30. お昼ご飯を食べながら
どうにか気を持ち直したバディスさんから依頼の詳細を聞いてから、臨時ギルドを出た。これで用事は済んだから拠点に戻ろう。拠点なんて言うと大袈裟に聞こえるけど、僕がパンドラギフトで出した長屋の一室だ。広くはないけど、中でマジックハウスを展開するための部屋だから別段困らない。
長屋は前世で言うところのアパートみたいな建物だ。この世界だとちょっと異質だけど、住民には特に問題なく受け入れられている。というか、かなり好評だ。
と言うのも、全部屋家具付きなんだ。しかも、こちらの水準では高級品って扱いになるみたい。まあ、この世界の普通のベッドはとてもふかふかとは言えないもんね。やっぱりベッドはふかふかに限るよ!
「ただいま~」
「あ、お帰りトルト! シロルも」
『ただいま……僕はもうお腹ペコペコだぞ……』
マジックハウスに入ると、ハルファが迎えてくれた。他のみんなも戻っているみたい。シロルの空腹が限界なので、みんなで食堂に向かい、食べながら情報共有をすることになった。ちなみにお昼ご飯はシロルの要望を聞き入れてカレー。スパイスの調合はベエーレさんのお店とほとんど変わらないけど、家で食べると自由にトッピングできるからいいよね。
『ハンバーグだ! 僕はハンバーグを入れるぞ!』
「シロルちゃんはいつもそれだね」
『スピラはいつも草だな!』
「草って言うのはやめない?」
僕とハルファ、ローウェルはトッピングを変えて楽しむんだけど、シロルとスピラはだいたいいつも同じものだ。シロルはハンバーグ+きまぐれで肉や卵。スピラはほうれん草みたいな野菜を好んで入れる。
ちなみに、アレンやピノたち、プチゴーレムズもこだわりはないかな。何でもよく食べるよ。今は、外で見張りと連絡役をやってもらっているから、ここにはいないけど。
よく使うトッピング類は下準備をした状態で収納リングに入れてある。こうしておくと、すぐに食べられて便利なんだ。うちは食いしん坊が多いからね。
「それで、バディスの用件はなんだったんだ?」
食べながら話すつもりだったんだけど……実際に話が始まったのは、食べ終わってからひと息吐いた後だった。ローウェルが切り出してくれなかったら、もうしばらくのんびりしてたかもしれない。
「住居を増やして欲しいって。住民が増えるみたい」
「またか。まあ散り散りなっていたモルブデン組が集まっているようだから無理もないが。トルトはいいのか? パンドラギフトをポンポンと使っているようだが」
「大丈夫だよ! たくさん手に入ったし!」
この一週間くらい、例のダンジョンを攻略し続けた。行動を最適化し、最短ルートで駆け抜けると、およそ二時間ちょっとで最下層の宝部屋までたどり着く。そして今のところ、外れ宝箱からは全てパンドラギフトをゲットしてるんだ。おかげで30個以上のパンドラギフトを手に入れた。建物を建てるのに使っちゃったから、もうあまり残ってないけどね。でも、ダンジョンに潜ればいくらでも確保できる。
「本当に凄いよね、パンドラギフトって! あんな箱から家が建つんだもん」
ハルファがニヒヒと笑いながらパンドラギフトを絶賛する。
いや、本当にその通りだよね。ダンジョンは村から少し離れているから、利便性を高めるようなアイテムが欲しいなと思って使ってみたんだけど、家が建つとは思わなかったよ。
ちなみにパンドラギフトから出た建物は土台もしっかりとしている。安心といえば安心だけど、そのせいで収納リングには収納できないし、当然、動かすことも出来ない。なので、迂闊な場所で建てると大変なことになるんだ。町長の家の隣にカレー屋さんができたり、とかね。まあ、さすがにもう同じミスはしないけど。
『それで、いつまでここにいるつもりなのじゃ? 教団を調べるのではなかったのか?』
食卓の上に飛び乗って、ガルナが僕を見上げる。まあ、ガルナからすれば、エルド・カルディア教団の動向は気になるだろうね。もちろん、僕も気にしてはいるんだけど。
「それなんだけど、このままここで待ってれば、何らかの反応があるんじゃないかな?」
『何?』
そもそも、この街のダンジョンのベースを作ったのは、教団の関係者らしき人物だ。その人物はダンジョンを作ったところで死んでしまった。だから、当然、教団に戻ってはいないわけだ。ダンジョン作成の指示を出したであろう教団幹部からすれば、こちらの状況は気になるんじゃないかな。
それに加えて、この街の噂はそろそろアルビローダに広く伝わっているはずだ。移住者は大半がモルブデン組の関係者とはいえ、多くの人間が移動するわけだから、気づかれないはずがない。
バンデルト組と敵対する住人が大きな街を作ってるんだ。協力関係にある教団としても傍観はできないはず。
『なるほど。たしかに、その可能性は高そうじゃ。敵が待ち受ける拠点に潜入するより、おびき寄せた方が危険は少ない。なかなかの策士じゃな!』
僕の推測を話すと、ガルナは納得したみたい。何度も頷くと、ニヤリと笑顔を見せる。
……まあ、パンドラギフトから家が建つなんて思ってなかったから、策じゃなくてただの偶然なんだけど。これは言わなくて、いいよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます