2章10 『ドロドロのミスゲート!』 ④
「――こんにちはっ、生徒ども! 今日も雁首揃えて元気いっぱいだなっ!」
ロリ委員長にお褒めに与った生徒どもは雁首揃えて歓声をあげた。
「な、なんなの……? 次から次に……」
弥堂の虚言を暴くのに失敗した希咲は臍を噛む。
「会長だの副会長だのって、なんで風紀委員が……っ⁉」
言いかけながらハッとする。
(待って……? 風紀委員? それってもしかして……)
そして慌てて弥堂の方へ振り向いた。
(まさか……っ、こいつの罠……⁉)
弥堂自身も風紀委員であったことを思い出す。
この場は自分が弥堂に奇襲をしかける場だと希咲は思っていた。
しかし実際はそうではなく、弥堂に何もかもを看破されていて自分が今日仕掛けてくることも見抜かれていたとしたら。
それを逆手にとり、風紀委員の仲間を使って自分を罠にかける準備をしていたのではないかと考える。
「タ、タイヘン……っ!」
ゾクっと悪寒が奔る。
(このままじゃ、あたし……っ、風紀違反にされちゃう……っ!)
希咲はバッバッと周囲へ視線を振り、急いで脱出経路を探るが――
「――いや、ねーわ」
すぐにスンと真顔になりセルフツッコミを入れた。
「てゆーか校則違反とかしてないし。ちょっとガッコサボっただけで……」
誰にというわけでもなく自身の無実を主張する。
(そもそもあいつ自身が捕まりそうになってたしね……)
そんなことを考えつつ、さりげない動作でウエストの位置で丸めているスカートの折り目に指先を挿し入れる。
気付かれないようにその指をクイクイと動かしてこっそりとスカートを少し長くした。
「うんうん」と頷いて思考を戻す。
(でも、だったらこれは一体なんなの? あの子って確か飛び級で入ってる天才の――)
「――委員長ぉーっ!」
しかし、またも新たな声が群衆の向こうから聴こえてきた。
今度は男子生徒の声だ。
ノエル委員長に向けて手を振りながら、坊ちゃん刈りに瓶底メガネをかけた華奢な男がナヨナヨと走ってくる。
風紀委員会の書記であり、ノエル委員長の忠実なイエスマンである
筧はスススと小物臭い動きでノエル委員長ににじり寄った。
「もぉー、委員長! 一人で走って行ったらダメですよぉー」
ノエル委員長は自身のカワイイ部下にニコっと微笑みかける。
「えへへ、ノエルかけっこ速いだろ? 体育で先生に教わったんだ!」
「それはすごい! 流石です、委員長っ!」
筧はすかさずヨイショをする。
ノエたんはゴキゲンになった。
しかし――
「でも委員長。“雁首揃えて”はあまりいい意味ではないですよ?」
「えっ⁉ そうなのか⁉」
「はい。主に相手を馬鹿にする時に使います」
「そ、そうだったんだ……。みんなゴメンなさい……。ノエル知らなかったんだ……」
筧に指摘され、生まれてたった10年の幼子はシュンと落ち込んでしまう。
その痛ましい姿に周囲の生徒さんたちはハラハラした。
「だ、大丈夫だぜ委員長っ!」
「オレたち気にしてないからさ!」
「そ、そうよ!」
「ノエルちゃんはいつも頑張ってるよ!」
口々に励ましの言葉を送りだし、その応援の輪は拡がっていく。
「ほら! オレたち実際バカだしさ!」
「そうそう、ワタシとかよく頭カラッポって言われるし!」
「だから間違ってないよ!」
「さすがノエたんは頭いいなぁ!」
「み、みんな……」
有象無象の無能どもの温かいお言葉に天才女子はジーンと感動する。
「ほら委員長。いつまでも落ち込んではいられませんよ。自分で考える脳のない民衆は天才である委員長のお導きを待ち望んでいます」
「そ、そうか……、そうだよな! みんなバカだもんな!」
筧の甘言にハッとした天才児は為政者らしく堂々と胸を張った。
「みんなぁー! ノエルに任せてくれ! バカなオマエたちが安心して学園生活を送れるように、天才のノエルがいい感じにしてやるからなーっ!」
ロリに罵って頂いた愚かな民衆どもはワァッと歓声をあげる。
「へへ……っ、えへへへ……っ」
飛び級の天才とはいえ所詮はロリ。
年上のお兄さんやお姉さんにチヤホヤされて、ノエル委員長はみるみるいい気になった。
民衆の声に応えるべくバッと腕を翳す。
「よりよき学園生活のために……っ!」
「よりよき学園生活のために!」
「よりよき学園生活のために!」
「よりよき学園生活のために!」
「よりよき学園生活のために!」
「うるさぁーーーいっ!」
何やら怪しげな儀式のような大合唱が始まると、堪えきれなくなった七海ちゃんはガァーっとキレる。
会場は冷や水をかけられたように一瞬で鎮まり、ドサクサ紛れにロリを胴上げしようとにじり寄っていた不届き者たちは逃げていった。
「そ、そーじゅーろー! そーじゅーろーっ! なんかハデなお姉さんが怒ってるぞ……⁉」
「む、いけません委員長! ボクの後ろに隠れて!」
いきなり怒鳴られてビックリしてしまい、即行で泣きの入ったロリを筧が背後に庇う。
「あ、あのお姉さん、不良なのか?」
「委員長、あれがギャルですよ。話したら低知能が伝染ってしまいますから見てはいけません」
「ギャルじゃねーし」
小さな子におかしなことを吹き込む軽薄な男を希咲はジト目で見遣った。
すると、金髪ロリがオズオズと話しかけてくる。
「で、でも、お姉さん髪が黒くないぞ? キラキラしてるのはギャルだってそーじゅーろーが言ってたぞ」
「あんただって黒髪じゃないでしょ」
希咲の呆れ混じりの即レスにノエル会長はハッとした。
「あ――っ⁉ ホ、ホントだ……! そ、そーじゅーろーっ! ノエルはギャルだったのか……⁉」
「いいえ、違いますよ委員長」
筧は慈愛に満ちた笑みで上司をナデナデする。
「ノエたんは天使です。そして神でもあります。ギャルとかいう性と欲望で汚れたババアなどとは生物としての成り立ちからして全く違います」
「だっ、誰がババアだ⁉ 汚れたとか、あんた失礼すぎっ!」
一回も喋ったことのない男子にいきなり罵倒され、希咲はキレる。
しかし希咲の怒声に怯むことなく、筧はニヤァっと厭味ったらしく頬を吊り上げた。
「おやおや? ボクは『ギャルはこうだ』と言ったんですよぉ? アナタつい今『自分はギャルじゃない』と言いましたよねぇ? あれあれぇ? おかしいなぁ? それって自分で自分がギャルでババアで汚いって認めることになっちゃいませんかぁ~?」
「な、なんなのあんた……! むかつくっ……!」
侮蔑の気持ちを1ミリも隠す気のないその煽りっぷりに、七海ちゃんはダンッダンッと地面を踏み鳴らして怒りを露わにした。
「ねぇっ……! なんなのあいつ――って……、あれっ?」
あまりのムカつきに弥堂へ八つ当たりしようと顔を向けるが、さっきまで居た場所に彼は居なかった。
「どこいった?」とキョロキョロすると、いつの間にか弥堂は五清さんのすぐ傍に接近していた。
「あっ――⁉」
弥堂の接近に五清さんが気付くよりも早く、スッと伸びた弥堂の手が彼女が持つファイルを奪い取る。
「か、かえしなさい……!」
慌てて叫ぶ五清の手が届くよりも早く弥堂は踵を返し、そのままノエル委員長の元へ向かった。
「委員長殿――」
「――ん? おぉ! びとぅー! びとぅーも居たのか!」
「はい。実は委員長殿に取り急ぎご報告したいことが……」
弥堂は淀みのない動きで委員長に擦り寄ると、彼女の手に飴玉を一つ握らせる。
そして五清から奪い取った風紀委員の活動報告書のファイルを差し出す。
「ふぉぇわ……?」
お口の中でアメちゃんをコロコロさせながらノエル委員長は首を傾げる。
「実は風紀委員会の機密情報が一部外部に漏洩しました」
「えっ⁉」
大事件の予感に女児はお口から飴玉をポロンっと落とす。
サッと近寄った筧がすぐに代わりの飴玉を委員長のお口に入れ、それから地面に膝をついて落ちた飴玉を回収する。
厳重に紙で包みジップ付きのビニールに仕舞うとそれをスッと懐に入れた。
そしてまた委員長の斜め後ろに控える。
「な、なんでそんなことになったんだ……?」
ほっぺをモゴモゴしながらノエル委員長は茫然と疑問を口にする。
弥堂は一度頷いてから状況を説明する。
「我が委員会に裏切者が出ました」
「えぇっ⁉」
そしてたった一言だけでまた委員長は大袈裟にビックリする。
いちいちうるせえなと内心で思いながら、弥堂は説明を続ける。
「五清です。あの女が裏切りました」
女であることを盾に攻撃してくる連中に対抗するため、弥堂は子供を盾にする手に出た。
「い、いすみが⁉」
「は、はぁ?」
弥堂に密告を受けたお子さま委員長は五清の方へ顔を向ける。
当の五清さんはわけがわからないといった顔をした。
「い、いすみ……、なんで……?」
「ちょ、ちょっと待ってください! 私は別に裏切ったとかないです」
「え? そうなのか?」
「当たり前ですっ!」
「なぁーんだよかったぁ……。びとぅー? いすみは裏切ってないらしいぞ?」
五清さんの弁明を素直に聞き入れてクルっと弥堂の方へ向き直る。
「いいえ。騙されてはいけません。あの女はスパイです」
「ホワァッツ⁉ モール⁉」
「イエス、ボンド」
「オーマイガッ……、ま、まさかいすみが先物取引を……」
しかしすぐにまた悪い大人に騙されてしまった。
「いすみ……、目的は半導体なのか?」
「なに意味のわからないことを言ってるんですか! 委員長はそいつらに騙されてます!」
「で、でも、びとぅーはワルイやつじゃないぞ?」
不安そうな目をする委員長を安心させるように、弥堂は彼女に追加の飴玉を握らせた。
すっかり蚊帳の外に置かれた希咲は、「こいつどこでも怪しいことばっかしてんのね」と白けた目で状況を見守っていた。
「信じて下さい委員長殿。それに、証拠ならあります」
「そ、そうなのか……⁉」
「はい。このファイルです」
「そういえばなんでこれがこんな所にあるんだ?」
弥堂は頷き、自身の眼で実際に見た五清の犯行を告げる。
「これは五清が勝手に持ち出しました。基本的に外部に持ち出し禁止のはずのこのファイルを」
「えぇ⁉」
「そ、それは……」
ノエル委員長にバッと視線を向けられると五清は口ごもる。
そこの部分に関しては事実だったからだ。
「さらにあの女はあろうことかファイルを開き、民衆に向けて一つの書類を公開しました。審議の必要もない情報漏洩です」
「ど、どうしてそんなことしたんだ?」
「これは俺の推測になりますがよろしいですか?」
「聞かせてくれ! びとぅー!」
「ま、待ちなさい……、勝手なことを……」
五清さんの制止を無視して弥堂は勝手なことを言う。
「おそらくこの件を以て委員長閣下を失脚させる狙いだったのでしょう」
「えっ⁉ ノエル委員長じゃなくなっちゃうのか⁉」
「はい。風紀委員長は風紀委員会のトップ。仮に委員会で起きた問題の責任を問われれば、その責任をとるのは当然……」
「あっ! ノエルがごめんなさいしなきゃいけないのか!」
「それだけでは済まないでしょう。辞職を求められるはずです」
「で、でも五清はなんでノエルを……?」
「ヤツは副委員長。それより上のポストは一つだけ。あの女にとって委員長殿は目の上のタンコブなんですよ」
「そ、そんな……」
「デ、デタラメよ……! 委員長信じちゃダメっ!」
「それに、証拠もあります」
弥堂はファイルを開いて一つの書類をノエル委員長に見せる。
そしてその書類のある箇所を指差した。
「見てください。ここです」
「え……? ここがどうしたんだ?」
そこは委員の活動報告書の最下部。
委員が書き込んだ内容に対しての委員長の承認印と、内容に関しての評価を記す場所だ。
そこには『頑張ってえらい!』と活発さの窺える文字が書かれており、その横には『大変よくできました!』と花丸スタンプが押印されている。
「よくご覧ください。この『頑張って』の『張』の字を」
「こ、これが……?」
「この“ゆみへん”の部分は委員長殿の字ではありません。一度消されて書き直された跡があります」
「え……? あっ! ホントだ……っ!」
「あっ……、それは……」
弥堂の示した証拠に委員長は目を見開き、五清さんはどこか気まずそうにした。
「これは公文書の偽造・改竄です」
「え、で、でも……、『頑張ってえらい』っていいことが書いてあるぞ?」
「それはそれ、これはこれ。内容を改変したことには違いありません」
「そ、そうなのか……?」
「もうおわかりでしょうが、これは五清の字です」
「な、なんだってー⁉」
ビックリしたロリ委員長はバッと五清の方を向く。
「い、いすみ……、どうしてこんなことを……?」
「え、えっと、それは……」
問われた五清さんはキョドキョドと目線を泳がせる。
この字を五清が書き直したことは事実である。
しかし、それは内容を改竄したわけではなく、単に漢字の間違いを直しただけなのだ。
遠いイギリスの地から幼い身一つで日本に留学に来ているノエルが天才であることは疑う余地はなく、また彼女は流暢に日本語を話す。
しかし、そんな天才児でも漢字の書き取りはちょっと苦手なようで、しばしば書き間違うのだ。
五清さんはそんな彼女をちっちゃいのに頑張っててえらいなーと微笑ましく思っており、こうして風紀委員会の公的な書類で間違いを見つけた時はこっそり直してあげていたのだ。
いちいち間違いを指摘するのも忍びなく、また天才である彼女のプライドを傷つけないようにと、このような対処をしていたのでこの場で言い出すことも憚られ言葉を詰まらせてしまった。
そしてクズはそういった他人の良心に的確につけこんでいく。
「あの女は日頃から仲間内でこう漏らしていたそうです」
「な、なんて?」
「委員長殿の漢字は下手くそだと」
「え……⁉」
「見るに堪えない。しょっちゅう間違っている。こんなものを他所の者に見られたら風紀委員の恥だと」
「そ、そんな……」
幼子はガーンっとショックを受ける。
「ふざけないで! 私がそんなことを言ってたってどこで聞いたのよ!」
「お前の周囲に居る者がそう言っていたと誰かに言っていたのを聞いた者から報告を受けた」
「そ、そんなのデタラメよ! 誰が信じるの!」
「それはこれから調べればいい。ですが委員長殿、わかったでしょう? あの女は日頃から委員長殿を疎んでいたのです」
「あ……、ノ、ノエル、まだ漢字むずかしくて……、いっしょうけんめい勉強してるけど……。いすみがそんなにヤだったなんて知らなくて……ごめんなさい……」
ちっちゃい委員長はシュンと肩を落とすと、そのお目めにじわっと涙を浮かべる。
「び、弥堂っ! やめなさい! アナタには良心はないの……⁉」
「ふん、スパイには言われたくないな」
「なにがスパイよ! そんなわけないでしょう!」
「そうか? 俺は知っているぞ。風紀委員会にはスパイが紛れ込んでいるとまことしやかに囁かれていることを。そのスパイが予算に細工をしているとな。お前のことなんじゃないのか? 五清」
「そ、それはアナタのことでしょうが……!」
「もっとマシな言い訳をしたらどうだ? まぁいい。委員長殿。俺にこの女を拷問する許可を。6時間で必ず口を割らせてみせます」
「ま、まってくれびとぅー! いすみにヒドイことしないでくれ!」
自分に陥れられようとしていた(と騙されている)女児に庇われて、五清さんは何も悪いことをしていないのに罪悪感で胸が「うっ」と痛む。
「そうですか。ではこの女の審問は省いてこの場でもうクビにしましょう」
「そうですね。委員長、ボクもそうした方がいいと思います! 五清さんはいつもみんなで決めたことに文句ばかり言いますし。どのみち誰かが責任をとる必要があります」
弥堂の提言にすかさず筧も乗ってくる。
クズとクズは阿吽の呼吸で自分たちに都合の悪い人物の排斥に動いた。
しかし心優しい女児はフルフルと首を振る。
「そんなのダメだぞ! いすみはがんばってるんだ! いつもすぐ怒るけど……、でも一生懸命に委員会のお仕事してくれてるんだ……! やめさせるなんてカワイソウだぞ!」
「い、委員長……っ」
バッと両腕を広げてちっちゃな身体で自分を庇ってくれる女児に五清さんはジィーンと感じ入る。
思い通りにいかなかったクズ二人は悟られぬように舌打ちをした。
「それじゃあ、これからもみんなで力を合わせてがんばっていこうな!」
これまでにも力を合わせたことなど一度もなかったが、このままいい話風にこの場は解決するかと思われた時――
「――じゃあ、ごめんなさいしような? いすみっ」
「えっ……?」
クルっと振り向いたロリがニコっと笑ってそんなことを言ってきた。
五清さんは首を傾げる。
謝る? 誰に? 何を? と。
「悪気はなくてもいすみは失敗してみんなに迷惑かけちゃったから、だからちゃんと謝ろうな?」
「は?」
「ノエルはいすみがわざと書類を見せたなんて思ってないぞ! きっと間違えちゃったんだよな?」
「え、えっと……、それは……」
変化した新たな流れにクズたちは乗ってくる。
「あー! そういうことでしたか! さすがは委員長!」
「え?」
「なるほどな。五清は悪意があってやったわけでなく、ただ無能だからミスをした。そういうことですね? 委員長殿」
「うん? えっと……、うん! そうだぞ! いすみはバカだから間違えちゃったんだ! おじいさまが言ってたぞ。馬鹿な民衆は常に間違うって! いすみはバカだからしょうがないんだ!」
「なんですってぇ!」
あんまりな侮辱を受けて五清さんの顔は一瞬で怒りMAXになる。
「ぴっ⁉」
その剣幕にロリは怯えた。
「ちょっと五清さんやめてください。ノエたんが恐がってます」
「そうだ。こんな小さな子供を恫喝するなど恥を知れ」
「ぐっ、ぐぬぬぬ……っ!」
子供であることを前面に出されて五清さんは悔しげに呻く。
ここぞとばかりにクズたちは五清さんに襲いかかった。
「ミスをしたら謝る。常識ですよね?」
「良識ある年長者として当然のことだよな。まさか出来ないとは言わないよな?」
「ア、アナタたち、卑怯よ……っ!」
「卑怯? それは自分の非を認めることも出来ない者のことを指すのでは?」
「俺たちはこう言っているんだ、五清。スパイか無能か、お前が好きな方を選んで自分でそう名乗れと」
「~~~~っ!」
あまりの悪辣な手口に五清さんはコメカミの欠陥が切れそうなほど歯を食いしばる。
「い、五清さん……」
五清が連れてきた彼女の支持者たちが不安に見守る中――
「――ご、ごめんなさい……」
――蚊の鳴くような声で彼女は謝罪を口にした。
弥堂も筧も特に何も言わず、「ふん」と鼻を鳴らしてただ侮蔑の目で下げた彼女の頭を見下した。
「わぁ! いすみはちゃんとごめんなさいしてエライな! みんな許してあげような!」
委員長がそう宣言するとそれで手打ちになったように、ワァっと野次馬からも歓声が沸き、そして拍手が巻き起こる。
その喝采の中で、五清さんは悔しさで手を握りしめ、身を震わせながら俯いていた。
「う、うわぁ……」
その光景を遠巻きに見ていた希咲からはそんな声が漏れる。
部外者だから口を出すのは憚られて静観していたのだが、横槍を入れて彼女を助けてあげればよかったと後悔する。
五清さんの姿にほんの半月前の自分の姿を重ねて、ただ彼女へ同情的な視線を送った。
なんかとってもヒドイものを見た気がするし、結局なんの珍劇だったのかもわからなかった。
だが、とにかく終わったようなので、ようやく自分の用件の続きが出来ると考える。
しかし――
「――い、委員長っ!」
五清さんは震える声でノエル委員長を呼んだ。
「ん? どうしたいすみ?」
五清さんは顔をあげてキッと鋭い目を向ける。
「わ、私の件はもう終わりでいいですね?」
「そうだな! 謝ったしな! というか、みんななんでここに集まってたんだ?」
どうやら何もわからずにみんなが居るからと、自分もここに来ただけだったらしい。
そんなお子さまの疑問に五清は答える。
「その男です!」
五清さんが指差したのは弥堂だ。
たった一人で風紀委員会の腐敗と戦っている五清さんのメンタルはまだ折れてはいなかった。
「ここの騒ぎは弥堂が原因です……!」
「え? びとぅーが?」
全員の注目がまた弥堂へ向く。
(い、五清さん……、すごい……っ!)
まだ戦おうとする五清さんの姿に七海ちゃんはジィーンと感動しつつも、ハラハラと見守る。
ちなみに、この騒ぎの原因を追及されるとそこに自分も関係者として含まれてしまうことには気付いていない。
「なにがあったんだ、いすみ?」
「実は、弥堂が風紀違反を――」
「――おっと委員長! そろそろオヤツの時間ですよ!」
「ちょっと、筧……⁉」
五清が都合の悪いことを言いだそうとした瞬間、筧がプリンを手に割り込んだ。
露骨に邪魔に入った筧に五清は掴みかかり、彼の襟首を掴んでブンブンと振る。
首をガクガク揺らされながらも筧はどこ吹く風だ。
その時、弥堂は筧へアイコンタクトを送った。
五清に揺さぶられながらも筧は弥堂の視線を受けてニヤリと頬を吊り上げた。
そして筧は群衆の一部へ目線を動かす。
「ちょっと筧! 聞いているの⁉ 邪魔をしない――」
五清さんが眦をあげてそう叫ぶが――
「――なんだテメェこのヤロウ……ッ!」
――群衆のどこかから、そんなガラの悪い鳴き声があがった。
自然とそこへ皆の視線が集まる。
そこで息巻いていたのは鮫島くん――
――ではなく、彼の仲間の須藤くんだった。
「な、なんだオマエ、いきなり……⁉」
「テメェ今ガンつけてただろうが! トボけてんじゃあねえぞクソが!」
須藤くんは別のクラスの男子に怒鳴っているようだった。
「お、おい、須藤? どうした急に?」
いつも立場が逆だが、この場ではいきなりキレた友人に戸惑いながら鮫島くんが止めに入る。
「あ? このヤロウがオレらにガンくれてやがったんだよ!」
「そうなのか? 小鳥遊」
「い、いや、俺はわかんねえけど……」
「ふ、ふざけんな! テメエらなんか見てねえよ……!」
須藤くんに絡まれた男子生徒も不良のようだったが、喧嘩に応じる気はないようで慌てて弁明する。
須藤くんはベッと唾を吐いた。
「テメエこら、D組の猿渡だろテメエ。B組ナメてんのかよこのヤロウ」
「あ? んなこと言ってねえだろ⁉ コナかけてんのはテメエだろうが!」
不良同士の怒鳴り合いが始まり、自然と群衆は離れて行く。
「ちょ、ちょっと……? いきなりなに……?」
突然の出来事に五清さんは弥堂の糾弾どころではなくなってしまった。
「あ? 須藤、コイツB組にケンカ売ってんのか?」
「おお。コイツよぉ、D組の猿渡だぜ。最近チョーシくれてやがってよぉ」
「アァ? テメェなんだコラ。やんのかこのヤロウ?」
「コイツよぉ、あちこちで息巻いてやがんぜ? 鮫島よぉ、オメェがやんならいつでもタイマン張ってやるって上等こいてやがんだわ」
「お? コラ。いいぜ、やってやんよ。顔面だせよこのヤロウ。ぶったたいてやんよ」
止めに入ったはずの鮫島くんだが、本来須藤くんよりも遥かにキレやすい彼は早速顔面をビキビキさせながら前に出た。
「サ、サータリ、コイツ鮫島だ……! けっこうヤるってウワサだぜ……⁉」
「し、知ってんのか? コーイチィ?」
「頭イカレててすぐケンカ売って来るって言われてんぞ、サータリくん」
猿渡くんたちは及び腰だった。
「あ? なんでオレの名前勝手に呼んでんだこのヤロウ? なんか文句あんのかよ?」
「も、文句なんて……、つーか、鮫島、オマエも“佐城派”だろ? なんでオレらにケンカ売ってくんだよ……⁉」
「カンケーあるかボケェッ!」
「ヒ、ヒデェ……っ⁉」
どうにか仲裁をしようとした猿渡くんの仲間のヒデくんは、大したことも言っていないのにあっという間に鮫島くんに殴られてしまった。
「な、なにしやがんだ!」
「うるっせえんだよダサ坊がぁ! 大体テメエらD組がなんでここにいやがる⁉ ここはオレらB組の集まりだぞこのヤロウ! なんか探り入れてやがんのか⁉」
「さ、探りって、何を探るって――」
「フカシこいてんじゃあねえぞコラァっ!」
「コ、コーイチィ……ッ⁉」
特に何も言わせてもらえずコーイチくんも殴り倒されてしまった。
「こ、このヤロウ……! 仲間二人もやりやがって! こっちも退けねえぞ⁉」
「だったらかかってこいよこのヤロウ! 述べてんじゃあねえよサルが!」
「述べてすらいねえけど⁉」
全く意味もわからずにケンカを売られた猿渡はビビリ上がる。
そこへ――
「おいおい、なんだよこれはよぉ」
「B組とモメてんのか? サータリィ」
「オレらも混ぜろやァ」
「オ、オメェら……」
同じクラスの仲間なのか、数名の不良が集まってきた。
相手の方が人数が多くなり、特に不良というわけでもない小鳥遊くんはビビリ始めた。
「な、なんでこんなことに……」
「あ? オメエはそっち隠れとけよ。こんなのオレと鮫島だけでヨユーだぜ」
須藤くんが前に出ながら小鳥遊くんに避難を促す。
その様子を見て、猿渡は俄然勢いづいた。
「ヘっ! なにがB組の集まりだ! んなもん知ったことかよ!」
「アァ? 文句あんのかコラァ!」
語彙力の貧弱な鮫島くんはキレると「文句あんのか」と「ヤんのかコラ」以外の日本語はほとんど忘れてしまう。
「うるせぇ! 七海はよぉ! オレが狙ってたんだ! それが弥堂だァ⁉ ざけんなよ⁉」
「は? あたし? なに?」
野蛮な不良どもの諍いへ迷惑そうな目を向けていた希咲だったが、何故かいきなり自分に飛び火してきて困惑する。
「んだコラテメエ⁉」
「文句あんのかコラァ⁉」
そしてそれに対して何故か鮫島くんと須藤くんがバチギレしている。
「希咲は弥堂の女だろうがッ!」
「それに手出すってのはオレたちB組にケンカ売ってるってことでいいんだなァ⁉」
「へ? なに? なんの話? あたしが? なんて?」
全く存在しない事実を基に彼らは争いを始める。
「なァにがB組じゃァ!」
「ナンボのモンじゃァ!」
「じゃかましいわボケェ!」
「殺すぞゴラァ!」
「ちょっとぉーーっ! あんたたちなんの話してんのーっ⁉」
希咲の声も虚しくついに本格的な殴り合いが勃発した。
「び、弥堂っ! はやく止めに……!」
「なんだ? いつもは文句を言うくせにこんな時ばかり俺の暴力を当てにするのか?」
「私だって行くわよ!」
「待ってください二人とも。まずは準備運動をしてからじゃないと思わぬケガをしてしまいます。ね? 委員長?」
「うむ。準備運動は大事だって体育の先生が言ってたぞ!」
「それもそうですね……」
「ちょっと! そんな悠長な……」
五清さんに急かされるが、弥堂がこれ見よがしにダラダラと大きく腕を上げて背伸びの運動を始める。
学園の平和の一大事にこうして風紀委員たちがモタモタしている間にケンカはさらに激化しており、何故か触発された関係のない不良たちもあちこちで殴り合いを始めていた。
場はもうめちゃくちゃだ。
「――ねぇ! やめろって言ってんでしょ⁉」
希咲は必死に鮫島くんたちのケンカを止めようとしている。
そこへ――
「――女がジャマすんじゃねえよ! 揉むぞコラァ!」
暴漢と化した不良が両手をワキワキとさせながら希咲に掴みかかろうとしてくる。
「触んじゃねーわよボケェ!」
希咲は反射的に暴漢男子の顔面に靴裏を叩きこんだ。
カウンター気味に入ったその蹴りは一撃で彼の意識を奪い、不要はもんどりうって倒れる。
「あ、しまった――」
ついやってしまったと後悔するも遅く――
「おぉ! 希咲がやったぞ!」
「オレらも負けてらんねェな!」
同じクラスの鮫島くんと須藤くんは盛り上がり、さらに嬉々として他のクラスの男子に襲いかかる。
「あ、ちょっと! ケンカすんなって言ってんじゃん!」
希咲が彼らの背に説得力のない声をかけた時――
「ジャマじゃああああっ!」
この辺り一帯に轟くような大声が鳴り響いた。
あまりの声量に喧噪はピタリと止む。
すると、カランコロンという音ともに、大きな人影がいくつか、この場へと歩いてきた。
すごく嫌な予感がしながら、他に見るべきものもないので、希咲も仕方なくそちらへ顔を向ける。
そこには学ランを着こんだ数名の男たちが居た。
彼らは何故か下駄を履いている。
「ま、またなんか来たぁーーっ⁉」
希咲は思わず頭を抱える。
「オウコラァ! このジャリどもがぁ!」
「誰に断ってここでハシャイでんだゴラァ!」
学ラン男子たちはこの場の全員に向けて威嚇の鳴き声をあげてきた。
すると、叫ぶ彼の一歩前に一際身体の大きな学ランが出た。
「あ、あいつは……っ⁉」
「へ? 知ってんの?」
須藤くんが驚愕していたので希咲は一応聞いてあげた。
「あ、あぁ、あの人は山南さんだ……っ!」
「やまなみ、って……」
聞いたことある名前だと希咲はその山南と呼ばれた男へ視線を戻す。
2m近いのではと思われる巨体。
何故かあちこちボロボロにほつれている学ラン。
足元には下駄で、頭には制帽を乗っけている。
そしてその顔はやたらと老けていてとても高校生に見えない。
「そうだ。山南さん。この学園の番長だ……!」
あんまりなプロフィール紹介に希咲は白目を剥きそうになる。
確かに聞いたことはある。
この学園の不良には派閥が大きく二つある。
一つは“佐城派”と呼ばれる大きなグループ。
そしてそれに対抗するのがこの山南という男が仕切る“山南派”だ。
この学園の制服は基本ブレザーだ。
色々とバリエーションがあり制服の組み合わせには自由がある。
しかし、その選択できるアイテムの中に学ランはない。
希咲自身目にするのは初めてだった。
しかし風の噂では聞いていた。
この“山南派”というのは学ランをユニフォームのようにしていると。
ただ1年以上もこの学園に通っていて一度もそれを目にしたことがないのには理由がある。
彼らは普段の学園生活はちゃんと指定制服に身を包んで過ごしていて、放課後になるとこうしてわざわざ学ランに着替えて不良活動に勤しむのだと。
そんなのは冗談だと思っていたので、実際に目にしたことで希咲はポカーンとしてしまう。
「ば、番長って……、そんなのこの世にいたんだ……」
なんだかもう色々と色々だったので、何も言えなくなってしまう。
たまにテレビでやっている懐かしのアニメ特集的なものでしか見たことのないオールドファッションに慄いた。
「や、やべえ……」
「山南だぜ……」
「佐城さんたちいねえのに勝てるわけねえ……」
彼らは“佐城派”なのか。
一部の不良たちは番長の威容に怖れを抱いていた。
「な、なんなのよもう……」
呆然と呟いてから希咲は段々とイライラしてくる。
何故弥堂と対決しようとしたのに、風紀委員の内ゲバが始まったり、不良たちのケンカに巻き込まれなければならないのかと。
こんな意味のわからない混乱を上手に治められるわけがない。
もういっそ邪魔するヤツは全員蹴り倒して校門の外に投げ捨ててしまおうか。
そんな弥堂的思考に陥りかけたその時――
「あぁーーーっ!」
先程の野太い声に負けない音量でソプラノボイスが響いた。
風紀委員のロリ委員長が番長を指差している。
「やまなみー!」
「む……?」
名前を呼ばれた番長は制帽のツバを少し押し上げてジロリとノエル委員長を見遣る。
「オマエまたそんなコスプレしてー!」
「ふんっ」
どうも知らない仲ではないようで、ノエル委員長は男の巨体に怯むことなく校則違反を指摘した。
番長はつまらなそうに鼻を鳴らし、指を二本立てた手をスッと横に伸ばす。
するとサササっと脇に居た男が寄ってきて、番長の手の近くにタバコを差し出した。
番長が一本タバコを咥えるとすぐに別の学ランの男が火を点ける。
番長はこれみよがしな態度で煙草を吸い込み、プフーっと豪快に煙を引き出した。
「あー! いけないんだぞー!」
学園の風紀を守るお子さま委員長は指を差して「いーけないんだ」をした。
すると、学ランの男たちはニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべた。
馬鹿にされたと受け取ったのか、ノエル委員長はムッとする。
「オマエたちみんなつかまえちゃうぞ!」
風紀委員会の長の逮捕宣言に学ラン男たちはゴキリと首を鳴らした。
「むんッ……!」
番長は気合いの声を発すると勢いよく煙草を吸い込む。
途轍もない肺活量により、煙草は一瞬で根元まで燃え尽きた。
番長はその煙草をスッと横に出すと、すかさず子分が回収して携帯灰皿に仕舞う。
ノエルたんはそれを挑発行為と見做してプンプンだ。
「もう許さないからなー!」
そこでようやく番長は口を開く。
「子供が無理をするな。俺たちにおいつけるわけがない」
「なんだとー! ノエル足が速くなったって今日先生にホメてもらったんだからなー!」
「ならば見せてもらおうか……!」
番長がギラリと目を光らせると、学ラン軍団は一斉に下駄を脱いで手に持ち走り出した。
「あっ⁉ 逃げるのか⁉」
「捕まえてみるがいい! 子供には無理だろうがな!」
「なにをー⁉ まてー!」
番長に煽られてノエルたんは走り出す。
その時点で学ランたちは先行しているはずだが、ほぼその場で足踏みしているだけの速度で走っており、ノエル委員長との距離の差は大して広がっていない。
「子供になど捕まるバカがいるか!」
「まてー!」
口ぶりと顔の迫力とは裏腹に、彼らは子供に配慮したジョギングでタッタッタッと逃げていく。
「委員長まってくださーい!」
「あ……⁉ ちょっと……!」
ニコニコしながら委員長の後を筧が追いかけていき、子供に何かあってはいけないと五清も続く。
さらに残った風紀委員たちもその後を追いかけて行った。
「…………」
「…………」
嵐のように現れたロリと番長が嵐のように過ぎていき、残された者たちの間にはシンと静寂が。
彼女らや彼らが何をしに来たのかがわかる者は一人もいない。
ケンカをしていた者たちも気まずげに顔を見合わせ、少し距離を置いてまた野次馬に戻っていく。
すると中心部には弥堂と希咲の二人が。
お互いに何と声をかけていいかわからずに、少しの間無言の時間が過ぎた。
そして、いい加減堪えきれなくなったのか、七海ちゃんはぷちっとキレた。
「ねぇーーっ! なんなの⁉」
「なにがだよ」
弥堂はさっきの番長よりも煩い希咲の声に迷惑そうにした。
「なんですぐイミわかんないことになんの⁉」
「俺のせいじゃないだろ」
「あんたの友達でしょ⁉」
「友達じゃねえよ」
何を言っていいかわからなかったので、二人はとりあえずケンカを始めた。
「いっつもこうじゃん! なんであんたと絡むといつもこうなんの⁉」
「こっちの台詞だ。お前が絡んでくるといちいちメンドくせえんだよ」
「絶対あたしじゃないし! あんたのせいだから!」
「お前だバカが」
「お前ってゆーな! バカはお前だバカ!」
「お前も言ってんじゃねえか!」
「うっさい! あんた愛苗のこと知ってんだろ⁉ 言えーっ!」
「知らねえっつってんだろ! しつけえんだよ!」
二人ともに今日のこの場がどういったものだったのかを忘れ、しばらく衆人環視の中で醜く罵り合った。
あまりの罵詈雑言を耳にした群衆は二人を止めようかとも思ったが、ここに居る誰しもがさっきまで醜く争っていたので口に出来る言葉はなかった。
この私立美景台学園高校に通う生徒たちは、一般生徒といえどもその民度は低く、学園の風紀など何一つ守られてはいなかった。
「マジムカつくっ!」
「うるせえ黙れっ!」
学園の敷地内から怒鳴り声が聴こえてくるのは日常茶飯事で、ご近所の住民の方々もいちいち通報したりすることはなかった。
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