でっかくなった

 夜が明けて朝になった。


 ここから王都ガロンドへは徒歩で五日ほどの距離みたいだ。さすがに、その距離をスピラに歩かせるのは酷だから、都市間馬車を利用するつもりだったんだけど――


「シロル、進め~」


 出発前、スピラはご機嫌でシロルにまたがっていた。お馬さんごっこのつもりなのかもしれない。とはいえ、シロルは小型犬サイズ。いくらスピラが幼いとはいえ、乗せて移動するのは難しい。シロルの体力とか以前に足がついちゃうからね。


 だけど、その問題はあっさりと解決した。


『むぅ。仕方がないな』


 そう言うと、シロルは自分の身体を巨大化させたんだ。巨大化と言っても、体高がせいぜい僕の腰あたりまでしかないので、それほどではない。だけど、スピラを乗せるにはちょうど良いくらいのサイズだった。


「わはぁ! シロルが大きくなった~」


 スピラは大喜びだった。そのままシロルが周囲をくるりと回って戻ってくる。足取りは危なげなく、十分にスピラを乗せて歩けそうだ。


「いつから、そんなことができたの?」

『つい最近だぞ。トルトが成長したから、僕も出来ることが増えたんじゃないか?』


 驚く僕に、シロルはそんな風に説明した。

 そういえば、聖獣は絆を結んだ人間の影響を受けるって言ってたっけ。どうやら、僕の成長に合わせて、シロルも成長していくみたいだ。


 改めて鑑定させてもらったところ、スキルに【巨大化】が追加されていた。ちなみに現状では、最大限巨大化してあのサイズみたい。レベル表記があるので、スキルレベルが上がれば、もっと大きくなれるんだと思うけど。


 懸念だったスピラの負担も解消されたので、馬車移動は取りやめることにした。というのも、都市間馬車ってあんまり早くないみたいなんだ。基本的には複数人で乗るからそれほどスピードはでないし、馬もこまめに休ませないとならない。宿場の関係で一日の移動距離も決まってるしね。だから、それなりに体力があって、野営も気にしなければ、それほど所要日数は変わらないみたい。


 そして、何より乗り心地はあんまり良くないらしい。仕方がないとは思うけどね。衝撃吸収の機構なんてないみたいだし、何より道がまったく整備されていないんだから。それでも歩くよりはマシなんだろうけど。とはいえ、別段急ぎでもないし、この辺りに出没する魔物なら僕たちでも余裕を持って倒せる。荷物は収納リングで運べるから、負担にもならない。そう考えると、ピクニック気分で歩いた方がいいかなってことになったんだ。


 この辺りで一番の脅威は草原オオカミだけど、ダンジョンで鍛えた僕たちの敵じゃない。もちろん、ローウェルにとってもそうだ。


「……はッ!」


 今も襲いかかってきた草原オオカミの攻撃をさらりと躱し、その一瞬で心臓をひと突きしたみたいだ。飛びかかってきた草原オオカミはドサリと地面に倒れ伏して、そのまま動かなくなった。


 ローウェルは結果を見届けることなく、次のオオカミへと向かった。彼の持つショートソードの刀身にはときおりバチリと雷光が奔る。武器に魔法を宿しているんだって。草原オオカミ相手には必要がないんだけど、僕がお願いして見せて貰っているんだ。滅茶苦茶かっこいいよね!


 どうもローウェルは森人には珍しく魔法が苦手みたい。正確には魔法の放出が苦手なんだって。だから、武器に纏わせる形で魔法を発動するようにしたみたいだね。


 そのあたりがちょっとわからないんだよね。纏わせようと思ってできるものなのかな。少なくとも、僕が習得している魔法は効果が定まっている。サリィが使っていたファイアアローやフレイムウィップなんかもそうだ。でも、よく考えれば、クリーンで除去するものはある程度イメージ通りに選べるし、ディコンポジションもうまくコントロールして醤油を作ることができた。効果が定まっているというのは僕の思い込みで、イメージ次第では色々な応用ができるのかもしれない。


 そう考えると色々と魔法を習得したくなるよね。僕は今のところ補助的な魔法しか覚えてないから、攻撃魔法も覚えてみようかな。


 そんなことを考えているうちに、ローウェルが草原オオカミを全て倒してしまった。


『やるな、ローウェル! 鮮やかな攻撃だったぞ!』

「そうだよ~。お兄は強いんだから」


 シロルとスピラが、ローウェルに駆け寄ってその実力を褒め称えている。興奮しているのか、シロルの尻尾はぶんぶんと動きが激しい。スピラもきゃっきゃとご機嫌だ。それに対して、ローウェルが穏やかに返事をしている。なんか和むね。


「よし、私たちは解体! トルトも挑戦するでしょ?」

「うん、よろしくね」


 僕とハルファは草原オオカミの解体。最近は、僕もハルファに解体の仕方について教わっているんだ。まだ、スキルを取得するほどではないけど、いつかは取得できたらなと思っている。さすがに、ハルファだけに解体を任せておくわけにもいかないしね。


 特性の【器用な指先】の効果もあり、スキルなしのわりには綺麗に解体できた。それでもハルファには及ばないけど。草原オオカミから取れるのは肉と毛皮かな。肉はそれほど美味しいわけじゃないけど、だからといって無駄にはできないからね。そのほかは燃やした後、穴を掘って埋めておく。


 道中はだいたいこんな感じだった。特に波乱もなく、至って順調。そして、四日後、僕たちはようやく王都ガロンドへとたどり着いた。


――――――――――――――――――――――


名 前:シロル

種 族:聖獣

年 齢:0

レベル:12 [7up]

生命力:86/86 [42up]

マナ量:70/70 [35up]

筋 力:54 [26up]

体 力:51 [25up]

敏 捷:63 [30up]

器 用:43 [21up]

魔 力:51 [25up]

精 神:50 [24up]

幸 運:72 [3up]


スキル:

【思念伝達】【ひっかき Lv11】[6up]

【かみつき Lv11】[6up] 【雷魔法 Lv6】[4up]

【念動 Lv13】[8up]【巨大化 Lv2】[new]


特 性:

【運命神の眷属】


魔法:

〈雷纏い〉〈雷撃〉

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