現状で手一杯です
「でさ、おでんもいいんだけど、ガルナラーヴァの信徒たちに何か動きはなかったの?」
おっと、そうだった。ついつい脱線したまま話を進めちゃったよ。一応、巨鳥討伐の報告に来たんだった。
前回報告してからのことを説明すると、話の終盤くらいで廉君が顔を俯かせた。何かを
「あははは! クリーンでガルナラーヴァの眷属獣を倒しちゃったの? それはまた突拍子もないことをやったね! きっと今頃、あいつは悔しがってるよ。あはは!」
「いや、だって……【創造力】スキルもあったし、できると思ったんだよ」
「実現できたのはスキルのおかげだと思うけど、だからって普通はできないよ。邪気を汚れ扱いするなんて……! ふひひひ」
笑いすぎて、廉君が変な声を出してる。そこまで笑わなくてもいいのに。
「ふひひひ……ああ、苦しい。いやぁ、良く笑った。面白いけど、すっごく強力な切り札ができたね。ガルナラーヴァの眷属獣限定だけど。あっ、でも邪気が浄化できるなら、ダンジョンの邪気を片っ端から浄化できないかな? そうしたら、僕もダンジョン内に干渉できると思うんだけど」
「うーん、難しいかな。普通の邪気は目に見えないから」
「なるほどね。あくまでクリーンだから、汚れと認識できないと発動できないのか」
廉君の指摘の通りだと思う。そもそも邪気が漂っているという実感がないからね。それを浄化するっていうのが難しいんだ。
「でも、そうか。そんな状況だと、ダンジョンの中が探れないのはちょっと困ったなぁ」
『そうなのか?』
「そりゃあそうさ」
廉君が危惧しているのは、邪教徒たちの暴走や報復だった。
空から鎮めのうたを聞かせる作戦は巨鳥の妨害によって中途半端な形で終わってしまったからね。まだ洗脳が解けていない人が結構いるはずなんだ。邪教徒たちは何らかの目的のために隠れて行動していたけど、今回の行動でこちら側が潜伏者の存在に気付いていると知られてしまったかもしれない。そうなると追い詰められた邪教徒たちが、騒ぎを起こすことも考えられる。その場合、矛先が僕たちに向かう可能性は高いだろう。ダンジョンの中が探れないと邪教徒の動きを警戒したり、何かあったときに僕らに警告することもできない。それがもどかしいみたいだ。
「邪気をもっと効率よく運命素に変える方法はないの?」
「地道ではあるけど、瑠兎たちがレベルを上げればそれだけ変換効率はよくなるかな。まあ、一つ二つあげた程度では劇的な改善は見込めないけど。一番効率がいいのは、アイングルナの住人を手当たり次第に使徒にすることだね。そんなことしたら、さすがに他の神々に怒られちゃうけど」
信者でもないのに、無理矢理使徒にしたら怒られてもしょうがないよね。他の神様の信徒だっているだろうし。
そもそも運命神って認知度が低いんだよねぇ。いや、みんな知らないわけじゃないんだけど、マイナーな神様って扱いなんだ。神様としては新参者だから仕方が無いのかもしれないけどさ。それでもご利益として幸運が上がるなら人気が出そうなのに。冒険者とか商人とか幸運が欲しい人はたくさんいるはず。
そんな疑問をぶつけてみると、廉君は苦笑いを浮かべて首を振った。
「たしかに、僕の権能としてちょっとした幸運を授けることはできるよ。だけど、普通は自覚できるほど大きな影響はないんだ。瑠兎が特別なんだよ。前世のつながりがあるせいか、僕の力の影響を受けやすいんだよね。【運命神の微笑み】ってスキルも、そこまで強力なスキルじゃなかったはずだけど……」
そ、そうだったの!?
そういえば、ハルファも運命神の巫女なのに幸運はそれほどではないもんね。
「それにさ。信徒を増やすと、それはそれで大変なんだよ。仕事が増えるんだ。ただでさえ他の神々の協力なしでガルナラーヴァの相手をしなくちゃならないのに、他の仕事まで増えたら手に負えないよ!」
な、なるほど? 一理あるのかな?
サボりたいから、信徒を増やさないってわけじゃないよね?
ともかく、廉君には積極的に信徒を増やそうという意志はなさそうだね。それなら無理に布教することもないか。廉君が積極的なら、冒険者ギルドでご利益を説明して布教するのもいいかと思ったんだけど。
だとしたら、やっぱり邪気の変換効率を上げるにはレベル上げが一番ってことか。転移扉の鍵もあるし、深い階層でもかなり気軽に往復できる。第二十階層からはBランクの魔物が出現しはじめるらしいから、その辺りでレベル上げするのも悪くないかもね。Bランクの魔物の魔石ならステータス向上薬の効能も良くなるだろうし。
あ、でも幾つかの材料がなくなりそうなんだよね。特に金色四つ葉のゴルドディラがなかなか手に入らない。やっぱり、自分で採取しにいかないと駄目だね。ダンジョンの中で採取できるところってないのかな?
深い階層を探索するなら、地形トラップを探知するスキルも欲しい。地形踏破っていうスキルの講習がギルドで開催されるみたいだから、それを習得するのもいいかもね。
うーん、やることが盛りだくさんだなぁ。
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