いざ、試飲!

 ステータス向上薬は、特別な魔法薬だけあって材料もわりと貴重な物が多い。とはいっても、そのほとんどは冒険者ギルドの依頼で見るような比較的メジャーな素材ばかりだ。貴重とは言っても名前も聞いたことがないようなレア素材ではない。一番希少な素材はゴルドディラ。キグニルから王都に向かう途中で大量に確保した金色四つ葉だった。大量に確保しすぎてギルドにも引き取ってもらえず収納リングの肥やしになっていたので、ちょうど良かったね。


「この素材だけで、ステータス向上薬ができるんですか?」

「いや、あと一つ必要なものがある。むしろ、その素材が薬の性能を決定づけると言ってもいいくらいだね。その素材が――魔石さ」


 なるほど、魔石か!

 魔石は魔物の核とも言える部分だ。魔物の能力の一部が秘められていたとしてもおかしくはない……のかな?


「でも、大丈夫なんですか? 運命神様からの手紙を見る限り、魔物と邪気は関係が深そうですよ。魔石って実は邪気の塊だったりは……」


 魔道具の燃料として使われているわけだし、今更心配しても仕方がないのかもしれないけど、それでも邪気の話を知ってしまったから気になるよね。


「邪気か……。おそらく、その邪気の処理に失敗すると、調薬時のマイナス効果が出るんじゃないのかね?」


 逆に言えば、調薬に成功したら邪気の心配はいらないってこと? さすがに断言はできない気がするけど……。


「それと、魔石の取り込みは、魔物を倒してレベルを上げるのと根本的には同じだと伝え聞いているよ。高レベルの冒険者がおかしくなったって話は……まあなくはないけど、それは強くなって傲慢になったとかその手の話だからね。ほとんどの上級冒険者に悪い影響は出ていないみたいだから、問題はないと思うよ」


 そ、そうなの……!?

 確かに、レベルアップってどういうことだろうかと思ったことはあったけど、あれも実は魔物から何かを取り込んでたのか。単純な訓練に比べると能力向上の幅が大きいって話は聞いたことがあったんだけどね。レベルアップが危険なら運命神様から警告もあるだろうし、別に問題ないのかな。


 そう考えると名前はともかく邪気自体はそこまで悪い物じゃないのかも? 成長を促すエネルギー的な物なのかもしれない。ダンジョンの宝箱だって邪気が生成しているわけでしょ? というか、運命神様か干渉してくるパンドラギフトだってダンジョン産なわけだから、邪気で出来てるんだよね。ますますよくわからない。


 まあ、いいか。ちょっと心配ではあるけど、レベルアップと似たような原理なら一度二度の使用で悪影響が出ることはないでしょ。もし、そうなら運命神様から警告があるはず! そもそも、魔石が邪気の塊だというのも僕の推測にすぎないわけだし。


 というわけで、思い切ってステータス向上薬を作ってみることにした。材料として使うのは青竜の魔石だ! みんなに相談することなく使うことを決めたけど、どのみち他に使い道はないしね。もともとは換金する予定だったから、必要があればお金で補填するつもりだ。まあ、僕のパーティー、みんなお金に興味がないんだけどね……。


 ステータス向上薬は、強い魔物の魔石を使うほど効果が高まるみたい。青竜はAランクの魔物。だから、これは基本的には人類が入手できる最上級の魔石だ。なにせ、Sランクっていうのは、人類が太刀打ちできない魔物っていう区分だからね。


 禁忌とされる魔法薬だけど、製法が特殊というわけでもないから、特別に難しいというわけでもない。パールさんの補助もあるわけだしね。


「できた!」


 実際、特に手間取ることもなく全ての作業工程が終わった。特にマイナス効果を受けたような感じもしない。おそらく、魔法薬の作成の成功したんだと思う。


「ふむ。問題はなさそうだね。やはり、成功させたかい。さすがだね」


 うん、パールさんから見てもおかしなところはなかったみたい。ひと安心だね。


 早速、鑑定ルーペで魔法薬を鑑定してみる。アイテム名は『ステータス向上薬(特級)』だ。性能説明は『全能力を恒久的に向上させる魔法薬。効果は高い』となっている。実際にどの程度能力が向上するのかは使ってみないとわからないね。


 ステータス魔法薬はちょっと毒々しい紫色の液体。飲み薬らしい。正直、効果がステータス向上だとわかってなければ、とても飲みたいと思えるような見た目じゃない。いや、葡萄ジュースと思えばいけるか?


 自分で作った薬なんだ。やっぱり最初は自分が飲まないと……。

 よし、飲むぞ!


 あ、その前に今のステータスを鑑定ルーペで確認しておこう。

 うーん、僕も結構強くなったよね。まあ、疫呪の黒狼や邪竜なんて大物を倒してきたわけだし、それなりに成長するよね。でも、まだまだ足りない。邪竜だってろくに身動きがとれない状態だったからこそギリギリ勝てただけだからね。ステータス向上薬で戦力アップを目指さないと……!


 勢いをつけてステータス向上薬をあおると、なんとも形容しづらい味が口いっぱいに広がった。率直に言えばまずい! けど、飲めなくはない。まあ、漢方薬みたいに癖があるから、苦手な人は苦手かもしれないけどね。


「どうだい?」


 パールさんが興味津々で尋ねてくる。魔法薬は僕たちのためになる、なんて言ってたけど、それとは別に薬の効果も気になってるみたい。まあ、禁忌とされながらも言い伝えられてた薬だからね。気持ちはよくわかる。


「あんまり違いはわからないですけど……」


 少なくとも、劇的に何かが変わったという感じはしない。とはいえ、レベルアップだってそうだからね。まあ、鑑定してみればわかるか。


 ……ふぁ!?

 薬飲んだだけなのに、レベルアップ一回よりも上昇幅が大きいんだけど!?


――――――――――――――――――――――


名 前:トルト

種 族:普人

年 齢:12

レベル:18

生命力:123/123 [20up]

マナ量:116/116 [20up]

筋 力:56 [10up]

体 力:64 [10up]

敏 捷:77 [6up]

器 用:99 [6up]

魔 力:96 [10up]

精 神:79 [10up]

幸 運:125


加護:

【職業神の加護・迷宮探索士】


スキル:

【運命神の微笑み】【短剣Lv17】

【影討ちLv14】【投擲Lv9】

【解錠Lv10】【罠解除Lv10】

【方向感覚Lv10】【バランス感覚Lv1】

【調理Lv14】【調薬Lv8】[1up]

【光魔法Lv12】【水魔法Lv10】

【闇魔法Lv13】【無属性魔法Lv5】

【風魔法Lv8】


特 性:

【調理の才能 Lv1】【強運】【器用な指先 Lv1】

【魔法の素養 Lv2】


魔法:

〈クリーン〉〈ファーストエイド〉

〈クリエイト・ウォーター〉〈デハイドレイト〉

〈ディコンポジション〉〈ナイト・ヴィジョン〉

〈シャドウハイディング〉

〈ブリーズ〉〈ウインドカッター〉

〈シュレッディングストーム〉

〈ディテクト・マジック〉

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