人生で最もお金を使った年
あーこが、馬を大事しにしてくれる心優しいたった一人のオーナーの馬だったら、それが一番幸せだったことと思います。
でも、YouTubeで収益化できたのは、ローレルクラブの馬だったことも大きいと思います。多くの方々が、あーこのオーナーだった、その後を心配してくれていた、私の努力だけでは、到底なし得なかったことです。
あーこが歩んできた道の途中で出会った人たちが、あーこを救ってくれたのです。
あーこへの応援を訴え、YouTubeで収益化した今となっては、もう退路を断たれた、何が何でもあーこを維持し、幸せな馬にしなければならない、その姿を応援してくれた皆さんに見せ続けなければならない、私の乗馬ライフは、なぜか、常に「must」になる運命のようです。
そして、この収益化で、夫も納得……というか、もう引けないだろ? という諦めかも知れませんが、理解して、応援してくれるようになりました。
一時期は、もうこれ以上重荷を背負う必要はない、レッスン馬に戻してもいいのでは? と言っていたまこさんも、再び力を貸してくれるようになりました。
あーこを維持するにあたって。
大きな問題が2つありました。
一つは、シェルとあーこがレンタル自馬であったこと。クラブを出てゆくには、この2頭を買い取らなければなりません。
ところが、大きな問題は、この2頭の値段が決められていなかったことです。出て行くとなると、足元を見られて、ふっかけられる危険性もあったわけです。
今後を思えば、高額提示されると困ります。いや、その前に、売りませんよ、と言われる可能性もありました。
レンタルの自馬の中には、高齢の馬もいれば全日本で活躍した馬もいて、当然、同じ値段とはいかないでしょう。しかし、当初はただ同然で譲り受けたと思われる引退競走馬で、しかも、各自で調教してきた、もしくは別途調教代を払ってきている馬なのです。
馬の能力に合わせてそっくり値段を設定されても納得できません。
そこが曖昧なのが大問題でした。
あーこは「モノにならない馬ですから変えます」と言われた馬です。
それを、私たちで何とかしてきて、獣医さんにも診てもらい、治療にもお金を費やして、やっとここまでに復活させた馬です。
が、いやいや、元々いいレッスン馬でしたよ、と言われてしまえばそれまでです。実際、私も持つ時にあーこの状態を知らないふりをしましたし。
シェルは3歳から私が乗ってきて、ほとんど放置されてきた今までの経緯を考えれば、なんで買い取るのに金を払わなきゃならないんだ! くらいの思いがありました。
でも、この馬はL2で優勝経験のある馬ですから、なんて言われてふっかけられたら? と心配でした。
それは私が頑張ってきたからだろう! と激怒したところで、では、他の人に売ります、この肩書きがあれば、あなたよりも高く買い取ってくれる人はいますから、などと言われたらおしまいです。
今まで「自馬」と呼んできた馬を、値上げの説明会の時には「お貸ししている馬」と言われたのも、不安しかありませんでした。
今後のことを考えれば、クラブに残る・残らないに関わらず、その馬を手放さないのであれば、一致団結して交渉して買い取るべきと思いました。
しかし、多くの人たちは残ることに決めていたようで、クラブとの揉め事を好まず、現状維持を望んだようです。
結局、ここでも私は孤立してしまい、我が道を行くしかありませんでした。
もう一つの難題は、引っ越し先を見つけることです。
確実に馬を買い取れるという保証のないまま、クラブを探さなくてはなりません。
これが、思いのほか大変でした。
最初、もう出ていく! と言っていた人たちが、結局、クラブに残ったのは、引っ越し先を見つけるのが大変だったからだと思います。
まこさんと二人、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり……。
しかし、2頭分の馬房が空いているクラブなど、なかなか見つかりませんでした。
大問題は、私に車がない、ってことです。
車がなければ、交通機関がきちんとある場所でなければなりません。
あったとしても、1日に3本では困ります。行くだけで、3時間も困ります。
さらに、どこでもいい、引き取ってくれさえすれば……ってわけでもない、可能な限り、私の魂の色に合致するクラブでなければなりません。
でなければ、わざわざクラブを変える必要がないからです。
今までのクラブが特別に安かったので、預託料の節約にはほとんどならない、むしろ、もっと自分が納得できるクラブに移りたかったのです。
特に、どんなに施設が立派でも、放牧ができないクラブはその時点で対象外です。
何箇所も何箇所も見に行って……結局、大きな決断をすることになりました。
30年間、ペーパードライバーでしたが。
車を買うしかない。
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