一人が産まれ、一人が死んだ日。
〇
あら、どうも。口調でおわかりでしょう、織姫です。えぇ、先日彦星様といちゃついていた織姫です。さて、本日は七月十七日、修一くんの十六回目の誕生日です。時刻は午後三時ほど、夕方から少し早めの夕食と、誕生日パーティーが行われます。
おや、乙女のお買い物シーンが見られなくて残念ですか? それはそれは、「ドン( ゚д゚)マイ」です。しかし、それよりもいい物見られますよ。
「林檎、修一はこれで本当に喜ぶのか」
「当たり前じゃーん、胸が嫌いな男は滅多にいないよ」
あれです、所謂童貞を殺すセーターですね。胸の所ががっつり開いているタイプです。なんともまぁ、破廉恥な格好ですが、悪くありませんね。彦星様、こういうのお好きでしょうか。
「あらまぁ、攻めた格好してるわねぇ。ザ・淫魔って感じでいいと思うわ」
確かに、ザ・淫魔です。使える魅力は使うのが淫魔ですから。
「みちこも着てみる~? おっぱい大きいし、似合うと思うよぉ」
「もう、こんなおばさんのなんて誰も見たくないわよ。そういうのは若い子が着るからいいのよ」
そうなんですかね? しかし、美智子さんの後ろにいる男はすっごい見たがっていますよ。
『えー、着ないの? クッソ、絶対似合うのにぃ……美智子、俺は美智子なら何歳でも大丈夫だから、着てくれよ!』
『んー、木乃香さんは小さかったからなぁ。けど、ちょっと着てほしいかも』
ふっ、男はいくつになっても男ですね。
しかしまぁ、肉体的には三十あたりですから、まだまだ生殖器の方も現役でしょう。まだいっぱい作れますね。まぁ彼ら死んでいるのですが。
「ねぇお母さん……って、そこの淫魔! なんて服着てんのよ!」
あら心音さんではありませんか。中学生には、少し刺激が強いですかね。
「心音さんもどうです? きっと可愛いですよ」
「ダメだ、心音は胸がないからこういうのは向かない」
「失礼ねっ! Bはあるわよ!」
「大変言いづらいのですが……Bは貧乳の部類です」
「そうね、小さいわね」
あらあら、美智子さんにも言われてしまいましたね。ご安心ください心音さん、私もCですから。まぁ、残念ながらCは普通の部類ですが。
「そうそう、心音。貴女、プレゼント何にした?」
「……」
あら、顔赤くして黙り込んで。どうしたのです?
「プレゼント思いつかなくて、そしたら沙友里さんが、メイド服着て『お兄ちゃんおめでとう』って言ってあげれば喜ぶって言うから……」
心音さんはそう言って持っていた紙袋からコスプレ衣装を取り出しました。なるほど、確かにそれは下手な物渡すよりも喜ばれそうです。
「いい考えだと思うわ。私も若い頃、修造の誕生日で似たような事やったわぁ」
「そうと決まれば着てきなさい。ほら早く」
美智子さんったら、随分とノリノリですねぇ。
心音さんは流されるように衣装を持って部屋に出て、五分程したところで戻ってきました。
「うぅ……結構、恥ずかしい」
おや、似合いますね。初々しい恥じらいもプラスされて、これな中々受けるのではないのでしょうか。
現に優音さんにクリティカルヒットしていますし。
『どうしましょう修造さん、僕の娘凄く可愛いです』
『正直、ありですね』
こちらにも刺さっているようですね。皆さんもお好きにご想像してください。現役中学生がメイド服を着て恥じらっている姿。こういうのお好きな方なら、容易く想像できるでしょう?
おや、そんな事をやっている内に、修一くんがやってきましたね。
淫魔共と心音さんの服装を見て、驚いているのかなんなのか、固まりました。
「ヤバい、すっごい良い」
そんな小学生並みの語彙の言葉を呟くと、修一くんはトイレの方に駆けこんでいきました。
修造さんの息子ですね、えぇ。健全で何よりです。
「これは、手ごたえありだね」
「やっぱしゅーいちは胸に弱いかぁ。モモ、わかっちゃったぁ」
「ふふっ、遺伝子ねぇ」
美智子さんの言う通りですね。それにしても修造さんの遺伝子が濃い気がしますが、おそらくそれは修造さんの命を引き継いだからでしょう。
そして、少しして、修一くんはやけにすっきりした様子で戻ってきました。
「それにしても、林檎達は分かるけど、まさか心音がそういうの着るなんてなぁ」
とても嬉しそうです。どうやら妹のメイド服が見てみたかったみたいです。
「だって、プレゼントが思いつかなくて……あ、あに、あ、お兄、ちゃん」
「お兄ちゃん! お誕生日おめでとう!」
心音さんの中では羞恥が爆発しそうになっていて、もう半分ヤケクソで乗り切りました。
「ありがとう心音、お兄ちゃん凄い嬉しいぞ!」
笑顔で、修一くんは照れている妹の柔らかく頭を撫でました。
あらあら、こう言う事をするから、この男は。
「っ――調子にのるなよ修一! わ、私は別に、物が渡せないから代わりにやっただけよ!」
「まさかの名前呼びっ! けど案外悪くないな」
名前呼びも許容範囲内のようです。
そんなところに、林檎が修一くんの背後から抱きつき、まるで普通の女のように振舞いました。
「もー、修一。心音ばっかに構ってないで、僕達にも少し構ったらどうさ? 折角プレゼント用意してあげたんだからさ」
どうやら、こちらにも不覚にキュンと来たようですね。手ごたえを感じた林檎は、小さく笑ってその手を離します。
修一くんがソファーに座ると他の三人も合わせて淫魔が寄ってきます。
「そうだぞ修一」
「モモぉ、しゅーいちのためにいいモノ選んできたんだからねぇ」
「はい、精一杯選んできました」
それはもう、健全な男子高校生ですから、たわわな胸に目がいきそうになるわけで。しかしそうなると淫魔の思う壺というのは知っているので、修一くんは我慢しています。
「胸の方は後でたっぷり触らせてやるぞ。私達のこの体もプレゼントと思ってくれていい」
「じゃあふたなりじゃなくなってくれますかね?」
「「「「それは無理」」」」
おや綺麗な即答。しかも四人とも同じ回答で。淫魔としては男性器をなくすわけにはいかないのでしょうね。
「うん、分かってた!」
修一くん、いい加減無駄ですよそのやり取りは。
「まぁまぁ、今日は処女は狙わないでおいてあげるよ。はいこれ、プレゼント」
「お、サンキュー」
プレゼントは素直に嬉しいみたいですね。四人とも箱の大きさにばらつきがありますが、どれも何かフルーツが入っていそうな感じです。
「中身は?」
「淫魔お手製のリンゴだよ。高級品だから、大切に食べてね」
「私の実家で採れた新鮮なブドウだ。中々の高級品だぞ」
「私の故郷の名産、メロンです」
「モモ一押し、淫魔の桃だよぉ~」
本当にフルーツでしたね。しかも、それぞれの名前の。
修一くんが箱を開けると、それぞれ一個ずつしか入っていませんが、全て高級感が漂っています。艶やかで、あ、こちらの艶やかは「つややか」の方の読みです。
「美味しそうだけど、淫魔の世界のフルーツって、人体的に大丈夫なん?」
「淫魔が育てたフルーツは自然な甘さでとってもおいしいのですよ。人体にどんな影響が出るかは未知数ですが、おそらく大丈夫です」
メロン、その言い方だと少し怖がらせますよ。人というのは未知数を怖がりますから。
「なんか少し心配になる言い方だな。まぁ、貰ったもんは食べるけど。ありがとな」
そうですね、貰ったものは食べないといけませんね。
見た目は普通の人間が食べるものですし、美味しそうです。害はないでしょう。
「あらおいしそうなフルーツねぇ。けど、私も買ってきちゃったわ」
「キウイフルーツ」
こちらも美味しそうなキウイですね。しかし、いつものやつではなさそうです。
「母さんそれホント好きだよな。まぁ俺も好きだけど」
「今日のはお高いやつなのよ? ケーキにトッピングしても合うと思うわ」
確かに、甘いケーキにフルーツは合うでしょうね。フルーツケーキというのもがあるくらいですから。
「そうだ、修一。お母さんからの誕生日プレゼント」
「お、ありがとう」
おや、これは、美少女ゲーですね。最近発売されたやつです、修一くんが欲しそうにしてたのを知っていたのでしょう。
明確なエロはなさそうですが、この感じだと際どい表現はありそうですね。十五歳以上のヤツですし。
「欲しかったヤツじゃん! ありがとう母さん」
修一くんは、純粋に欲しい物が手に入って嬉しそうです。
そうですね、是非大画面のテレビでプレイして差し上げてください。あそこの男共も見たがっているので。それはもう、興味津々ですよ。
「ふーん、しゅーいちはそう言う子が好きなの?」
「どちらかと言うと、こっちだな」
「可愛い系年下巨乳女子ですか……」
「僕が一番近いね!」
おや、随分晴れやかに自信ありげな。四人の中ではそうかもしれませんが。しかし林檎はそれに色々追加されていますから、どうでしょうね。
「修一、私のようなタイプは嫌いか?」
可愛い系ではない葡萄が尋ねました。そりゃ勿論、獲物の好みの美少女でない事は、淫魔からしたら致命的ですから。
「嫌いじゃないけど、やっぱ可愛い方が俺的には……」
「ははっ、残念だったね葡萄! 君みたいなタイプは好き嫌いが分れるのさ! 僕を見て見なよ、万人受けというのは僕みたいな娘の事を言うんだよ!」
「美少女に置いて万人受けなどありゃしないわ! 戯言を吐くな!」
この淫魔は、また喧嘩して。美智子さん、お願いしますよ。
「こーら、喧嘩しないの。あまりすると、怒るわよ」
おや、まるで私の言葉が聞こえていたかのような対応の早さ。林檎も葡萄も静止しましたし、流石母親ですね。
しかし美智子さん、あまりそれはやらない方がいいと思いますよ。後ろの男がすっごい怖がっていますので。人の男が怖さで恐縮して震えている姿は私としてもとても面白いですが、お気の毒ですので。
怒っているのにニコニコしている人が、修造さんにとっての一番の怖さの対象なのでしょう。そう、まさに美智子さんです。
最も、二十歳の時のあのお仕置きが一番こたえているのでしょうけど。
さて、それはともかく、修一くんの誕生日は例年通り、いや淫魔も加わっているので完璧に例年通りではありませんが、いつもと変わらず賑やかに行われました。
とても、楽しそうで。お祝いムードの夕食は、私から見ても幸せな物であると感じます。
「ふふっ、今年は淫魔ちゃんもいるから、いつもよりも賑やかでいいわね」
美智子さんも楽しそうで、微笑みながら息子の為に用意したご馳走を自分も食べます。
「そろそろ、ケーキの時間かしらねぇ。今だして来るわ」
あら、ホールケーキが二個。淫魔は結構食べますからね、どんなに食べた後でも一人でホールの四等分の一くらいは余裕で平らげますよ。分かってますね。
美智子さんは一つ目のホールを五等分して、二個目のホールを四等分してお皿に乗せました。
「さてと、じゃあ食べてなさい。お母さんも直ぐに戻るわ」
「美智子、どこに行くのだ?」
「おすそ分けね。あの人達も食べたがるだろうから」
そう言って、美智子さんは二つのお皿と半分に割ったキウイをお盆に乗せて、部屋から出ていきました。
そうですね、確かに食べたがっていますね。行きましょうか、覗くのは野暮かもしれませんが、私はあなたにこの物語を見せる必要がありますので。
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