淫魔に「わからせ」は通じずむしろやり返される残酷な現実。ドン( ゚д゚)マイ
【寝起きドッキリ】寝込み襲ってみた!
【淫魔に「わからせ」は通じずむしろやり返される残酷な現実。ドン( ゚д゚)マイ】
よぉ、日曜日だな。修一はまだ寝ているぜ。
まぁ、寝ているんだがなぁ。
ベッドの横でメイド服を着て並ぶ美少女、こりゃ滅多にお目に掛かれない光景だぜ。
「ふわぁ……んん、何時……?」
「丁度七時だぞ」
「そ。ありがと、葡萄」
「……ん?」
あ、気付いたみたいだな。
「おはようございまぁす、ごしゅじんさま」
「どう? 修一、メイド服着てみたんだぁ」
林檎に尋ねられて、寝起きの正常ではない脳みそは判断を誤る。
「可愛い」
とっても正直に答えた。それが淫魔の思う壺であることは、修一も分かってはいるんだろうけどなぁ。
下半身にブツがなければこの淫魔も修一が大好きな美少女だ、はっきりとしない思考の中では見た目の情報だけを処理している。
「あ、ありがとうございます! 修一さん、お胸の方触りますか?」
「いいの?」
「あぁ、好きなだけ揉むと良い」
「じゃあ遠慮なく」
最初は遠慮がちに撫でるように触ったが、直ぐにその柔らかさを確かめる。反応からするに、メロンのが一番良かったんだろうな。やっぱ修一も巨乳の方が好きみたいだ。
「修一、可愛いなぁ。そんなにおっぱい好き?」
「うん、好き」
「そっかそっかぁ」
おっぱいが好きって言われてこんなに嬉しそうにするのは淫魔くらいだろうな。普通の女子に言ったらほぼ百の可能性で引かれるから注意しろよ。美智子みたいな奴は例外だけど。
しかし、寝起きのぼんやりとした感じって、こんなに長くなるモンだっけか……。
「……」
って、押し倒した!
「おい、林檎!」
「もう我慢できない。目の前に獲物が美味しそうな状態でいるのに食べないなんて、そんな事、許せるわけがない」
林檎は興奮状態のようだ。獲物を狙う獣のように、直ぐにでも食べようとしている。
「修一。君の処女、僕が貰っていい?」
「処女、俺の……」
「って、いいわけあるかっ!」
おわ、すっげぇ勢いで蹴飛ばした。
意外と修一、蹴りは強かったんだな。普通に痛そう。あ、そうだ、林檎は淫魔だから大丈夫だけど、女の腹蹴ったり殴ったりしたら大人にすっごく怒られるぞ!
林檎がそんな襲い掛かったもんだから、メロンがぷんぷんとしている。
「もう、林檎さん!」
「ごめん。想像以上に美味しそうだったから、つい」
林檎自身も予想外の行動だったみたいだ。
「気持ちは分かりますが、堪えていただかないと……」
「林檎を庇うわけでは断じてないが、確かに凄い淫気だった」
「ねぇ~、あれじゃあ襲ってくださいって言ってるようなものだよ、しゅーいち」
なんかよく分からないけど、修一に何かあったみたいだ。フェロモン的な認識でいいのかな。
「そう言われても。おっぱいは、好き、だからさ」
寝起きに胸を差し出されたら触るだろうと、言いたいらしい。まぁ絶対俺もそうした。寝起きの状態で、美智子にそんなことされたら……普通に、揉むよな。
「ふーん」
「なんだよ、男がおっぱい好きなのは至極当然の事だろ」
林檎としてはそれは一向に構わない、むしろそうであってほしい。だが、そんな事よりも突っかかる事があったようだ。
「うん、至極当然。僕等としては大歓迎。だけど、なんだろな」
「修一、淫魔に喰われたことある?」
「はぁ?」
突然の問いに、そう答えるしかなかった。
「ないなら良いんだ」
林檎はそう言うと、パッと切り替え伸びをする。
「あーあ、うまく行きそうだったのになぁ」
「お前のせいだろうバカ野郎」
「ごめんごめん」
葡萄に睨まれ、まったく悪びれる素振りのない謝罪を述べてから、林檎はちらりと修一を見た。
「何回拒否しようと、諦めないからね」
そう微笑んだ林檎に、不意にドキッと来たのは、おそらく俺だけじゃないだろう。
「何回来たって拒否してやる……絶対に」
それがなんか不服で、修一は負けず嫌いに呟いた。
お前等はどうする、めっさ好みの見た目の美少女がでっけぇ【自己規制】持ってて、お前の処女をくれって言ってきたら。渡す?
俺はなぁ、うーん、美少女相手ならちょっとありかも――
「ねぇちょっと」
嘘ですごめんなさい貴女だけですっ! って、そうか、俺じゃないのか。心臓止まるかと思ったぁ。まぁ、一応止まってるんだけどさ。
ん? まて、けど今俺の脈動いてるよな。……動いてる、よな? ま、何だっていいか。
「ん、どうしたの母さん」
「林檎ちゃん達の部屋作っているんだけど、手伝ってくれない? 力が必要なのよ」
「俺そんな力ないけど……。まぁ、いいよ。何か運ぶの」
林檎たちの部屋作りか。修一大丈夫かあ? なんなら美智子の方が力ある気がする。俺、腕相撲勝てた覚えねぇもん。
「とりあえず来てちょうだい」
「はいよー」
俺もちょっと見てこよ。行くぞ。
しかし、家具どうするつもりだ? 買ってはいないよな、届いた気配ないし。
あぁそうか、俺の部屋のやつか。
「っと、この家具たちも久しぶりの出番ね」
「そういえば、誰も使ってないよね。俺が小さい時にかくれんぼしたくらい?」
「えぇ。この部屋、あまり使ってなかったから」
確かに、ここあんま使わなかったなぁ。仕事は会社に行くし、大抵の事はリビングで済ませるし。寝る時はあっちの美智子との寝室使ってたから、こっちのベッドそんな使ってなかったな。こっちは仕事で遅くなった時とか、まぁ予備感覚で置いてた。
あ、けどここかたされたら俺どこで寝よ。あっちのほうのベッド一応残ってたし、あそこか? けどなぁ、一応俺幽霊だからな、下手に見られて美智子を驚かしたくないし……。なぁ美智子、ベッドだけは動かさないでくれるかなぁ?
「ベッドはそのままでいいかしらね、和室に客人用の布団があるし、引き続きそれ使ってもらいましょう」
「まぁ、このベッド一つじゃ意味ないわな」
え、マジで? おっしゃラッキー。
ありがとな美智子。まぁ言っても聞こえねぇか。
「じゃあまずはクローゼットね」
「わぁ、重そう」
「行ける行ける、修一そっち持って」
「うん」
がんばれー、力仕事は男の見せ所だぞ!
っと、二人が頑張っている所で、俺はどうしましょうかね。手伝いは出来ねぇからな。その辺りうろうろしてよっかな。
とりあえず、リビングの方に行ってみるか。
リビングには、お、淫魔四人衆がいるな。
「お、修造じゃん」
よぉ。反省会か?
「そんなところだ」
「修造、人の男側の意見が聴きたい。お前はどれほど親密な中なら処女を差し出すか? お前、ゲイに好かれてたのだろう」
えー、そりゃ好かれたけどさ。好みだって言われただけで実際そういう仲になったわけじゃないからな。
けど、まぁ普通の恋愛と同じだろ、その辺りは。
「じゃあ、もしも僕みたいな美少女の淫魔が処女を頂戴って言ったら渡す?」
んなもん、状況にもよるぜ。
「やっぱそうだよな。修一さんはなぜ私達を拒むのか、それさえわかればいいのだが……」
そんなん考えるまでもなく、男はほとんど拒むと思うけどな。
「モモたち超絶かわいいのにねぇ~」
いや、そういう問題じゃないだろ。
「それにしても、さっきの修一はすっごい美味しそうだった。あんな淫気の持ち主は滅多に会えぬぞ」
「うんうん、あれは絶対に仕留めないとねぇ。けど、修一のハジメテは僕だからね」
「馬鹿も休み休み言え、それは私だ」
「なにいってんの~? この中で一番かわいいモモに決まってるじゃぁん」
「わ、私だって負けませんよ!」
燃えてんなぁ。
ところでさ、淫気って何?
「なんだ、変態のくせにそんなのも知らないのか」
いや、変態って。否定はしないけどよ。
「淫気というのは淫魔が好む人の気、いえばフェロモンみたいなものです。これを感じると淫魔は非常に興奮します」
「修一さんのそれは、なんというか、すっごく美味しそうで。通常時でもそうなのに、先程の状態だと二倍まししてたんです。あと……その」
え、なんで目逸らしたの? なぁ、メロン?
「その、とても言いにくいのですが、修造さん、貴方も……」
「あぁ、淫魔に喰われてないのが可笑しいくらいだ」
そうなんだ。そういう家系なのかね、俺は淫魔とか始めて見たけどさ。
「なんなら修一が無理だったら修造でもいいかなーって思ってるよ」
えっ、マジで言ってる? 見て分かる通り俺幽霊だぜ。てか、一応既婚者なんよ。あと予備みたいな扱いしないでよな。どうせなら本命で来て欲しいわ。
「あはは、だいじょーぶだいじょーぶ! そうなる前にしゅーいち食べるから」
それもそれでなんだよなぁ。
「モモ、今回は仲間内以外にも競争者がいる。私達でも予断を許さぬ状況だ、そうしているとあっという間に他に取られるぞ」
「まぁ確かにぃ、あのたいちって子は中々強敵かもねぇ~」
「あと、心音もだよ。全く、ライバル多いんだから」
「しかし、どちらにも多きな壁があります。大智くんは同性ですし、心音さんは近親です。私達にチャンスがないわけではないでしょう」
「あぁ」
条件は皆一緒みたいだ、障害物競走って訳だな。
「そうそう、障害物競走。最初に壁を超えられた人が有利になるってわけ」
「まぁ、一番は僕だけどね」
「モモだよぉ」
そのやり取りもう一回するんだ。まぁ、頑張れよ。俺は知らんけど。
んぁ、誰か来たな。
「修造、出てあげれば? 美智子も修一も手離せないでしょ」
俺が出てもなぁ、怖がらせるだけだぞ? 心音あたり出てくれるだろう。
「はーい、今でまーす」
ほら。
ちょっと様子見てくる。
客人さんはーっと、お、沙友里さんじゃん。私服、すっげぇ可愛い。
一応心音とも顔見知りだ。しかしまぁ、心音からすりゃ兄貴の友達の姉さんだから、関係としては微妙な所だろう。顔見知りレベルだ。
「あ、沙友里さん」
「心音ちゃん、久しぶりだね~。大きくなったね、今何年生?」
どうやら心音の事のその微妙な距離感は詰めていくスタイルらしい。
「今中学二年生です」
「もう中学生かぁ、つい最近まであんな小さい子だったのに、時の流れってはやーい」
キャッキャッと女子高生みたいに、女子大生だけど。
「ははっ、まぁそうですね」
「えっと、沙友里さんはどうしたのですか?」
「あぁ、ちょっと修一くんに用があってね。今修一くん開いてるかな?」
「いや、すみません。兄は今母と取り込んでいて……」
「そっかぁ。それ、いつ頃終わる?」
心音は、すっげぇぐいぐい来る兄の友達の姉に戸惑っているようだな。大体、心音と大智くんの姉さんは小さい頃に数回関わったくらいだ。
そりゃまぁ、俺だって兄弟の友達の家族がこうも積極的だと少し対処に困るかもなぁ。特に心音は、少し人見知りなところあるからな。
「そんな長くはならないと思いますよ。重い物運んでいるだけみたいなんで」
視線は定まらないわ、声もはっきりしないわで、人見知りが発動されている事なんてバレバレなわけで。
「ふっふー、心音ちゃん。少し私の事苦手でしょー?」
それはもう、図星を突かれた顔をした。
「えっ、いや、そんな事は……」
しどろもどろな心音を見て、沙友里さんはニマニマしている。
「私、心音ちゃんとも仲良くしたいなー。もしかしたら、義姉妹になるかもしれないからさ」
はは、こりゃまた。爆弾投げたなぁ。
「ぎっ、え、義姉妹?」
「反応可愛い~。私、心音ちゃんみたいな妹なら大歓迎よ」
この時、心音の中で決定された事があった。そう、ちょっとした敵意だ。
沙友里さんも、それを感じ取った。
「ん、もしかして心音ちゃん」
「ふふっ、そっかそっかぁ。じゃあ私達ライバルだね」
「何のことでしょうかね」
出た。女の戦いの静かな合図、睨み合い。
「あれー、ちょっとお姉さん。お二人だけで完結しないでくれませんかねぇ~」
あ、おいこら林檎。変に介入するなって女の睨み合いに。巻き込まれると面倒だぞぉ? 知らぬ顔しとくが吉だ。
「君達は?」
案の定の問いかけに、林檎はふふっと笑って答える。
「どうも、美少女です!」
「正確に言うのであれば、ふたなり淫魔です」
メロンの追加説明はありがたいが、残念ながら更に困惑させるだけだ。
「あぁ、まさかまだ敵がいたとは。隅に置けない男だ」
「けど、モモたちの方がかわいいもんねぇ」
葡萄とモモも現れて、こりゃもうよくわかんねぇな! だけど、沙友里は何かを察したような顔をしているな。
「なるほど。ふたなり淫魔……つまり、修一くんの女の方をいただこうって魂胆ね!」
わっスゲ、ピンポイント大正解。今時の若い子は察しがいいなぁ。
まぁ、ふたなりというところで粗方察しはつくのかな。林檎達は言い当てられた事が予想外のようで、驚いている。
「ちょっと姉ちゃん! 何してんだよ!」
っと、ここまでま来客だ。追いかけてきていたのかたまたま通りかかったのか、大智くんだ。
「大智じゃん。ちょっと修一くんに用があってね」
「修一に迷惑かけんなよ」
なんかこれ、新たな火が上がりそうだな。大智くんからも敵意を感じる、しかもこの敵意は、恋愛的なあれだ。
「迷惑になることないでしょー? ただ遊びに来ただけなんだから」
「それが迷惑だって話だろうがよ」
「なんでさー」
あー、喧嘩するなってそんな事で。ちょっと林檎、仲裁しろよ、俺はできねぇぞ。
「まぁまぁ落着きなって、田中姉弟」
お、やってくれるみたいだな。
「だって、どうせ勝つのは僕だからねぇ!」
って、ちがーう! 油注いでどうする!
「「はぁ?」」
修羅場悪化させんなって。あ、そうだ心音! お前なら――
普通にピリついてるー。そうだよな、女子中学生だもんな。そりゃそうだよな。
「誰だよ、さっきから玄関で騒いでるのは。一体なんだって――」
「って、この状況は本当になんだっ!?」
お、修一。これどうにかしてくれねぇかな。
「修一ではないか。見て分かる通り、絶賛修羅場中だ」
「は、いや、え? どゆこと」
修一の中には修羅場という現場がどういった物かのイメージがそんなにない。あるとすれば、ドラマで見た不倫を発見された時のあの感じ、しかい、今修羅場と表記されたのは、ただ多くの人数が玄関先で何かを騒いでいる。これは、修羅場なのか。正直、俺も分からない。
とりあえず、玄関のところでこうも溜まられると困るから、中にでも入ってもらおうかと思ったが、それを提案する前に競争者がこぞって動き出した。
「あぁ、修一くん。今からちょっと遊びに行かない? 駅近に行ってみたいカフェがあるんだけど、少し付き合ってほしくて」
「抜け駆けはズルいぞ姉ちゃん! 修一、時間あるならゲーム付き合ってくれよ! 俺だけじゃクリアできなくてさぁ」
「あ、兄貴! 私ちょっと提出物で分からないところがあるんだけどさ、ま、また教えてもらえない?」
「待て待てお前等、そんな一斉に誘うなって。待ってろ、優先順位考えるから」
修一の中で優先順位を組み立て始めた。
まず提出物は大事、真っ先にやらせるべきだ。普通に考えたら心音が一番順位が高いのだが、しかし、沙友里さんの誘いを断ると言うのも気が引ける。友達の姉ちゃんというポジションでるから、ある程度の友好値は持っておきたい。そして個人的に大智とも遊びたい。
まぁけど、普通に考えて心音が先だろう。
「大智、ゲームは明日の放課後でいいか」
「まあ、構わないぜ」
「えっと、沙友里さん。来週の土曜日でしたらお付き合い出来ますけど、それでいいですか?」
「うん、来週なら開いてるし、それでいいよー」
「じゃ、修一、俺帰るなー」
「私もそろそろ、予約取れたしね。じゃあね、修一くん」
「ばいばーい」
おー、あの姉弟笑い方一緒だ。姉弟なんだな。
二人帰るだけで結構静まるなぁ。
「随分賑やかだったわねぇ」
お、美智子。
「あ、母さん」
「そうだ母さん、明日の放課後は大智の家に遊びに行くけど、夕飯までには帰るわ。あと、土曜日の方は沙友里さんの用事に付き合うから出かける。あと今から心音に勉強教える」
「一気に用事できたわねぇ。分かったわ」
「心音、頑張りなさい」
「う、うん」
心音の部屋に行くのかな。じゃ俺も行こ。
にしても心音、自分でさっきの言動に至った訳が分からないみたいな感じだな。
「兄貴」
「んー?」
「あんた、家族は許容範囲に入るわけ?」
「流石に母さんは入らないよ、熟女趣味はないし」
「ちょっと修一ー! まだ熟女って歳じゃないわよ、お姉様といいなさいな」
そうだな、四十代はまだ初老だ。けど、俺からすりゃ美智子はいくつになっても美少女だぞ! って、そういう話しじゃないか。
さて続きはなんだ?
「じゃあ、妹は?」
お、ここで妹ジャンルか。答えは、まぁ予測つくわな。
「んー……怒らない?」
「なんで怒るのよ?」
「じゃあ言うよ? 正直、とっても股間に来る」
おぉ、割とガチで正直に言ったな。そして割とガチめに引かれてるぞ。
「あぁ違うの! あくまでもね、妹ってジャンルがいいってだけで」
「今私はそれに対して引いてるんですが」
「よしてくれよ、何も心音を性的対象に見てるわけじゃないんだから。お前はただの妹だよ」
「……じゃあさ、年上のお姉さんと年下の女の子だったらどっちがいいのさ」
お、それは中々いい質問だな。けど、多分あれだよな、どっちでもいいって答えだよな。俺と一緒で。
「美少女ならどっちでもオッケーです!」
「だと思たよ変態!」
「理不尽っ!」
うっ……俺にも刺さったわ、割と深めに。
女子ってわからねぇな、なんでそこで怒るんだ? そんだったらさっきの妹キャラが股間にくるの方があれだと思うけど。
『それはあれじゃないですか、思春期だから』
あぁ優音さん、ども。まぁそんな感じっすよねぇ。
『もしくは生理中とか』
あそれだ!
『やっぱ高確率でこれですよね、女の子の機嫌が悪い時は』
そうそう、九割方な。
『九割方ですよねぇ。私の妻もその時だけ異様に形相が鬼でして、近くにいるだけで怒鳴られそうでしたもん』
やっぱ個体差あるんですね、それも。美智子はそういうの全くなかったなぁ、今もそんな様子ないし。
「心音、それでどこ分からないんだ?」
「これ」
「それかぁ……」
ん、あぁ一次関数か。これ簡単な方なんだけどな。
『え、これ簡単なんですか……?』
ただの一次関数じゃないですか、応用でも何でもないですし、簡単ですよ。
『覚えてない、ですね』
まぁ習ったの随分前でしょうしねぇ。俺も難しいのは出来る気がしないですよ。
「教科書見ても分からなかったの?」
「そもそも何を言ってるのか理解できなかった」
「んー、そうくるか」
「とりあえず、課題見せて」
ははっ、こりゃ難航しそうだな。問題の意味わからない奴に教えるとなると、結構大変なんだ。
ん、優音さんどうしました?
『あ、そのですね。学生時代、勉強は一貫して苦手でして。思い出してちょっと嫌になりました』
あー、なるほど。
『音楽は得意だったんですけど……』
音楽できるのは凄いと思いますけどね。俺、音楽は全くで。何か楽器とかやられてたりしたんです?
『高校生の時に部活でキーボードを』
ほー、軽音部ですか。カッコいいですねぇ。
『修造さんは部活なにしてたんですか?』
一応、中学の時は部活必修だったんで、サッカーやりましたね。ただ、高校は帰宅部ですよ。親父が帰ってくる前に帰りたかったんで。
『それはなぜ?』
それはもう、親父の部屋にあるエロ本漁るためですよ。
地味に趣味が合ってたんですよ、巨乳の美少女モノいっぱいありました、写真集から漫画まで。いい物たくさんあったんで、楽しかったです。
『ふふっ、そうですか。平和な理由でよかったです』
まぁ、普通にバレてたみたいなんですけどね。なんか、しまう順番が違ったみたいで。きちんと買った順に並べてたんですって。
『そこは上手くやりましょうよー』
親父なら分からないかなって思ったんですよー。
『怒られませんでした?』
いや、「お前も男だもんな」の一言でオッケーされましたね。親父には。
『という事は、お母さんの方に?』
察しがいい。親父と一緒に怒られましたね、「何のためのR指定だと思ってんだ!」って。
『仲いいですねぇ』
まぁそこそこ良かった方なんじゃないんですか? 他をあまり知りませんけど。
「心音、一ついいか?」
「なに?」
っと、そう話している間に。修一が何か始めた。なんだなんだ?
「俺に利点があってもいいと思うんだよね」
「はい?」
「だから、心音に勉強教えてるんだから、俺に利点あってもいいじゃん? だからさ」
「俺、お兄ちゃん呼び好きなんだよねぇ」
こりゃ、間接的と見せかけた直球な要求だな。数学教えている最中に、随分藪から棒な。
『これは呼べって事なんですかね?』
ほぼ確実に。
「……お兄ちゃん」
「やっぱいいなぁお兄ちゃんって! なぁ心音、もう一回」
おっ、必殺無視だ。
お兄ちゃん呼びが恥ずかしいのだろうな。
「って、無視するなよー!」
ふっ、なんかこれ面白いな。
……ん、なんだお前、出かけるのか? ふーん、まぁいいぞ。行ってこい。
『またね~』
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