見かけ通りじゃない?
あーこを持った当初、私は月に10回から15回ほど、あーこに乗っていました。
あーこの体力的なものやら、体の状態やらで、あまり時間は長くありませんが、回数はこなしていました。
馬装で眠りそうになる、乗ろうとしたら、動いて乗せない、乗っても脚に全く反応しない……駈歩どころか、速歩さえ出ない、そんな騎乗を繰り返し、少しでもできたら、よしよし、それでもう大丈夫だよ、と繰り返し。
シェルに乗った後、ナイターになることもありました。
しかし、Fさんがオーナーに加わってからは、下乗り程度に乗るくらいになり、騎乗回数は目に見えて減っていきました。
Fさんが離れた後も、騎乗回数=経済的な援助になる、ということで、まこさんが張り切って乗りにきてくれたおかげで、私の騎乗回数は、週1回、月に5回乗れればいいところか? という状態でした。
つまり、共同馬主にお任せしていて、あーこにはほぼ乗っていない、というのが現状でした。
その頃、シェルが絶好調で、私も乗るのが楽しくて仕方がない時期でした。レッスンも入れて、上のクラスへの足がかりを作りたいと思っていた頃でした。
なので、ますます、あーこのことは、もうどうでもいいと思っているんじゃないか? と、周りには思われていたのです。
張り切りすぎて、シェルが故障してしまい、がっかりすることになってしまいましたが。
当時、1日に何鞍も乗るのが会員さんの中でのブームでした。
普段はレッスン馬に乗って、たまにあーこで個人レッスンを受ける、という共同馬主の形としてはありかな? とも思っていて、私の考えに理解を示してくれそうな人を物色し、持ちかけてみようか? と考えていました。
ただ、この方法で、本当にあーこが維持できるかどうかは、やってみなければわかりませんでしたが。
まこさんはまこさんで、自分がいなくなった後を引き継げる人を探していました。でも、流石にクラブの外からこのクラブに来て、いきなり自分の馬を持ってくれないか? は厳しそうでした。
そもそも、まこさんは、あーこがレッスン馬に戻っても問題ないのではないか? と思っていたので、クラブの値上げの話を聞いた時、2頭を維持するのは、絶対に無理、これで私もあーこをお返しする決心がつくだろう、自分が離れていく今、その方がいいに違いない、と思ったかも知れません。
長い間、乗馬を続けてきて、今までももう何頭もの馬を見送ってきた私です。
今更、私が、事情を知らない駄々っ子のようにジタバタと、ヤダヤダ! なんて、やらかすとは、誰も思っていなかったに違いありません。
もうどうでもいい馬じゃなかったの? もう十分じゃないの?
というのが、周りの反応でした。
多くの人が、私にあーこをレッスン馬に戻した方がいい、返すべきだよ、とアドバイスをくれました。
私にとって一番大事な馬はシェルで、あーこはそれほど重要ではないように見えていたので、私が単に意地を張っているだけ、と思われたようです。
中でも、最も困ったのが、私の大道楽に理解を示して、経済的にほとんどを担ってくれていた夫の反対です。
私があーこを持ったのはかわいそうだからで、別に乗りたいわけでもない、むしろ、他人に乗せて満足しているだけじゃないか、これ以上は、ビタ一文も出せない、シェルだけ可愛がれば、もう十分だろう? というのです。
そう見えたかも知れないけれど、見かけ通りじゃない!
誰も私を理解してくれないのか……。
不足分を補うために、アルバイトをする自分の姿を思い浮かべてみました。でも、すぐに破綻しました。
というのも、私は、シェルとあーこの馬房掃除のために毎日クラブに通っていて、しかも、それが自転車で片道40分以上かけていたので、体力的にも時間的にも、バイトで稼ぐのは無理、長くは続かないと思いました。
24時間営業のスーパーで買い物のたびに、ここでパートタイマーとして働こうか? とも思いましたが、馬臭いままでは働けない、シャワーを浴びて出直しだ、などと考えて、やはり無理だ、と諦めました。
働ける時間は真夜中だけしかありません。それも、自転車で通う? やはり、夫に許可を得られそうにありません。体力的にも自信がありません。
私に残された道は、カクヨムでロイヤリティを得るか、YouTubeで収益を得るか、しかありませんでした。
すでに生活の一部になっている、ルーティンになっていることで、しかも、もう何年も続けていますから、持続する自信があります。
YouTubeの馬関連動画で収益を得られれば、馬で稼ぐことができる、だから、応援してほしい、と夫にアピールできる、これしか方法はありませんでした。
そして、収益化できたことで、微々たる金額でも馬で収益を上げることができた、まだまだ可能性がある、と訴えて、理解を得ることができました。
やはり、家族の理解がなければ、時間もお金も使う馬の維持は厳しいのです。
自分の感情のままの行為が許されると思い込み、金食い虫で当たり前の妻……でないことを証明したことで、あーこを持ち続けることに夫は納得してくれました。
後々、その理解を、夫は何回か後悔しましたが。
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