を持った花。悪い虫を掃う私の気持ちにもなってほしいところね。まったく、仕方のない子。
まぁいいわ、それもまた狩りの楽しみよ。
その女は、私に気が付くと息を飲んで手を止める。
「修造は私の男だ! お前に用はない!」
一つ脅しただけで、女は逃げていく。
弱い女ね。いい体を持っているのに、勿体ない。けど、まぁ今回は感謝してもいいわ。
獲物は私の顔を見ると、安堵したように顔を綻ばせる。だけど、何かを勘違いしたのか、慌てて弁解を始めた。
「あ、いや、その、浮気とかそう言うのじゃなくて……ちょっと、記憶がないからあれだけど、その、とにかく違うんだ! ほんと、違うはずなのっ!」
あらあら、そんなに怯えっちゃって。まるで捨てられそうになった小犬みたいね。
別に怒ってはいないけれども。そうね、少し人間の女らしく振舞おうかしら。こういう時は、殴るんだったかしら?
「いっ」
あぁ、少し強くやり過ぎた。力加減が難しいわね。
まぁ少しは身をもって知らせるべきなのでしょうね。自分がどれほどの高級品か分かってないのだから。飲酒するたびに狙われているようじゃ、気が気じゃないわ。
「いい? 私がいるとき以外、外でお酒呑むの禁止よ」
「う、うん。ごめんなさい」
怖がりながら謝るその姿が、子どもみたい。よほどあの女が怖かったのね、まぁ下手なホラーで叫ぶような子だもの、無理はないわ。
あの女と呑んだのは事実なのでしょう。粗方、あの女にフリーの男と勘違いされて、誘われたのでしょうけど。そして調子に乗らせるような事でも言ったんでしょうね。
一緒に呑んだのは事実だから、浮気認定されても否定できないし、抵抗できる武器もない。怖い思いをしたその末に、私に捨てられるんじゃないかと思って怯えている。あぁ、なんて可愛いのかしら。
きっと、人の女はこうなった時、「自業自得だ」って捨てるのでしょうけど。捨てるわけがないじゃない。こんな絶好の獲物、今更嫌がっても逃がしてなんてあげない。
「大丈夫よ。私基準では、故意がなければ浮気じゃないわ」
「怖かったわね。しばらく私が見張ってあげるわ、だから安心しなさい」
少し優しくすれば、これでもかというくらいに安心して、良かったと縋ってくる。
またこの子は、こう言う事をする。折角人が女になり切ってあげているというのに、そうやって欲を掻き立てるようなマネをして。本当は食べられたいのかしら。
けど、ここまで時間をかけて懐かせてきたのだし、少し味見するくらいなら許されるかしら。
「けど、悪い事をしたのには変わりないから、少し、お仕置きしましょうね」
獲物は、キョトンとした顔で何をされるのかを考えてから、一つ頷いた。どうせ荷物持ちだとか何かの手伝いだとか、そんな事を考えているのでしょうけど。意外と無垢よね、短冊に美少女と【自己規制】したいとか書くような子なのに。
素直な子は大好きよ。そう率直に、欲を吐き出して求めてくる。そして懸命に、愛を捧げようとする。
その相手がどんな奴かも知らずに、愚直にも愛し続ける貴方。今だってそう。伝わらないって思っているのに。
あぁ、今すぐにでも食べたい。その身体を、その心を、私だけのモノにして。快楽に溺れた貴方は、一体どんな顔をするのかしら。
まぁ、待っててあげるわよ、貴方が満足できるその時まではね。だけど、獣に待てをした代償は重いわよ。
よしの合図の途端に、食らいつくしてあげる。
私を本気にさせた貴方が悪いのよ?
あら、いつの間にいたのね。もしかして、今の聞こえちゃった?
無回答なのねぇ。もう、こういう時は嘘でも何かしら答えるのが礼儀よ? まぁ、私からしたらどっちでもいいのだけど。あなたが知っていようがいまいが関係ないわ。だってあなた、喋れないじゃない。
どうせあなたは何も出来ない。私の思惑を知ったところで、あの人に忠告なんてできやしないのよ。そのまま、黙ってそこで見ていなさい。
そう、いい子ね。
……本当に、何も言わないのね。不思議な子だこと。話さないのか話せないのか、一体どちらなのでしょうねぇ。
あぁ、ごめんなさい。申し遅れたわね。
どうも、美少女です。
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※こちらの作品には自己規制音が大体五十個くらい含まれています。苦手な方はご注意ください。あとついでに、この物語はフィクションです。実際の人物に関係はないですが、もしかしたら「淫魔」は実在するかもしれません。by筋肉猫(サイドチェストVer)
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