最近のゲームは凄いと感じる身体年齢二十うん歳、実年齢四十うん歳。

 林檎が言えに帰るのを見ると、大智君の家に行くためにもう少し歩く。

「それで、大智。どこが出来ないんだ」

「ボス戦でさ躓いててさ、ホント、コンピューター何の役にも立たないんだぜ!」

「あー、あそこのボスは強いからな。分かった、なんとか倒そうな」

「あぁ!」

 凄い嬉しそう。やっぱりこの子、修一の事好きだよな。あの淫気がどうとかが関係あるんかな。いや、あれは淫魔のそういうので大智くんのは単純な好意か。出会ってからはずっと一緒にいるかなら、この二人。

 そんな事はともかく、田中家に入ると大智くんが短く「げっ」と声を上げた。

「姉ちゃん、帰ってきてるのかよ」

 これは沙友里さんの靴だな。この感じだと、いつもこの時間はいないのかな。

「ん、沙友里さんいるのか? まぁ、俺は構わないぞ、お前の部屋でゲームするだけだし」

「そっか、まぁそうだな」

「うん、おじゃましまーす」

 修一がそう言うと、二階の方からどたどたと会談を駆け降りる音が聞こえてくる。沙友里さんだろうな。

「修一くんいらっしゃい!」

 ほらやっぱり。

「沙友里さん、おじゃまします」

「大智、そんなに睨まないでよ。弟の友達に挨拶くらいしたっていいでしょー? ゆっくりして行ってね、修一くん」

「はい、ありがとうございます」

 もう戻っていったな。本当に挨拶しに来ただけだったんかな。

「大智、お姉さんと仲悪かったっけ?」

「普通じゃね。まぁ、今はちょっとした取り合いがあって」

「? そうなんだ」

 たぶん分かってはいないな。けど、そこまでは気にならないようだ。

 大智くんの部屋は最 近来たばかりだからな、変わっていたりはしない。強いて言うなら少し綺麗になったかな。掃除でもしたのかな。

「大智、部屋の掃除したのか?」

「あ、うん。別に汚かったわけじゃないけど、修一くるからさ」

「んな彼女が来るみたいな。気にしないでよかったのに」

「あはは、まぁ一応な」

「まさか……エロ本でもあんのか!」

「ねぇよ! 今時そう言う系はパソコンの中だよ!」

「それは、分かる」

 修一もニコニコでエロゲー実況観てるもんな。あとたまに同人誌電子版で買ってる。俺の好みだったから、寝ている間に読ませてもらったぞ。あれはよかった。

「待っててなー、準備するから」

「おん、待ってる」

 そろそろやるみたいだな。最近のゲームって凄いから見てて楽しんだんよな、お前等も見るか? ほら、やべーよなあのグラフィック。俺もやりたかったわぁ。

 おぉ! 見たか今の、これラスボスじゃないってマジか。ほぼラスボスのデザインじゃん。

「あぁこいつかぁ」

「そうそう、前代ラスボス。こいつがさ、中々倒せなくて」

 本当にラスボスだった。へー、この面は最終の一個前か。なるほどな。

「よし、じゃあやるぞ。この前松村にも協力したからな、行ける」

「頼もしー」

 お、始まったな。

 最近のゲームはコマンドやらが難しいよな、実際やったら俺もすぐ覚えられるんだろうけどさ。見ているだけだと全く分からないわ。

「大智! 足破壊したから、コア狙え」

「おう!」

 あー、なるほどな。特定の場所に一定数ダメージを入れたら、敵が弱体化するわけか。そんでもって弱点が露わになるわけだ。良く出来てるな。

「おしっ半分!」

「ここからだぞ!」

 ボスは半分の体力を削ると倒れたが、二三回ほどその身体が脈打つと、破損されていた脚が復活し、咆哮を上げながら起き上がる。これは、最後の足掻きってとこだな。攻撃力もスピードも大幅にアップして、やりづらくなるみたいだ。

「ここまでは俺一人でも行けたんだけど、こっから先がむずくてな」

「だろうな、伊達にぼっちに厳しいゲームって言われてないぞ」

 おぉ、やば、動きを目で追うのでも結構疲れるな。俺も歳かなぁ……一応体的には二十八なんだけど。

え、スピードアップって出なかったか今。これ以上? わ、わぁ……やっべえこれ。あ、これパッケージだ。

 あぁ、なるほどな。ほら見てみろよ「従来に比べ更にパワーアップした最高難易度、マックスビートモード追加!」だって。修一と大智くんがやってるのこれだな。それにしてこのイラストかっけぇな。

 あ、やべ。修一いるのに持ち上げちゃった。

 ゲームに夢中で気付いてないな。よかった、怖がらせるわけにはいかないからな。

 そうこう言ってるうちに残りライフがもう少しだ。行ける! あとちょっとだ! お、おー! すっげぇ! 倒したぞ!

「おっしゃー! やったぞ修一」

「ふー、やっぱデモール戦は疲れるなぁ……。大智、ラスボスは一人で行けるか?」

「出来るわけねぇな。デモールの兄貴だろ?」

 え、そうなの? よくある設定か。身内が実は敵なのは定番だよな。

「六時か。夕飯できたら連絡来るだろうし、軽くやっていくか」

「おう!」

 夕飯は大体七時だから、軽く一時間は出来るな。けどこれ、夢中になって気付かないパターンな気がする。

『我の力を与え、更に強靭な力を手に入れたデモールでさえも壊したか! あぁ何と言う事だ、お前等は我の想像以上。勇者、よくも我の操り人形を壊してくれたな、その実力は褒めてやろう!』

 このパターンの魔王か。ザ魔王って感じだな。

『操り人形……デルモート! 仮にも実の弟になんという言い草だ!』

 この勇者もザ勇者って感じなんだな。ストーリーが気になるところだ、今度小説版みてみよ。どうやらこのゲームは小説版にそって作られているみたいだぞ。

『綺麗事か? 反吐が出来る。我の弟はとっくの昔にお前に殺された。あやつはデモールの肉体を持った、意思のない人形だよ』

『御託はここまでだ。勇者、お前のいう平和を取り戻したいのであれば、我を殺してみろ』

『言われなくとも、そのつもりだっ!』

 お、戦闘開始だな。

「大智! 今度は弱点はないから、とにかく斬れ!」

「任せろ!」

 こいつには他のボスと違って弱点がなくて、ただひたすら削って行かないといけないのか。これ、かなりの持久戦になりそうだな。時間までに終わるか?

 すっごいな、俺ちょっと酔ってきた。3Dグラフィックは凄いが、酔うのが困る。

 大智くん、ちょっとベッド借りるぞ。まぁ、この許可意味ないけど。横になりながら見てる事にするよ、さながら休日の父親のようにな。

 というか、あんま意識してなかったけど、修一ったらいつのまにこんなにゲーム上手くなってたんだな。マ〇オで一面の最初でやられて泣いてたのが嘘みたいだ。美智子に「ママー!」って泣きついてさ。

 あー、羨ましい。俺もパパって言われたかった。

 あと、俺も美智子に抱きつきたい。あの胸すっげぇ触り心地よくて、ムニムニと言ったらいいかモチモチと言ったらいいか、よかったなぁ。お、なんだ、お前も触りたいか? はは、残念だが旦那のこれは特権だ!

 普通に、息子とゲームするってのも楽しそうだよな。修一はどうかな、そういうの。流石に高校生にもなって親とゲームはしないか。小学生までだな、親と一緒に遊ぶってのは。

 そう考えると、俺結構な数の未練あるな。普通に死んでたとしても多分成仏できねぇや。

「あ、やばい、修一! ライフなくなりそう!」

「今回復投げる!」

 やっぱ何度見てもあの回復薬、危ない薬にしか見えないんだよな。そう思わね? 緑の液体だぞ?

 んぁ、電話来た。美智子からだ。

 おーい、修一、美智子から電話来てるぞー?

 気が付いてねぇ、というかこんなに集中して、声かけたら殺されそう。じゃあ代わりに俺が、って無理だな。

 あれ、沙友里さん?

 あぁ、今な沙友里さんがそーっと部屋に入ってきて、スマホを持って廊下に出たんだ。

 電話出てくれたのかな。チラッと覗いてみよう。

「もしもし」

「はい、沙友里です。すみません、今修一くん夢中になってて、気付いてなかったみたいで。もう少しだけ手離せなさそうです」

「はい」

「はい。わかりました、多分終わったら急いで帰ると思いますので」

「はい、では失礼します」

 よかったな修一、沙友里が説明してくれた。少しだけ怒られるリスクが減ったな。

 ん、沙友里さん? 何してんだ。まさかスマホの中見ようとしてる?

「……あ、ラッキー。正解だ」

 パスワード自分の誕生日って、修一も修一だなこりゃ。

 えっと、まぁスマホの中身は普通だな。美少女が沢山出てくるソシャゲと、LINEとTwitterと、適当なアプリだ。

 沙友里さんは、迷わずLINEを開いた。何をすると思ったら、自分のスマホを出してLINEを登録したようだ。

 っと、次はTwitterか。

「んー。主アカは、これかな」

 ホーム画面をスマホで撮影して、それから修一のスマホは元あった場所に戻す。その後に、取った写真に映ったIDで検索かけて、固定ツイをブックマークにいれた。

「よし、ゲットだぜ」

 どっかで聞いたことあるセリフを言うと、満足げに部屋に戻って行った。

 普通に訊けばいいのに。

 あれか。大智くんがいるから訊いたら睨まれるのか。

「よっしゃー!」

「おっし! 行けたな大智!」

「おう! サンキューな、修一!」

 向こうも終わったみたいだな。まぁこのくらいのタイムアウトなら美智子も怒らないだろ。

 あとは討伐後のストーリーを見て終わりだ。七時は、十分くらいオーバーした。

「って、もうこんな時間! 大智、俺もう帰るな」

「あぁ、じゃあまた明日」

「またな」

 おぉ、すっごい。直ぐに出ていった。

「おじゃましましたー」

 家が近くてよかったよな、急いで戻らないといけない時に直ぐに帰れる。

「ただいま」

 お、美智子。早速お出迎えだな。

「あらお帰り。遅かったわね」

「ごめん、つい夢中になって」

「まぁいいわ。手洗ってご飯食べなさい、林檎ちゃん達待ってるんだから」

「へいへーい」

「へいは一回よ」

 んー、ツッコむところそこじゃないな。

「いや、ツッコむところそこじゃないだろ」

「ふっ、そうね。ふふっ」

 え、今何でツボったの? もしかして修一のツッコミそんなに面白かった? よくわからないツボだな。

「え、今のどこがツボったの?」

「なんでもないわ、ほら、早くしなさい」

「うん」

 はぐらかしたな、ありゃ。まぁいいか。

 今日の夕飯なんだろうな。今日はそんなにお腹空いてないけど、物によっては皆寝てから少し食べよう。

 リビングには淫魔四人衆がご飯を食べ始めていた。

 違和感しかないけどな、美少女が四人自宅で当たり前のように飯食ってんだぜ? 考えてもみろよ。

 ……ありだな。

 けど、心音がいないな。もう食べっちゃったのかな。

「あ、修一。お帰り」

「修一、お前があまりにも遅いものだから先に食べはじめたぞ」

 野菜炒めだな。この匂いは、焼肉のたれのやつだ! なぁ林檎、少し残してくんね? 俺も食べたい。

 オッケー? やったぁ。

「別にそれは大丈夫だけど。心音は?」

「ここねなら早く食べて部屋にもどってったよぉ~」

「そっか」

 まぁ心音がいないところで、なにか弊害があるわけじゃない。

「美智子さん、おかわりお願いします」

「はーい。皆たくさん食べるわねぇ、修一も見習って三回はおかわりしなさいよ」

 三回のおかわり出来るのは成長期男子くらいだろうなぁ。

 てか、淫魔って結構食うんだな。炊飯器の中もう残り少ないぞ。メロンがおかわりしたら、あと修一のぶんギリってところだな。

「俺そんな食べられないよ」

「あらそう? 食べないと大きくならないわよ」

 中学生くらいの息子に言うセリフだなそれは。修一はもう十分だろ、男なら百七十くらいあれば不便はない。

「もう充分大きいですー」

「平均じゃない」

「平均あればいいの」

「ふふっ、それもそうね」

 美智子は女にしては身長ある方だもんな。流石に修一には越されているけど。

「そうだ修一、キウイあるけど食べる?」

「あー、明日の朝でいいや」

「分かったわ。じゃあお母さんが一つ食べてっと」

 美智子は冷蔵庫からキウイを取って、半分に切った。美智子はもうご飯は食べたのだろうよ。

 昔からキウイ好きだよな。俺も割と好きだけど、流石にキウイは個数が減るとバレるからなぁ。今度自分で買ってこようかな、けど俺金持ってないや。逆に金持ってる幽霊の方が珍しいし。

 ま、いっか。食わなくても生きられるし。

「知ってるかしら? キウイは果物の女王様の一人なのよ」

 おっと、美智子の突然豆知識だ。

 確か、果物の王様がドリアンだよな。そういえば、果物の女王っていくつかいなかったっけ? ドリアンの奴、とんだ乱交野郎なんだなぁ。あれだ、一夫多妻ってやつだ、ちょっと羨ましい。

 キウイが女王なのは、栄養価が高いからだっけか。

「あー、聞いたことある。栄養価が高いからだろ」

 やっぱそれか。あと普通に、美味しいしな。

「キウイかぁ、そういえば前その名前の淫魔いたよね?」

「いましたいました。お顔を見たことはありませんが、美しい方だったと聞いております」

「淫魔が美しくなくてどうする。しかし、中々の手練れだったと聞いた」

「すごぉいなぁ。モモも憧れちゃう」

 おぉ、あの自分大好きモモちゃんが憧れるのか、キウイっていう淫魔。凄いんだろうなぁ、やっぱ巨乳かな?

 けど、林檎もメロンも葡萄も過去形で話してるよな。てことは、もういないのか。

「ふーん、淫魔にもそういうのもあるんだな」

「確かにキウイは女王だったねぇ」

 過去形だよな? 「だった」って。

「さっきから過去形が気になるわね。もういないのかしら?」

 やっぱ気になるよな! ナイス美智子。

「はい、二十年ほど前に淫魔の世界を去ったと言われています」

「あぁ、一説によれば男を喰うのに飽きたというな。淫魔は老けぬが、死のうと思えば死ねる」

 へー、そりゃいっぱい食ってりゃ飽きるだろ。どのくらいのスパンで食べてたかにもよるけど。

 メロンも葡萄も話に聞いた事に過ぎないらしいし、実物は見たことないんだろう。

「そうなのねぇ。けど多分、四十年後くらいには戻ってくると思うわよ」

「そーなの?」

「女って言うのはね、思わせぶりな者なのよ」

 なんか、謎の説得力がある。美智子ってそう言うところあるよな。

「まぁ、珍しい話でもない。一人の男に執心して、魂の全てを狩る為に人間に成りすます淫魔もいる訳だしな」

「うんうん」

 ふーん、なんかよくわかんないな。

「ごちそうさま」

「あらもういいの?」

「そこまでお腹空いてないからいいや」

 じゃあ俺が後で食べよ。

 修一はこれから風呂に行くのかな。んー、じゃあ俺は部屋で筋肉猫ちゃん描いてよ。

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