第三部 邪気封滅
今後について考える
邪竜を倒した日から、数日が経った。その間、僕たちはパールさんの家でお世話になっている。スピラの容態も落ち着いているのでひと安心だ。邪竜から鱗と肉を使って魔法薬を作ったからちょっと心配だったけど、特にはなさそう。まあ、鑑定結果は青竜だったから、大丈夫だとは思ってたけど。
ただ、精霊化のときに思わぬ変化もあった。それはスピラが司る属性。精霊にはそれぞれに司っている属性があるみたいなんだ。スピラがもともと司っていたのは樹属性。邪竜との戦いでブレスを防いだときに草木の防壁を生み出したのは、樹属性の力を行使した結果だ。だけど、精霊化したときに新しく氷の属性も加わったみたい。薬の素材に使った青竜の鱗と肉の影響だと思う。青竜は氷属性の攻撃を多用する竜らしいからね。ただ、魔法薬を使ったからといって普通は属性が追加されるようなことはないようだ。パールさんは『会心の出来』となった魔法薬の作用じゃないかといっていたね。それが真実かどうかはわからないけど、今のところ悪い影響は出ていないみたいだから一安心だ。
「どうかな、ハルファちゃん?」
「完璧だよ、スピラちゃん! お揃いだね!」
そのスピラはというと、精霊化したときに本来の年齢である14歳相当の姿になった。だけど、ある程度姿を自由に変えられるみたいで、僕たちと同じ12歳くらいの姿を取るようにしたみたいだ。
「じゃあ、トルト、行ってくるね!」
「行ってらっしゃい、ハルファ。スピラは無理しないようにね」
「うん。でも、ハルファちゃんがいるから……大丈夫!」
スピラは相変わらず人がいるところは苦手みたい。樹属性の精霊はそういう傾向にあるらしいんだよね。だけど、ちょっとずつ克服しようとしている。ハルファと一緒に街を歩きたいんだって。
ローウェルからはあれから何度もお礼を言われている。そして、改めて僕たちの力になると言ってくれた。ハルファの故郷に関しては緊急性がなくなったけど、運命神様からの神託がこれからもあるのなら、ローウェルの助力は本当にありがたい。だけど、やけに力が入ってるのが気になるんだよね。マドルスさんみたいに僕を崇めだしたりしないといいけど。仲間だから気にしなくていいと伝えたからきっと大丈夫だ。きっと……。
そのローウェルは今、ゼフィルとレッセルに連れられてお昼から酒盛りだ。スピラのことをずっと黙っていたらしくて、話を聞かせろと強制的に連れていかれた。エイナには秘密にしてくれって言われたけど、どうせ飲みすぎて明日にはバレるんじゃないかな。まあ、僕には関係ないことだ。ゼフィルがどうにかすべきことだよね。
スピラのための魔法薬を優先させたけど、それでも次の日には地下水路探索について冒険者ギルドに報告した。そのときに教えてもらったんだけど、今回の件は正式に依頼として受理されたんだって。そして、僕たちとゼフィル、エイナ、そして『破邪の剣』によって達成したと認められた。『栄光の階』としての報酬は金貨10枚。疫呪の黒狼を討伐したときと比べると報酬が控えめだけど、これは実際に出た被害の差だ。未然に防いだので報酬を出した偉い人たちに実感がないんだと思う。まあ、仕方がない。
報酬と言えば、レッセルに会ったときにちょっと怒られた。いや、怒ったというより呆れてたのかな。何かと言えば、竜の鱗と肉を譲って貰ったときに持ってた白金貨を押しつけたことについてだ。貴重な竜の鱗と肉とはいえ、白金貨なら一枚でもおつりが出るんだって。それなのに、白金貨が数枚入った袋を渡されてびっくりしたみたいだ。そんなわけで、渡したお金はまるまる突き返されてしまった。
邪竜は僕たちが持ち帰った鱗と肉以外にも、骨や何枚もの鱗をドロップしたみたいだ。十分な取り分があったので、僕らがお金を支払う必要はないって話だった。それどころか僕がとどめをさしたってことで、魔石まで譲って貰ったんだよね。ちなみに、魔石も青竜の魔石だった。あれは邪気でおかしくなってしまった青竜だったってことかな。
まあ、地下水路の件についてはそんな感じだ。それはさておき、これからのことを考えてみようかな。
「料理コンテスト、どうしよう?」
『ん? どうした? テリヤキバーガーを作るんじゃなかったのか?』
独り言のつもりだったけど、近くにいたシロルが反応した。せっかくだから、頭の整理に付き合って貰おうかな。
「いや、でも竜の肉はもう必要なくなったし。翼人に関する情報収集はお店の方に任せればいいでしょ? だから、参加する目的が果たされちゃったんだよね」
『おお、なるほどな! それなら、ハンバーグにしても大丈夫だな!』
「え? ハンバーグ? 竜の肉を?」
『竜の肉は美味しいって聞いたぞ! きっとハンバーグにしたらもっと美味しくなるはずだ!』
んー、どうかな?
せっかくいい肉ならそのまま食べたい気もする。ただ、たしかに竜の肉の味は気になるよね。味を確かめるためにも、コンテストに参加する意義はありそうだ。それにせっかくコンテスト向けにテリヤキバーガーのクオリティアップを図ってるわけだからね。やっぱり、お披露目する場は欲しい。
「そうだね。それじゃあ、コンテストには参加しようかな」
『優勝するんだぞ!』
「あはは、まあ頑張るよ」
さて、料理コンテストに参加することはいいんだけど、他にもやらないといけないことがあるんだよね。それはズバリ戦力強化!
今回の事件ではスピラが僕たちを守ってくれたから無事に乗り越えられたけど、そのせいでスピラが命の危機に陥ってしまった。僕らがもっと強かったらこんなことにならなかったと思うんだよね。
ハルファが運命神様の神託を受けるのなら、今回みたいな危険な事件に首を突っ込むことはこれからもありそうだ。こうなったら自重なしで、戦力上昇を目指さないと! いや、今までも別に自重とかしてないけどね。
「どうやったら強くなれるかな?」
『んー? 手っ取り早いのはダンジョンだと思うぞ! トルトの幸運が生かせるからな!』
やっぱりそうか。宝箱でアイテムを集めるのが一番かな?
『それと、パールヤーナに聞いてみたらどうだ? 何か色々知ってるだろ』
そういえば、パールさんが薬膳料理について話をしてくれたっけ。バフ料理が作れるようになれば一時的にでも能力アップが見込める。習得しておいて損はない技能だ。
うん、まずはパールさんに聞いてみよう!
――――――――――――――――――――――
名 前:トルト
種 族:普人
年 齢:12
レベル:18 [3up]
生命力:103/103 [16up]
マナ量:96/96 [15up]
筋 力:46 [7up]
体 力:54 [8up]
敏 捷:71 [10up]
器 用:93 [14up]
魔 力:86 [13up]
精 神:69 [10up]
幸 運:125 [2up]
加護:
【職業神の加護・迷宮探索士】
スキル:
【運命神の微笑み】【短剣Lv17】[2up]
【影討ちLv14】[2up] 【投擲Lv9】[3up]
【解錠Lv10】【罠解除Lv10】
【方向感覚Lv10】【バランス感覚Lv1】[new]
【調理Lv14】【調薬Lv7】[new]
【光魔法Lv12】[1up] 【水魔法Lv10】
【闇魔法Lv13】[1up]【無属性魔法Lv5】
【風魔法Lv8】[1up]
特 性:
【調理の才能 Lv1】【強運】【器用な指先 Lv1】
【魔法の素養 Lv2】
魔法:
〈クリーン〉〈ファーストエイド〉
〈クリエイト・ウォーター〉〈デハイドレイト〉
〈ディコンポジション〉〈ナイト・ヴィジョン〉
〈シャドウハイディング〉
〈ブリーズ〉〈ウインドカッター〉
〈シュレッディングストーム〉
〈ディテクト・マジック〉
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