9. これ、どういう状況?
時系列入り乱れますが、
本話からゴッドトルトを発ったお話です。
順序の整理はいつかきっとやります。
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レブウェールから南に向かうと、ウリザリス都市連合国がある。近隣国に対抗するために、いくつもの小国が連合を組んだ形だ。小国というよりは都市国家と言った方がいいかもしれないね。多くの国は中核となる都市がひとつだけ。都市長が国内の行政を取り仕切っているんだ。
中立国ラフレスは都市国家群に紛れるようにぽつんと存在している。一応、連合とは距離を置く、独立国みたい。
他の都市国家群と比べてもラフレスは小さい。これといった産業もなく、住人は全員冒険者ギルドの関係者って話だ。そうなると、食糧生産とかどうなってるんだろうと思うけど、その辺りのことは詳しくわからない。
ともかく、いくつもの都市国家を越えて、僕らはラフレスまでやってきた。国境沿いには長大な壁が広がっていて、その一部に入国のためのゲートがある。ゲートの前には衛士らしき男性が二人。そのうち、年嵩の方が、僕らに声を掛けてきた。
「ここから先は中立国ラフレスだよ。念のために聞くけど、冒険者ギルドの本部への訪問かな?」
「はい、そうです。何か手続きが必要ですか?」
「手続きってほどでもないけど、ちょっとした説明があるよ。ラフレスへと出入りできる門は幾つかあるけど、基本的に入った場所からしか出られないから気をつけてね」
「そうなんですか?」
「それぞれ違う国につながってるからね」
どうやら、近隣国の住人がラフレスを通って移動することを制限するための決まりみたい。連合国といっても、別々の国だからね。自由に移住したりはできないようになってるんだって。まあ、冒険者にはあまり関係の無いことだけど。
「それにしても、君たちみたいな子供がくるなんて珍しいなぁ。ここに来るのは大概、厳ついオジサンばかりなんだよね。山賊の親玉じゃないのって顔している人も多いよ。いや、まあほとんどはまっとうな冒険者なんだけどね」
ちょっとした説明っていうのはもう終わったのかな?
年嵩の衛士は、ニコニコと笑いながら、あまり関係がなさそうな話をぺらぺらと喋っている。どうしようかと思っていたら、見かねた同僚が止めてくれた。
「おやっさん、そのくらいにしときなって。その子ら困ってるよ」
「ああ、すまないね。暇なもんでついつい……」
年嵩衛士が苦笑いを浮かべる。確かに、出入りする人は少ないみたい。だって、僕らの他に誰もいないもの。
冒険者ギルドの本部があるのに……って思ったけど、そんなものかもね。依頼がある人も、普通はその地方のギルドを頼る。本部まで来る用事はない。産業がないんじゃ商人もこないし、やってくるのはきっと冒険者くらいだ。
衛士たちに見送られて、門をくぐる。ゲートっていうくらいだから、何か特殊なものなのかと思ったけど、ごく普通の門だった。
そして、門の内側に広がるのは街並みではなく、石の壁と床。どうやら建物の中みたい。まっすぐ長い通路が続いている。少し先には小さな部屋があるみたいだけど、それ以外には何もない。
「このまま進めばいいの?」
「おじさんたちはそう言ってたよね」
人もいないし、物もない。あまりにも殺風景、みんな戸惑っている。
「ここが街なの?」
『いや、ここはまだゲートのようじゃぞ』
「え、ゲート? どういうこと?」
『ほら、この先に部屋があるじゃろ。あそこに転移陣が描かれておる』
なるほど。ゲートって言うのは転移陣のことだったのか。それで街まで転移するんだね。
「なんで直接移動できないようにしてるんだろ?」
『さてなぁ』
ガルナに尋ねてみても首を傾げるばかり。それも当然か。この本部ができたのも、ガルナが邪神扱いされはじめたあとのことらしいからね。
まあいいか。いつまでもここに居ても仕方がないし、移動しよう。
転移陣のある部屋へと進む。本当にこじんまりとした部屋で、たぶん四畳半もないくらい。床には薄らと光る白い線で、不思議な文様が刻まれている。これが転移陣か。
僕らが部屋に足を踏み入れると、転移陣の光が強くなった。と、同時にガシャンと部屋の入り口が閉まる。
「罠か!?」
『落ち着くのじゃ。転移中に陣から出ると危険じゃからの。安全確保のための仕組みじゃろ。このまま待っておればよい』
警戒するローウェルを諭すように、ガルナが説明する。確かに、体の半分だけ転移するなんてことになったら大変だもんね。
なるほどと頷いて、しばらく待つ。すると転移陣が青く輝きはじめた。空間が揺らぐ。転移がはじまったんだと思ったときには、僕らは別の場所に立っていた。
「……え、これって?」
目の前には幾つもの鉄の棒。いわゆる鉄格子というヤツだ。左右は石の壁、振り返ってみても石の壁。鉄格子の一部が扉になっているみたいだけど、鍵がかかっているみたい。いくらがちゃがちゃやっても開かない。
「閉じ込められちゃったの?」
ハルファが不安げに呟く。否定してあげたいところだけど、ちょっと無理だ。だって、どう見てもここは牢獄なんだもの。
『このブーブーうるさいのは何なんだ?』
シロルはアラームが気になるみたい。この場所に転移してから、ずっと鳴り続けてるんだよね。不安をかき立てるような音が。
これ、いったい、どういう状況なんだろう。
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