03 三月終日
「今年もキレーに咲いたじゃん。写メ、一枚くらい撮っておこうか」
近所のコンビニと住宅地を越えて、松が大半を占める林の先――老木が多い桜並木の中に、ちらほらと若木も見える。老いた桜も、若い桜も、年齢に関係なく咲き誇る様子に、今年も無事に春を迎えたことを実感するのだ。
桜の撮影に夢中になっていると、コロコロと足下にサッカーボールが転がってきたではないか。運動場が近いのもあるが、簡単な遊具が併設されて遊び場にもなっている。転がってきたボールを返して、手を振る。すると。
「ありがとう、おにーちゃん!」
「おねーちゃんだけどな! ま、子供には紛らわしいか」
近所だからと洒落れるわけもなく、パーカーにジーンズ姿と非常ラフな支度で出てきた。女らしい凹凸があるシルエットでも無いのだ、性差に無知な子供には分かりづらいだろう。
曇天ながらに穏やかに過ぎていきそうな、三月の最後の日だった。
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