父と母、そして兄妹。
おや、どうも。昨夜ぶりですね、織姫です。現在時刻は午前十一時半、まぁ昼ですね。先程まで修一くんが心音さんに勉強を教えていたのか、物凄く疲れた様子でお昼ご飯のインスタントラーメンをすすっています。大変ですね長男ってもんは。
話変わりますが、あなた方、日にちは分かっておいでで? 分かってないですよね、絶対。この優しい織姫さまが教えて差し上げましょう、七月十日です。そうです、修一くんの誕生日の一週間前で、その日は同時に、修造さんの命日です。
『優音さん、テストとかどうしてたんです?』
『そりゃもう、一夜漬けに決まってるじゃないですか』
『それ、記憶に残りませんよ』
『いいんですよ、その場をしのげれば。赤点だけは取ったことないんですよ。数学以外は』
「心音、お前そんなんでテスト大丈夫なのかよ?」
「そりゃ、一夜漬けに決まってるわ」
「一夜漬けは記憶に残らないんだって、受験の時困るぞー」
「その場をしのげればいいの! 私だって、所謂『赤点』ってのはとったことないのよ。数学以外は」
ふっ、聞きました今のほぼ同じ会話。コピーアンドペーストかよって、マジウケる。
おっと、失礼しました。
「ねぇ美智子、後で修造の事教えてー」
おや、いきなりですね、林檎。
修造さんでしたら後ろにいるでしょうに、本人に訊かないって事は、良からぬ事考えていますね、この子。
「あら、何に使うのかしら?」
「修一の攻略ヒントは絶対に修造と同じだからね」
「確かに。それなら構わないわよ」
修造さんも修一くんも、俺は構うって言いたげです。しかし、私も聞きたいので止めないでおきましょう。あなたも興味がおありで? いや、分かりませんけど。どうせなら聞いていきなさいな。
「修造は根っからの女好き、いや、美少女好きだったわ」
「うん知ってる」
えぇ、知ってます。そうでなければ短冊に美少女と【自己規制】したいだなんて低俗な願いは書かないでしょう。
「絶対修一もその遺伝子よ」
「あぁ、どう見てもそうだな」
ですね。でなければ美少女が空から降ってきますようになんて、ラなんとかに感化された小学生のような願いは書かないでしょう。
『なぁ美智子、俺今すっごい嫌な予感してるんだけど、どのあたり話すつもりなの?』
不安がっていますね。美智子さん、ぜひとも気にせず、面白い事教えてください。
「学校一の美少女とも言われていた私と付き合っても尚、他の女にふらふらとしててねぇ。私がいるって言うのに、街で可愛い子とすれ違うと『今の子可愛かったな!』って。困ったものよ」
『いやだって、可愛かったんだもん』
「まぁそれでも『好き』は私以外には言わなかったから、その辺りの見境はあったのでしょうけど。酒が入れば話は別よ。あの人ったら知らない女の誘いにのって呑んだらしくってね、変に付け上がらせて」
あ、今修造さんの表情が強張りましたね。これは面白い話が聞けそうです。
「そしてその女に付きまとわれてたのよ、あの人ったらねぇ」
「修造の家に行ったら、驚いたわよ。本当に女がいるのよ」
「それで、どうしたんだ?」
「追っ払ったに決まってるじゃない。人の男に手出すどころか、夜中に人さまの部屋の前で叫ぶ非常識な女を許せますか」
「そ、それで、修造さんとはどうしたのですか? それって、人間で言えば浮気に値するのですよね」
「安心なさい、私の価値観では故意じゃなければ浮気認定じゃないわ」
んー、ここまでは大して面白くないですね。ただのよくあるお酒の失敗話ですよね。しかし、修造さんの反応からして、ここから先でしょうね。
「まぁここまではよくあるカップルの思い出話よ」
「いい? 淫魔ちゃん。ふらふらしている男はね、アブノーマルプレイを覚えさせればいいのよ」
「あ、アブノーマルプレイ?」
あまり興味を示してなかった修一くんが驚いちゃいました。
「え、お母さん……?」
心音さんも、美智子さんの突然の発言に啞然としています。
「私、どうしてもそう言うのやってみたかったのよ~。本当に楽しかったわぁ」
「それで、ナニをしたんだ?」
「それはご想像にお任せします」
気になる言い方しますね、美智子さん。私も気になります、ナニされたんですかねあの男。教えたくない事であることは確定ですし、そこまで行くなら言ってほしいです。
しかしまぁ、父親のそんな話はあまり聞きたくないのでしょう。修一くんが嫌な予感がすると言わんばかりに席を外そうとした時、モモがあっと声を上げました。
「あ、わかったぁ~。しゅーぞーの処女食べたでしょー?」
「あら、正解」
正解なのですね。
あぁ、なるほど。それでこの反応ですか。納得です。
「俺、それは知りたくなかった」
『俺だって、それだけは知られたくなかった……』
『ま、まぁ、ドンマイです!』
あははっ、本当に面白い方ですね、この人達。
確かにこれは息子に知られたくなかったでしょうね、ふふっ、なんとも哀れで、面白い。
「そんな事話して、父さん怒らないの?」
「怒りはしないでしょうね。ただ絶対それだけは知られたくなかったって嘆くはずよ」
凄い、正解です。もしかして、美智子さん見えています? いや、そんなわけはないはずです。神は彼を認知してもらえない事を条件にここにいさせているのですから。まぁ、愛し合った故の伝心でしょう。
心労が見える修造さんとは違って、淫魔四人衆は美智子さんの話に満足げです。
「いい話を聞けた。道理であんな淫気持っているくせに淫魔に喰われてないわけだ」
「そうですね。勝ち目のない戦いに挑むくらいなら、他の獲物を探した方が早いですしね」
「けど、何となくわかったよ。とにかく惚れらせればいいわけだ」
「モモたち、存在自体がアブノーマルプレイだからねぇ~」
とにかく惚れさせる、ですか。まぁ、見た目だけでしたら一発でしょうね、淫魔は美貌だけは確かですから。まぁ、この私よりかは劣りますが。
心なしかあなた、何か物言いたげですねぇ。御覧なさいこの私を、とっても美しいでしょう。覚えておきなさい、心優しき美少女とはまさにこの私、織姫様。才色兼備は私の為にある言葉なのですよ、えぇ。
「修一」
「何、母さん?」
「私は貴方が受け手でも構わないから、好きな子選びなさいね。お母さんとしては、この淫魔ちゃん達でもいいと思うわ」
おや、淫魔に息子を差し出しても良いとは、中々ユーモアのあるお母さんですこと。まぁ、彼氏の処女をお仕置きとして奪う方でしたら可笑しくはないでしょう。
「少なからず、俺が受け手に回らないといけないような相手とは付き合う気ないんですが」
「じゃあ、突きあいなさい」
「絶対違う方のつきあいでしょ、今の」
「さぁ、どうでしょうか」
淫魔とお突きあいですか、それは難しい話ですね。淫魔が自らの女性器を使うことはまずありませんし。
ご存知です? 淫魔というのは半永久生物ですので、繁殖の為の性行為を起こすのは稀なのですよ。しかも、気に入った男とっ捕まえて、ほとを作って子を産ませるのです。面白い生態ですよね。
どうせあなたはあぁ言うと性行したいのでしょう? しかし諦めた方が身の為です。たまにいるんですよね、淫魔を普通の美少女と勘違いしてナンパして、逆に処女を取られるバカな男が。あった事と言えば、美少女をレイプしようとして淫魔を襲った男が逆にレイプされた事がありましたね。案外その辺にうろついていますから、己のけつを守りたいのなら、美少女は要注意です。まぁそう言うのが好きな方は別ですけど。
ちなみに私も彦星様以外の殿方はお断りしておりますので。この私の可愛さと美しさに惚れるのも無理はありませんが、諦めてください。
「お母さん、案外図太いと言うか、なんか、凄いね」
「あら心音、このくらいじゃなきゃ女好きの彼女としてやっていけないのよ」
「貴女も頑張りなさい、勝機がないわけじゃないんだから」
「なっ……」
おやおや、可愛らしいこと。そんな顔を赤くして、初心ですねぇ。
「おっ、心音ぇ好きな男いたの~? お兄ちゃんに教えて~」
「誰が教えるか変態兄貴!」
これで気付かない修一くんも修一くんだと思いますけどね、私は。
「というか、お父さんってそんな感じだったんだ」
ここで随分露骨な話題返還です。分かりやすくて結構。しかし、美智子さんは不思議そうな顔をしてから、心音さんの考えていた事とは違う方向に投球をしました。
「あぁいや、心音のお父さんはもっとおっとりしてたわよ。まぁ確かに、むっつりスケベではあったけど」
「へー、そうなんだ……え?」
もしかしてこれ、どちらも知らなかったパターンですか。
「あれ、言ってなかったっけ?」
美智子さんが言ったつもりでいたパターンですね。まぁ、よくある事でしょう。
「言われてない」
「あー、ごめんなさい。言ったの夢の中だったわね」
「じゃあ改めて言うわね。修一、心音、あなた達は血のつながりのない兄妹です」
まぁ、あなた方は粗方お察しでしょう。しかし、当の本人は察する材料がなかったわけですから、その事実はそりゃもう衝撃的です。兄妹でも見た目があまり似てないのは、珍しい話ではありませんから。
「修造は修一が生まれた日に交通事故で死んだわ。そして一年後に、同じく相手を亡くして子供の育て手に困っていた職場の先輩と利害の一致って事で一緒に子育てする事になったの。その人が、心音のお父さんの優音さん。私は専業主婦になりたかったから、互いに丁度よかったのよ」
「ただ、その前に優音さんも死んじゃったの」
これだけ聞けば、どれだけ運が悪かったんだと思いますよね。
実際のところ、そうではないのですよね。どちらも我が子の命の為の犠牲となったのです。その時その時で、世の中に生きていていい人数は決まっていますから。
そうですね、今ここで説明して差し上げますよ、お二人の事を。
勘の良い方は既にお察しでしょう、修一くんは本来産まれない命、死産となるはずの個体だったのですよ。しかし、子の命は強く願われていました。
しかし、決まりは決まりです。どんなに願おうと、産まれない運命だったのです。ですけど、少し事情が変わりましてね。いつも「美少女と【自己規制】をしたい」とかいう私利私欲くらいしか願わなかった彼が、無事に我が子が生誕する事を切に願いました。
それを私が何とはなしに伝えると、神は彼に選択を与える事を指示なさいました。自分の命を犠牲にするのであれば、子は無事に産まれる。しかし、自身が続けて生きることを望むのであれば子は予定通り死産となる。彼がどちらの選択を取ったかは、見てお分かりでしょう。
心音さんも似たような感じです。違うのは、彼女は母体の命を犠牲に産まれる事はできる運命でした。しかし、産まれてすぐに病に侵され死ぬ運命でもありました。
ここからはお察しの通りです。その親は、己の命を犠牲にしてまで子に生きて欲しかった。今後一切関与が許されずとも、子の生誕を望んだのです。
私には理解できません。我が身が第一でしょうに。しかし、私が理解できない事など山ほどあります。それでこそ、短冊に「美少女と【自己規制】したい」だなんて書いたり、「あんぱん食べたい」と書く訳も分かりませんよ、私には。
「そ、そうだったんだ」
「まぁ、血は繋がってなくとも兄妹であることには変わりないから、いつも通りにしていなさいね」
「ちなみに、法律的に血の繋がりのない場合だったら兄妹でも結婚が可能よ」
これは、大層な爆弾ぶっこみましたね。修一くんには突然の豆知識紹介としか取られてないようですけど。
「あら、もうこんな時間。お母さん買い物行ってくるから」
そして爆弾ぶっこんだまま我先にと。やり手ですね。
「うん、わかった。行ってらっしゃい」
「心音、また分からないところあったら訊けよー。俺、部屋にいるから」
「あ、うん。ありがと」
なぜ気付かないのでしょうね。あの男は。あの子自身が妹は妹としてしか見ていないからでしょうか。それでしたら、心音さんのすべきことは淫魔共と同じでしょう。
「ふっふー、ここねぇ。良かったね、結婚出来るってよ」
「別に、そんな気持ちはないわよ」
「ふーん。まぁ、僕としては敵はいない方が都合が良いんだけどー」
「たぁだ、いいの? 僕等、淫魔社会の中では結構手練れだよ」
これは、女の戦いですねぇ。まぁ、淫魔は女扱いされませんが。
心音さんは言葉を返せずに、リビングから去って行きます。
「かっわいい~。ここねの前でしゅーいちの処女をとったらおもしろいだろうなぁ~」
「そうだな、その後ついでに心音の処女を貰えばいい。ご馳走だぞ」
淫魔って女の処女も頂けるのですね、初めて知りました。しかし、それだと胸糞系のエロ同人になっちゃいますね。
「モモさんも葡萄さんも、どうしてそんな薄暗い発想しか出来ないんですか……。それじゃあレイプ物のエロ同人誌と変わりません。淫魔精神をお忘れですか」
「忘れなどしない。それに乗っ取ったうえでグレーゾーンで狩りをしていくのが上手い生き方だ」
「もう、葡萄さんっ!」
あら、喧嘩ですか。はしたないですよ?
グレーゾーンですか。確かにその方が利益が大きいのですかね。私は純白クリーンな清純乙女ですので、分かりませんが。
この四人は如何せん手法が違う物ですから、噛み合わないのですよねぇ。手法についての話になると、一気に喧嘩になるといいますか。
「いいですか、心を得てから処女をいただくのです。私達は人の男に好かれる見た目をしています、堕とす事など容易いでしょう。だというのにわざわざ無理矢理の手段を選ぶなど、よろしくありません」
ほら、始まった。
「もたもたと時間をかけている内に他に奪われるであろう。林檎のようなハイエナがいる中で、淫魔精神がどうなど言っている暇はなかろう」
「そーそー。可愛いモモを犯したくて近寄ってきたかわいそーな男は、ホテルに連れ込んでレイプするに限るよ~。モモ、かわいいから何でもゆるされちゃうの」
一度結託したと思ったら、すぐに対立するのですよ。
メロンは女としての自分に惚れらせて、好感度をマックスにしたところで食べる。葡萄は獲物を見つけたら夜な夜な襲い掛かる。モモは己の淫気を使って男を誘い、ナンパして来たところをホテルに連れ込む。そう違う方向性なのです。
今回は四人とも獲物が一致し、一番に林檎が遭遇したせいで、互いの手法を最善に尽くせない状態なのです。
「臨機応変って言葉を知らないのー? 一つのやり方に執着してさぁ、全く、頭悪いねぇ~」
林檎の完全なる煽りは、確実に淫魔共の頭に来たようです。
「私はお前のそう言うところが嫌いなのだ林檎!」
「林檎ぉ、モモ前から思ってたんだけどぉ、すこーしモモとキャラ被りしてるんだよねぇ。だからね、モモ思うんだぁ。お前は、黙ってろ」
モモの本性は出ちゃってますし、こりゃ喧嘩ルート決定ですね。
『あー、お前等喧嘩すんなって』
「口をはさむな修造! これは私達淫魔の問題なのだっ!」
『まぁまぁ、同じ淫魔なんだから仲良くしよ?』
「人間だって同族同士で争うよねぇ~、僕達の事言えるぅ?」
『うっ、それを言われちゃなんも返せない』
そうですね、もうしばらく淫魔共の喧嘩を見て行きます? あ、結構ですか。そうですか。では、しばしお待ちを。
おや、結局見に来たのですね。三十分経過しましたが、終わる気配はありませんよ。飽きませんねあの淫魔も。
「大体林檎! 貴様はいつもいつも」
「葡萄だってさぁー、前に僕の獲物横取りしたじゃない。お互い様でしょぉ」
「やられた事をやり返しただけだ!」
終わりそうもないですね、はい。
……ええ、そうです。一時間経過です。
「ですからモモさんも葡萄さんもっ、どうしてそんなグレーゾーンを走ろうとするのですかっ! モモさんに至ってはそれもうブラックですよ九割方!」
「いい子ちゃんきどりうざぁい」
「ぶりっ子に言われたかないよねぇ~」
「あ? 野郎なんか言ったか」
「そうやってすぐ本性出しちゃう辺りさぁ、どうかと思うよぉ」
「だからその口調は俺とキャラ被ってる言ってるだろうが、百回言わないとわかんねぇか?」
「じゃあどうしろって言うんだい? モモセンパイ」
主に林檎が火に油を注ぐんですよね。そろそろ第三者が介入してくれないと、終わりませんよ、これ。
「もうっ! 林檎さんがそうやって煽るからこの討論永遠に終わらないんです!」
「僕の事言えるわけー? そういうメロンだってぐだぐだと説教じみた事してさぁ! 逆効果なの分かってますー?!」
「だいたいさー、どーせ僕達は喰ったらすぐに捨てるっていうのに、恋させた方が残酷なんじゃないんですかー? そこんところどう思ってんです? メロンさぁん?」
「なっ。それは……そ、それもそうですけど、林檎さんのやり方も大概です!!」
「どっちもどっちだクソ野郎! 俺はお前等のそー言うところ気に喰わねぇつってんだよ!!」
「あぁもうっ、うるさいぞお前ら! 喰えれば何でもいいだろうが! この議論何回目だ!? いい加減意味がないという事を覚えろ!!」
「おめぇも大概人の事言えないよなぁ? 女の魅力がすくねぇ淫魔に用はねぇーんだよ引っ込んでろ!」
「ぶりっ子する事にしか脳がないお前には言われたくないわっ!」
あーあー、すっごい燃えちゃってますよ。
『なぁんでこんなにヒートアップしてんだよこいつ等……どうします?』
『僕、これの間に入る勇気はないです』
『ですよねー。傍観決めましょうか』
『それが賢明です』
あそこの男は役に立たなそうですね。肝心なところで役に立たないですね、人の男は。かく言う私も面倒事には巻き込まれた込まれたくないので、傍観で。
「ただいまー……って、あら、すっごい殺気」
おや美智子さんのお帰りですね。さて、彼女はこれをどうするか。
「喧嘩はしちゃだめよー?」
無難な切り出しです。しかし、淫魔共は気付いてすらいないですね。ギャーギャーと騒がしい。
さて美智子さん、どうします?
「……黙れっ!」
騒ぎ立てる淫魔四人を前に、大きく息を吸って言いました。そしたらなんということでしょう、火に水が大量に浴びせられました。
あれま、修造さんと優音さんも怯えちゃってるじゃないですか。
「美智子……あ、いや、これはだな」
「も、モモは悪くないもーん」
これは珍しい、淫魔共が恐縮しています。
「淫魔も喧嘩するのねぇ。原因は何?」
そう問われると、葡萄は林檎を、林檎はメロンを、メロンはモモを、モモは葡萄を、一斉に指さしました。
「もう、そんなに声を荒げないのよ。可愛い見た目が台無しよ? ほら、キウイ買ってきたから、食べなさい」
「仲良く、ね?」
母は強しですね。優しい微笑みに含まれた拒否を許さぬオーラは淫魔共に、ついでに流れ弾で男共にも効果は抜群です。
『やばい、トラウマが……』
『怒られてるの、僕達じゃないはずなんですけどね』
ふっ、人の男も案外弱いものですね。人が怯えている所はいつ見ても面白い、加虐心を煽られます。
ん、お待ちくださいね。彦星様から連絡が。大人しくお願いします。
あら、彦星様いかがなさいました?
え、今からデートですか! そ、そんな、私準備も何もしてない……。
ま、もう、口が上手いんですからっ! 神からお許しは出たんですか?
うふふっ、お忍びですか。
嫌だなんてとんでもない! えぇ、織姫はどこまでもお供いたしますわ。
はい、では今から準備をして参ります。場所はどちらで?
渋谷ですか、いいですねぇ。では今時の若者風の装いで参ります。ふふっ、会えるのを楽しみにしていますわ。
えぇ、私も貴方様の事だけを愛しております。えぇ! 勿論ですとも。
はい、では。ハチ公前で。
……という訳ですので、私は愛しの彦星様とデートに行ってまいります。あぁこうしてはいられない、早く準備をしなければ。
では私はこの辺りで、さようなら。
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