「おられます」は失礼?

Column1 「おられました」について

 今回は「おられました」という表現について取り上げてみようと思います。


     ☆


 ――先生は、大変喜んでおられました。


 今回のテーマは「おられる」です。

 さて、「おられる」は正しい敬語なのか否か。これは読者の方に質問をすると、答えが二つに割れる敬語です。


「おられる」は、動詞「おる(居る)」の未然形に尊敬・可能の助動詞「れる」をくっつけた作りになっており、「尊敬語」として使われています。


 しかし「おる」は元々謙譲語。そのため「謙譲語の『おる』に、尊敬語の『れる』を付けて尊敬語表現にするのは誤りだ」という意見があるのです。


 一方で、人や動物などを表わす言葉として「いる」に可能の助詞「れる」がついて、「いられる」から「おられる」と言う尊敬語の用法も生まれたと考えられているから、「おられる」として使ってよいと考える人たちもいます。


 これは難しい問題です。


 辞書や敬語の本によって、「おられる」を容認するものもあれば、認めていないものもあります。


 私が調べた限りですが、『明鏡国語辞典 第三版』『三省堂国語辞典 第八版』『新明解国語辞典 第八版』には「おられる」の記載はありましたが、『岩波国語辞典 第八版』『新選国語辞典 第十版』にはありませんでした。


 ただ、尊敬表現である「いらっしゃる」が文章のなかでなじまない場合は、「おられる」が重宝されることも事実ですし、明治以降に尊敬語として広まったそうなので、それなりに歴史もあります。


 よって、上記のことを理解した上で「おられる」を使用する分には、問題ないのではないか、と筆者は考えています。


 ちなみに、『三省堂国語辞典』の辞書編集者である飯間浩明氏のTwitter(2016年8月18日投稿)に、下記のようなことが記載されていたので引用いたします。


***


「おる」は、明治以降には丁重(丁寧+礼儀正しい)表現として発達しました。「母はおります」は単なる丁重表現(謙譲語に近い)ですが、「先生はおられますか」は丁重+尊敬の表現です。


***


 上記の内容を読む限り、飯間氏は「おられる」は「使ってよい尊敬語表現」と考えていることが分かります。

 人によって受け入れる・受け入れないの考え方はあると思いますが、相手のことを思いやって使っているのであれば、特に誤りとすべき敬語表現ではないのではないでしょうか。


 参考までに。

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