アイングルナからの旅立ち
アイングルナの街が落ち着きを取り戻した頃、僕らは旅立つことにした。
出立の日。外に続くゲートの前で、たくさんの人が見送ってくれる。
「お前らには世話になったニャ。またいつでも来るニャ。歓迎するニャ!」
「その頃にはガルナラーヴァの影響を完全に排除しておく。安心して遊びに来てくれ」
「ありがとうございます! みなさんもお元気で」
まず、ラーチェさんを筆頭に、グレイトバスターズのみんな。
ラーチェさんは正式にやってきたギルドマスターに役目を譲って、冒険者活動に復帰した。とはいえ、ダンジョン探索はあまり進められていないみたいだけどね。
グレイトバスターズは他の冒険者たちとも協力して、邪教徒の残した影響の排除を目指している。手始めに取り組んだのが導師会上層部の浄化。邪教徒による洗脳はかなり進んでいたみたいで、教導長の半数以上は影響下にあったらしい。
ザッハさんたちの活動によって、すでに導師会も正常化している。街から影響を排除できる日は近いだろう。
「ジョット殿には世話になった。改めて礼を言わせて欲しい」
「ホントホント! ご主人の次に頭が上がらないよね」
「感謝しております」
「ありがとねー!」
「いやいや、私も良い経験をさせてもらったよ。それにこれはきっちりとした取引の結果なんだ。礼には及ばない」
向こうでは、プチゴーレムズがジョットさんに挨拶している。アレンだけじゃなくて、他の三人も今では等身大ボディだ。四人で、そのお礼を言っているみたい。
「みんなすっごく喋るのが上手くなったよね! レイレたちもいつかこんな風にお喋りできるようにしてあげるからね!」
アレンたちを見てそう言ったのは、ジョットさんの孫娘のリルだ。レイレの他にも二人の人形を素体としたゴーレムを連れている。この二人、リルが自身のクリエイトゴーレムで作ったんだけど、なんと自我ありなんだよね。リルの中ではゴーレムとはレイレのような存在という認識ができあがっているみたいで、普通にクリエイトゴーレムを使っただけで、自我ありゴーレムができあがるみたい。いつの日か、革新的なゴーレム師になるかもしれないね。
「ぬぅ……。まだ筋肉の神髄を叩き込んでいないというのに……。本当に行ってしまうのか、ローウェルよ」
「マッソか。あんたには世話になったが……筋肉についてはもう十分だ。いや本当に」
「そうか。これからは自分流の筋肉を模索していく。そういうことなのだな」
「いや、そういうことでは……まあそれでいいか」
ローウェルはマッソさんを中心に、グルナ戦士団の人達から別れを惜しまれている。実は巨人騒ぎのあと、少しだけ戦士団の人達の鍛錬に付き合ってたんだよね。鍛錬自体はためになったみたいだけど、筋肉トークについていけずに辟易としているみたい。
戦士団の人に別れを惜しまれているといえば、シロルもだ。
『これからも、色んな筋肉焼きを開発していくんだぞ! いつか戻ってきたとき、僕も食べさせて貰うからな! しっかりな!』
「もちろんだとも! あんたの教えは忘れない」
「元祖筋肉焼きもちゃんと守っていくからな! タコの捕獲は大変だけど」
彼等は筋肉焼き屋台の中心メンバーだった面々だ。シロルと意気投合してるなと思ったけれど、教えって何? たこ焼きは、すっかりと元祖筋肉焼きにされてしまっているし、もう修正は不可能だね。店員の筋肉のインパクトが強すぎるんだよぅ。
「ハルファちゃん、スピラちゃんも行ってしまうのか……!」
「うう……、これからは何を楽しみに生きればいいの……?」
「馬鹿! これから二人は世界に羽ばたいていくんだから! その門出を邪魔しちゃいけないって話し合ったでしょ!」
「そうだ! そうだ!」
ハルファとスピラを囲っているのは、彼女たちの熱心なファンだ。老若男女問わず幅広い層が見送りにきてくれている。こうなったのは、洗脳者を浄化する活動がきっかけだった。洗脳者を浄化するために、ハルファは街の色々なところで鎮めのうたを歌うという活動をやっていたんだ。それが何故か別の歌までリクエストされるようになり、付き添いだったスピラも巻き込んでいつの間にかアイドル活動のようなものに発展していたんだよね。ハルファたちが手を振って別れの挨拶をすると、泣き崩れる人までいる。本当にすごい影響力だ。
「同志トルトよ。これを持って行ってくれ」
「ヴァルさん! ありがとうございます」
ダンジョン研究会のヴァルさんまでが見送りに来てくれたようだ。手渡してくれたのは……パンドラギフト二箱! 周りの人はぎょっとしているけど、僕にはありがたい贈り物だ。一時期は、研究会の一員でもあったゴドフィーが邪教徒だったことを知りショックを受けていたみたいだけど、すっかり立ち直ったみたいだね。
さて、これでお別れはひととおり済んだかな。名残惜しいけど、そろそろ行こう。次の目的地は南。アイングルナに潜伏していた洗脳者が向かうとすれば、西のリーブリルか南のゼファーソンだからね。何か起こっていないか、一応確認しておいたほうがいいと思って。
さあ、次の場所では何が待っているんだろう。
楽しみだね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます