06 沈んだ花と砂糖漬けの月

 今日はピンクムーンとやららしい。だけど、夜空は私の心を映したみたいに暗くどこかどんよりしている。

 淡く桃色に色づいているはずの満月は見当たらず、それでも直感を頼りに見えない月の位置を探る。ほんのりと霞がかった場所、そこにピンクムーンがあるのかもしれない。

 そう思うとなんだか宝探しみたいで心が弾んだ。……所詮は気休めだって、嫌と言うほど理解してるけれど。

 ――本日はピンクムーンです 恋愛運が大きく上がって 彼から連絡がくるでしょう

 そんなテレビの煽り文句を信じた私が馬鹿だったかもしれない。見えない月を眺めては、ピピッと鳴ったスマートフォンに目線を落とす。

 あ。あの人だ。

 期待した相手からの着信。だけれど、見てはいけないと直感が告げる。それが心の重荷になっていると、薄々感じていたからだ。

 ――先輩、先輩! 俺、あの子と付き合うことになったんすよ。先輩のおかげっす

 ――そう。おめでとう、良かったね

 心の半分はこもってるんだから、嘘では無いよね? そう言い聞かせてなんとか文面を送りつけた私は、それまで『何か』で満たされていたはずなのに、すぅっと静かに無くなっていくのを感じた。

 相変わらず月は見えない。

 ねえ。私の気持ちホンネを知ったらキミは、いったいどんな顔をしただろうね?

 それを考えると楽しくて愉しくて堪らないんだ。

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