46. 勝利を決めたのは
ゴーレムの素材か。パンドラギフトから出すなら、素材そのものよりもすでに加工されているものの方が手っ取り早いよね。ゴーレムにするなら……そうだ、かっこいいロボットにしよう!
ロボット出ろと念じながら、パンドラギフトを開封する。パカンと開いた箱の口から、何か飛び出してきた。それはみるみる巨大化していく。真下からだと、全貌が窺えないほどに大きい。もしかすると、さっきのアイスゴーレムよりも巨大かもしれない。
表面は土色。甲冑を装備して武人のような姿をしている。強そうだし、カッコイイといえばカッコイイ。だけど、これは――……
「埴輪だ!!」
おかしい! ロボットを出すつもりだったのに、なんで埴輪になっちゃうの!?
『あはははは、何で埴輪! あはは』
廉君が巨大埴輪を見て笑い転げている。そこまで笑わなくてもいいのに。
『何というか……いつものじゃの。まあ、お主らしいが』
ガルナは呆れ気味だ。いつも通りと言われるとちょっぴり不服だけど、反論するには分が悪いかな。
神様二人の反応はいまいちだけど、そばで見ていたハルファとスピラは興奮気味だ。
「凄い! 強そうなゴーレムだ!」
「これならきっと勝てるよ!」
僕がいつも作り出すゴーレムの強化版っていう見た目だから、素直に受け入れられたみたい。士気向上にも一役買っている。そういう意味では埴輪だったのは悪くないのかも。
まあ、見た目は気にしても仕方がない。この大きさなら、強さも申し分ないはず。早速〈クリエイトゴーレム〉でゴーレム化しよう。
「おお、すごい! マナがするっと通る!」
相性の問題か。それとも、元の世界の素材だからか。かなり効率的にマナを注ぐことができた。これならしっかりと戦えるはずだ。
「行け、埴輪戦士!」
「ゴォオオ!」
僕の指示に従い、埴輪戦士が動き出した。ドッスンと歩くたびに地が揺れる。とても強そうだ。
『ぬはは、なかなかの威風!』
『だが、土を使うとは愚の骨頂。まだ、我らの力を理解しておらぬとは』
埴輪戦士の接近に気がついた石鎧たちが、迎え撃つ構えをとった。声に驚きはあるけど、危機感はない。僕が今まで作ったゴーレムと同じだと思っているんだろう。素材も見た目もほとんど変わらないものね。でも、その油断が命取りだ。
埴輪戦士が拳を振り上げる。そのときになって、ようやく石鎧たちは自分たちの過ちに気がついたみたい。
『ば、馬鹿な!? 何故、我らの力が及ばぬ? ただの土ではないのか?』
『違う! 違うぞ、ドムダン! これは……こやつはこの世界の理から外れている!』
『なんと!?』
と言っている間に、埴輪戦士の拳が石鎧に襲いかかった。石鎧もかなり巨大化しているとはいえ、埴輪戦士の方が二回りくらい大きい。大質量で殴りかかられた石鎧はメキメキと音を立てて外殻の一部が崩れ落ちた。
『ぬおああ!』
『ドムダン! 下がるのだ!』
『……ぐ、だめだ、ダムロス! こやつの攻撃は一人では受けきれん。二人で捌かねば!』
石鎧たちは、力を合わせて埴輪戦士の攻撃に対抗することにしたみたい。だけど、アイツらを攻撃しているのは、埴輪戦士だけじゃない。
『おお、今なら攻撃し放題だぞ!』
「斬る!」
シロルの雷撃が、石鎧の頭上に落ちる。その足下ではローウェルが何度も剣を振るっていた。そのたびに、石の鎧が削り取られていく。
『ぬう、これは……! こんなことが……銀の力が敗れるなど……』
『理から外れたものを新たに生み出す力……? まるで創世の力ではないか!?』
石鎧たちにはすでに回復に回す余力がないみたい。埴輪戦士に押し潰されないようにするのが精一杯だ。シロルとローウェルの攻勢に、石鎧は確実に削られていく。そしてついにその硬い鎧が完全に砕けた。そうなれば、埴輪戦士の拳に抵抗することなどできない。
『馬鹿な……馬鹿なぁ!?』
『ありえぬ……ユーダス様!』
ズン。重々しい音を立てて、埴輪戦士の拳が地面についた。当然だけど、その下にいた存在はぺちゃんこだ。普通の人間なら生きてはいないはず。だけど、アイツらは銀の力を宿した存在だ。油断はできない。
『ぬわぁ! 何か出てきたぞ! 銀色のやつだ!』
シロルが大声を上げた。どうやら、埴輪戦士の拳の下から何かが這い出してきたみたい。きっと、寄生していた銀の力だ。
「逃がさないで!」
指示を出しながら僕も走る。石鎧の外に出たなら、浄化の力が有効だ。僕がクリーンをかければ片がつくはず。
だけど、僕が駆けつけるまでもなかったみたい。
「さあ、囲め囲め!」
「ようやく私たちの出番だね」
「真打ち登場」
「ばっちぃのを綺麗にするなら任せて!」
シロルの足下から飛び出してきたプチゴーレムズが、逃げだそうとした銀のうねうねを取り囲んだ。そして、クリーンが付与された木切れを向ける。
『何故だ……ユーダス様に……報告……』
銀の異形は喚き散らすように何か断片的な言葉を発していたけれど、プチゴーレムたちは気にすることもなくクリーンを一斉放射した。浄化の光を受けた異形はビクリと身を震わすと溶けるように消えていった。エネルギーを使い果たしていたのか、黒化する余力もなかったみたいだ。
「お掃除終了!」
ピノがぴょんと飛び上がりながら宣言する。なんだか美味しいところを持っていかれた気がするけど……とにかく、僕らの勝利だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます